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管理者必携! 最強のデータ・サルベージ・ツールを自作する無償入手可能なミニWindows OS、Windows PE 2.0実践活用術(5/5 ページ)

起動不能のPCからファイルを救い出すリカバリ用起動ディスクを、無償のミニOS「Windows PE 2.0」を利用して作成しよう。

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 作成したリカバリ用起動ディスクを使って、ブート不可のPCからファイルをサルベージしてみよう。Windows PEにエクスプローラは存在しないので、ファイルをコピーするには、エクスプローラ以外の手段を使わなければならない。ここでは、デフォルトのWindows PEのままでも使える方法をいくつか紹介する。

リカバリ用起動ディスクからWindows PEを起動する

 作成したリカバリ用起動ディスクでWindows PEを起動するには、通常のブート可能CD/DVDと同様の手順でよい。具体的には、まず救出したいPCのBIOSセットアップでCDブートを有効にして、リカバリ用起動ディスクをCD/DVDドライブに挿入し、PCを起動(リセット)する。環境によっては、「Press any key to boot from CD or DVD...」と表示されるので、そのときは何かキーを押す必要がある。うまく起動が始まれば、「Windows is loading files...」と表示されるはずだ。そのまましばらく待てば、Windows PEが起動する。

■シェルはコマンド・プロンプト
  リカバリ用起動ディスクでWindows PEを起動すると、まずコマンド・プロンプトが開く。コマンド・プロンプトが入力可能な状態になったら起動完了だ。


起動直後のWindows PE
起動直後のWindows PEはコマンド・プロンプトが開いているだけだ。エクスプローラは存在しないので、ファイルをコピーするにはエクスプローラ以外の手段を使わなければならない。

 このコマンド・プロンプトがWindows PEのシェルである。このウィンドウを閉じるとWindows PEはシャットダウンまたは再起動する(後述するようにハングアップすることもある)ので、注意が必要だ。

■ローカル・システム・アカウントで稼働
 Windows PEのシェル(コマンド・プロンプト)は、ローカル・システム・アカウントで稼働している。そのため、ローカル・ディスク上のファイルにどんなアクセス権が設定してあっても、究極的には読み取ることができる。もちろん、暗号化されているファイルの内容は解読できない。

 逆にいえば、暗号化されていないファイルは、Windows PEを起動して簡単に読み取られてしまうということである。だからといって、Windows PEがセキュリティ上のリスクであるというわけはない。守るべきファイルは暗号化したり、PCを物理的に触れないように制限したりするのが基本である。

起動後のWindows PEにデバイス・ドライバを追加する(drvload)

 リカバリ用起動ディスクにあらかじめドライバを追加しておく方法はすでに解説した(peimg /infコマンド)が、あらかじめデバイス・ドライバを追加しておかなくても、Windows PEが起動した後に追加することもできる。Windows PEを起動したものの、サルベージしたいドライブやサルベージ先のデバイスが見えないときは、デバイス・ドライバを追加してみよう。

 起動後のWindows PEにデバイス・ドライバを追加するには、drvloadコマンドを使う。

コマンドライン drvload <ドライバの.INFファイル>
<ドライバの.INFファイル> 追加したいWindows Vista対応ドライバのINFファイルを指定する
drvloadコマンドの使用方法

 例えば、A:\DriversからNic.infというINFファイルを指定してドライバを追加するには、次のように実行する。

X:\windows\system32>drvload A:\Drivers\Nic.inf

 「正常に読み込みました」と表示されれば成功だ。ただし、存在しないデバイスのドライバでも追加は成功するようなので、本当に追加したいデバイスが使用可能になったか、あらためて確認する必要がある。

ファイルのコピー方法

 Windows PEのコマンド・プロンプトでファイルをコピーするには、copyやxcopyといった基本的なコマンドのほか、robocopyコマンドも使用できる。このコマンドはもともとWindows OSとは別に提供されていたが、Windows Vistaと同様にWindows PE 2.0で標準装備されるようになった。使用方法については関連記事を参照していただきたい。

