ボクほどのスキルがあれば、転職できるでしょ?:転職活動、本当にあったこんなこと(16)(1/2 ページ)
多くのITエンジニアにとって「転職」とは非日常のもので、そこには思いがけない事例の数々がある。転職活動におけるさまざまな危険を紹介し、回避方法を考える。
年が明け、2008年になりました。「さぁ、今年こそ転職するぞ!」と、決意を胸に新年を迎えた人もいるでしょう。転職市場を見ると、有効求人倍率は年々上がっており、今年も同じような伸び率が期待できると思われます。
もともとIT業界は、ほかの業界に比べて有効求人倍率が非常に高く、人材不足に悩む企業も数多くあります。しかし当然ながら、誰でも入社できるというわけではありません。企業側はスキルや経験だけでなく、自社の環境に適応できる人材かなどを総合的に判断して採用を決定しています。
いうまでもなくITエンジニアにとって、スキルは最大の武器の1つでしょう。しかし、スキルさえあれば転職できるかといえば、そうではないのです。
今回は同じ会社に勤務している、対照的な2人のITエンジニアの転職活動を紹介しながら、転職を成功させるポイントを探ってみましょう。
自分のスキルに自信満々、岩田さん
岩田さん(仮名)は31歳のITエンジニア。大学卒業後、関西の流通系に強い中堅ソフトハウスに入社しました。現在はリーダーとして、食品メーカーの生産管理システムの開発に携わっています。
もともとスキルアップに熱心な岩田さん。リーダー経験を積むことにより、さらに多くの知識・経験を身に付けていました。これまで会計、販売システムの開発経験を持ち、知識の幅は非常に広いものです。岩田さん自身も、自分の業務遂行能力・スキル・知識にかなりの自信がありました。
昨今、日本版SOX法対策に力を入れる企業も増えつつある中、岩田さんの会社にはERP統合システムの依頼が増えてきていました。そんな状況で、岩田さんの中にも「これまでのスキルを生かして、ERPコンサルタントとしてスキルアップできないだろうか?」という思いが徐々に芽生えてきたのです。
その思いが転職意思にまでなったのは、会社に対する不安があったためです。興味を持っているERP関連の仕事に関して専門性の高い会社ではない点、グループ会社に吸収合併されるとのうわさが絶えずあり、将来どうなるのか分からない点でした。「吸収されれば年収もダウンするだろう。自分はこのまま会社に埋もれてしまうのではないか……」。危機感を覚えた岩田さんは、転職活動を開始しました。
岩田さんの転職活動、意外な結末
私がお会いしたときの岩田さんは、受けたい会社のリストアップから企業研究までを完ぺきに済ませていました。「自分のスキルを、絶対に生かしてみせる!」と自信満々。
そこで私は、岩田さんの希望する企業3社にエントリーの手続きをしました。そのうち2社では無事に書類選考通過。そして面接へと、転職活動はとんとん拍子で進みました。
2社の1次面接は、続く1週間に相次いで行われました。そして数日後、双方から意外な回答が返ってきました。「残念なんですが……」と。
そして2社からの回答は、ほとんど同じ内容だったのです。
「弊社の事業内容の理解、本人のスキルは申し分ないのだが、ERPコンサルタントがどういう仕事で、どういうキャリアを積む必要があるかについての返答ができていなかった。少々自信過剰なところがあるように見受けられる。担当したプロジェクトで大きな結果を残したのは分かったが、その説明に終始しており、弊社で何を成し遂げたいのかがまったく伝わってこなかった。それに担当プロジェクトにおいても、自分を過大評価し過ぎる傾向が見られた。難しい言葉を何度も口にし、知識の広さは分かったが、リーダーには不向きなのではとの意見で一致した」
思いがけない結果に、岩田さんはあぜんとするばかりでした。
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