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第11回 WScriptオブジェクトを利用する(2)基礎解説 演習方式で身につけるチェック式WSH超入門(3/5 ページ)

WScriptオブジェクト解説の後編。標準入出力やCOMオブジェクトの操作について説明する。COMを使うために必要なタイプライブラリも解説。

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COMオブジェクトを扱うメソッド

 WSHの内部オブジェクト(WSHに含まれているCOMオブジェクト)の説明をこれまでしてきており、今後の回でも紹介していくのだが、WScriptオブジェクト以外の内部オブジェクトおよび外部オブジェクト(WSHに含まれていないCOMオブジェクト)を扱うには、次に述べるメソッドを使用することになる。

メソッド名 説明
CreateObject オブジェクトの作成
ConnectObject オブジェクトに接続
DisconnectObject オブジェクトを切断
GetObject オブジェクトの取得
オブジェクトを操作するためのメソッド

 なお、本連載では今後WSHの内部オブジェクトの紹介がメインとなり、外部オブジェクトに関しては今回いくつか紹介し、その使い方を学ぶことで、今後の回で内部オブジェクトを使用する際の方法を身に付ける参考としたい(内部オブジェクトも外部オブジェクトもWScriptオブジェクト以外は同じ呼び出し方である)。

 これらのメソッドの説明に入る前にまず、COMオブジェクトの基本に少し触れておく。COMオブジェクトはCOMコンポーネントが提供するオブジェクトである。COMコンポーネントはDLLファイル(OCXファイルなどのこともある)としてシステムにインストールされており、これを用いるとアプリケーションの機能やOSの持つ機能を呼び出したりすることができる。WSHからはレジストリにProgIDと呼ばれる一意に識別されるコンポーネント名が登録されており、オブジェクトにどんなメソッドやプロパティなどがあり、どういう動作をするかを説明したタイプ・ライブラリ(コラム「タイプ・ライブラリについて」参照)が存在するCOMコンポーネントが使用可能である。WSHからはこのProgIDを指定することでCOMコンポーネント(すなわち、そのコンポーネントが提供するCOMオブジェクト)を呼び出す。

CreateObjectメソッド

 さて、WSHからCOMオブジェクトを呼び出す際に基本となるのはCreateObjectメソッドである。例として、Internet Explorerを構成しており、また、それを外部から(ここでは、WSHから)操作するためのCOMオブジェクトであるInternetExplorerオブジェクト(ProgIDは「InternetExplorer.Application」)を呼び出す方法について述べる。

※ファイル:run_ie.vbs

Option Explicit

'InternetExplorerオブジェクトを作成
Dim objIE
Set objIE = WScript.CreateObject("InternetExplorer.Application")

'VisibleプロパティをTrueにしてウィンドウを可視状態にする
objIE.Visible = True

'Navigateメソッドで@ITのトップページにアクセス
objIE.Navigate "http://www.atmarkit.co.jp/index.html"

'BusyプロパティがTrueの間、空ループを回してページのロードを待つ
Do While objIE.Busy
    WScript.Sleep 100
Loop

'Documentプロパティが返すHTMLDocumentオブジェクトの
'bodyプロパティの返すHTMLBodyオブジェクトのinnerTextプロパティを参照
MsgBox objIE.Document.body.innerText

'オブジェクトの破棄
Set objIE = Nothing

 このスクリプトを実行すると、次のようにInternet Explorerのウィンドウが立ち上がって@ITのトップページ(http://www.atmarkit.co.jp/index.html)にアクセスした後、そのHTMLに含まれるテキストをメッセージ・ボックスとして表示する。


InternetExplorer.Applicationオブジェクトを用いたWebページのテキスト表示
先ほどのスクリプトを実行すると、最初にWebページが表示され、その後、Webページの内容をテキスト形式で表示する。このようにInternetExplorer.Applicationオブジェクトを用いることで、Webページに含まれるHTMLからテキストを抽出して表示することができる。なお、このスクリプトをWindows Vista環境で動作させる際は、[インターネット オプション]で[保護モードを有効にする]のチェック・ボックスを外しておく必要がある。ただしこの操作をすることでInternet Explorerのセキュリティは弱くなることを十分頭においてもらいたい。

 このスクリプトでは、WScriptオブジェクトのCreateObjectメソッドを用いて引数にInternetExplorerオブジェクトのProgID(InternetExplorer.Application)を指定し、そのオブジェクトを作成している。戻り値はオブジェクトなので、Setステートメントを使ってオブジェクト変数に代入している。これがWSHからCOMコンポーネントを呼び出してオブジェクトを作成する基本である。

 作成されたCOMオブジェクトは、これまでのオブジェクトの例と同様にプロパティやメソッドを持ち、それらを適切に呼び出すことで目的の動作を実現している。なお、InternetExplorerオブジェクトにどんなメソッドやプロパティ、そして後述する「イベント」があるかは、タイプ・ライブラリをオブジェクト・ブラウザなどで参照するか、以下のサイトを参照していただきたい。

 CreateObjectメソッドには、ProgIDを指定する第1引数のほかに、イベントを監視するためのプリフィックス(接頭辞)を指定する、省略可能な第2引数が存在する(なお、VBScriptにも同様の機能を持つCreateObject関数が存在するが、第2引数の意味が違うことに注意が必要。逆にいうと第2引数を使用しない場合は、WSHで使用する際にはどちらを使っても通常は問題ない)。

 イベントとは、オブジェクトが何らかのアクションを起こした際にホスト(ここではWSH)に送られるメッセージのことである。COMオブジェクトにはイベントが定義されているものがあり、InternetExplorerオブジェクトもその1つである。ここではウィンドウが閉じられた際に発生するOnQuitイベントの発生を監視する方法を説明する。

※ファイル:monitor_ie.vbs

Option Explicit

'InternetExplorerオブジェクトを作成。第2引数にイベントのプリフィックスを指定。
Dim objIE
Set objIE = WScript.CreateObject("InternetExplorer.Application", "IE_")

'VisibleプロパティをTrueにして可視状態にする
objIE.Visible = True

'Navigateメソッドで@ITのトップページにアクセス
objIE.Navigate "http://www.atmarkit.co.jp/index.html"

'無限ループを回す。
Do
    WScript.Sleep 100
Loop

'OnQuitイベント
Sub IE_OnQuit()
    MsgBox "Internet Explorerが閉じられました。"

    'オブジェクトの破棄
    Set objIE = Nothing

    WScript.Quit() 'スクリプトの終了
End Sub

 このスクリプトを実行すると、@ITのトップページにアクセスした後、Do〜Loopの無限ループによりスクリプトは待機状態になる。そのウィンドウを閉じるとOnQuitイベントが発生するのでスクリプト側から捕捉し、閉じられた旨をメッセージ・ボックスで表示した後、WScriptオブジェクトのQuitメソッドでスクリプトを終了させている(Do〜Loopの無限ループからも脱出する)。

 ここで重要なのはCreateObjectメソッドの第2引数である。イベントのプリフィックスにはアンダー・バー(_)を付ける必要がある(ここではIE_)。実際にイベントを捕捉する部分はSubプロシージャである。そのSubプロシージャ名は先ほど指定したプリフィックスにイベント名をつなげたものにする(ここではIE_OnQuit)。このようにすることでイベントを監視することが可能である。なお、監視するイベントは複数でもよい。その場合、複数のSubプロシージャを定義することになる。ほかにどんなイベントがあるかは先ほどの記述を参考にしていただきたい。

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