 GUIでファイルをコピーしたいときは、メモ帳(notepad.exe)を起動して[ファイル]メニューの[開く]を実行すれば、おなじみの[開く]ダイアログ・ボックスを利用できる。対象ファイルを右クリックして[コピー][貼り付け]などを使うとよい。


メモ帳を利用したGUIによるファイル・コピー
この画面は、左の[開く]ダイアログから右の[開く]ダイアログ・ボックスへ、IETesterというフォルダをドラッグ・アンド・ドロップしているところ。Windows PEにはエクスプローラが存在しないが、このようにメモ帳の[ファイル]−[開く]を実行すれば、おなじみの[開く]ダイアログ・ボックスを利用してGUIのファイル操作が可能だ

 もう1つメモ帳を起動して、別の[開く]ダイアログ・ボックスを開けば、2つのメモ帳の[開く]ダイアログ・ボックスの間でファイルをドラッグ・アンド・ドロップしてコピーすることもできる。

ブート不可のPCからサルベージ先へファイルをコピー

 ファイルのサルベージ先として有力なのは、ネットワーク共有フォルダやUSBストレージ、FTPサーバだろう。以下では、Windows PEから各リソースにファイルをコピーする手順を説明する。

■ネットワーク共有フォルダへコピー
  デバイス・ドライバがロードされていてネットワーク・インターフェイスが利用可能であれば、Windows PEはデフォルトでネットワーク共有フォルダへアクセスできる。ネットワーク・プロトコルはTCP/IPのみだ。デフォルトでは、ファイヤウォールが有効になっており、IPアドレスはDHCPサーバから取得するようになっている。

 共有フォルダにアクセスするために必要な資格情報は、次のようにnetコマンドで指定する(ドメインではなく、ワークグループ構成のサーバに接続する場合は「<ドメイン>\」部分は省略可能)。

net use <ドライブ名> \\<サーバ>\<共有名> /u:<ドメイン>\<ユーザー名> <パスワード>

 例えば、HQドメインのAliceというユーザー(パスワードはsesame)で\\server\shareという共有フォルダにアクセスし、M:ドライブに割り当てるには、次のように実行する。

net use m: \\server\share /u:hq\alice sesame

 これで通常のドライブと同様に、M:ドライブとしてネットワーク共有フォルダをアクセスできる。なお、ドライブ名は省略可能だが、UNCではメモ帳などからアクセスできないようなので、ドライブ名を割り当てた方がよいだろう。

■USB接続の外部ドライブへコピー
 USBホスト・アダプタが利用可能であれば、USBストレージは接続するだけでプラグ・アンド・プレイによってデバイス・ドライバがロードされ、通常はリムーバブル・ドライブとして利用可能になる。ドライブ名は空いているものから自動的に割り当てられる。利用可能になっても通知メッセージは表示されないが、ドライブ名が割り当てられていれば使えるようになっている。

 一方、取り外す際には通常のWindowsのような[ハードウェアの安全な取り外し]が使えないようだ。Windows PEをシャットダウンしてから取り外した方が無難だろう。

■FTPサーバへ転送
 Windows PEではTCP/IPの基本的なコマンドが使えるので、ftpコマンドでファイル転送することもできる。使い方は通常のWindows OS上のftpコマンドと同じなので、Windowsのヘルプや関連記事などを参照していただきたい。

Windows PEの終了

 Windows PEを終了するには、コマンド・プロンプトでwpeutil shutdownコマンドを実行する。このコマンドを実行せずにコマンド・プロンプトを閉じてしまうと、シャットダウンせずに再起動したり、何も操作できなくなったり(ハングアップ)することがある。EXITコマンドを実行した場合も同様だった。wpeutil shutdownコマンドを使った方が安全だろう。


 Windows PE 2.0はWindows Vistaの製品群の中ではそれほど目立たないが、最新のWindowsが簡単に起動できるという意義は大きい。本稿ではリカバリ用ディスクの起動OSとしてWindows PE 2.0を利用したが、本来の用途といえるWindows OSの展開を始めとするさまざまな用途に適用されるであろう。無償でダウンロードできることもあって、管理者にとってもユーザーにとっても、今後ますます頼りになっていく存在なのではないだろうか。

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