第5回 検索機能とMOSSの導入:SharePoint Server 2007によるポータルサイト構築(4/4 ページ)
SharePointの検索機能について解説。最後にMOSSを導入する際の手順やチェック・ポイントを紹介する。
SharePoint の導入に当たっての作業手順
ここまではMOSSの基本機能についての解説を行ってきた。それでは、MOSSを導入するに当たってはどのような作業を行う必要があるだろうか? MOSS の導入に当たっては、通常のシステム開発と同様に要件定義→設計→開発→テスト→運用というフェイズが必要となる。
それでは、各フェイズにおいてどのような作業を行い、どのような点に注意すればよいか解説していこう。
■要件定義フェイズ
まず要件定義フェイズでは、ポータル・サイトが必要とする要求のヒアリングや既存のポータル・サイトの分析を行い、それらを精査し要件としてまとめる必要がある。ヒアリングに際しては、MOSS の標準サイト・テンプレートである「グループ作業ポータル」や「チーム・サイト」を利用し、実際にエンド・ユーザーにサイトを触ってもらうとよい。
要件定義フェイズでもMOSSの機能を理解しておくことが重要である。本連載の第1回を参考にするか、もしくは下記URLの情報を参考にMOSSの機能を押さえておくとよいだろう。
また、要件定義フェイズで重要となることが、ポータル・サイトの要件がMOSSの標準機能だけで満たすことができるかどうかの見極めだ。ここが特に通常のシステム開発と異なる点でもある。もちろん要件定義フェイズで細かなレベルで実現の可否を判断することはできないが、少なくともMOSSのどの機能を利用すればこの要件を実現できるという当たりを付けることは必要である。また、できればこの段階でエンタープライズ・コンテンツ管理(ECM)機能を利用するかどうかは確認してほしい。なぜかというと、ポータル・サイトの要件によって、設計フェイズ以降でどの作業を行わなければならないかが変わってくるからである。
■設計フェイズ
設計フェイズにおいては、最低限でも「サイト設計」「画面設計」「データ設計」「プロファイル設計」「セキュリティ設計」「検索設計」「運用設計」は必要となる。繰り返しになるが、設計フェイズで行うべき作業はポータル・サイトに求められる要件によって異なってくる。例えばエンタープライズ・コンテンツ管理機能を利用する場合は、どのような承認フローを経てコンテンツが承認されるかというワークフローの設計が必要となる。ここで挙げている作業はあくまでも最低限のものなので注意いただきたい。
■サイト設計
サイト設計では、ポータル・サイトのサイト階層構造をどのように設計するか決定する。サイト設計を行ううえでは、MOSSのサイトの考え方を押さえる必要があるので、本連載の第2回を参考にしていただきたい。サイト設計の中でポイントになるのは、サイト・コレクションをどのように分割すればよいかという点にある。特にサイト・コレクションが分かれるとサイト・コレクション単位で共有される情報や機能などに注意しなくてはならなくなるので、できるだけ1つのサイト・コレクションにまとめる方向で設計するとよい。またサイト設計は、どのユーザーがどのサイトへアクセスできるかというセキュリティ設計とも深くかかわりがある。実際には画面設計、セキュリティ設計と並行して行う作業となるだろう。
■画面設計
画面設計では、ポータル・サイトの各画面をどのような機能、どのようなレイアウト、どのようなデザインにするか決定する。通常のシステム開発とは異なり、標準のサイト・テンプレートを使用して実際に動くものをすぐに準備することができるので、エンド・ユーザーに対して標準のサイト・テンプレートをデモしながらヒアリングすると効果的に画面設計を進めることができる。
画面設計で注意する点としては、要件を標準機能だけで実現できるかという判定が必要になる点である。標準機能だけで実現できない場合は、Webパーツ開発やカスタム・フィールド開発などが必要になり開発フェイズ以降の見積もりに大きく影響を与えるので注意が必要だ。また、パーソナライズという考え方がある点にも注意していただきたい、MOSSのポータル・サイト画面はアクセスするユーザーによって見え方が異なるので、実際にエンド・ユーザーに動きを確認しながら設計を進めることをお勧めする(紙ベースの確認では、パーソナライズのパターン数×画面数分の資料が必要になる)。それと、画面の細かなカスタマイズには、SharePoint Designerが必要となる場面が多い。有償の製品ではあるが、開発効率がまったく異なってくるので開発ツールの1つとしてあらかじめ準備しておくことをお勧めする。
■データ設計
データ設計では、ドキュメント・ライブラリやリスト機能の表示フィールドの定義やビューによる見え方の決定を行う。ここでは、ドキュメント・ライブラリやリストの知識が必要となるので、第3回を参考にしていただきたい。またデータ設計でも実際にエンド・ユーザーに画面をデモしながら進めることが効果的なので、画面設計と並行して作業を進めるとよい。
■プロファイル設計
プロファイル設計では、個人用サイトやプロファイル・スキーマ、プロファイル・インポートの設定などを決定する。ここではプロファイルに関する知識が必要になるので、第4回を参考にしていただきたい。
■セキュリティ設計
セキュリティ設計では、ポータル・サイトの認証方式や各サイトのアクセス権の設定、匿名アクセスの使用の有無を決定する必要がある。ここでも第4回を参考にしていただきたい。
■検索設計
検索機能では、コンテンツ・ソースやフル・クロールのスケジュール設定、検索範囲の設定などについて決定する必要がある。検索設計については今回の記事を参考にするとよい。
■運用設計
運用設計では、バックアップやリストア方法、サーバやパフォーマンスの監視方法について決定する必要がある。バックアップとリストア方法については、下記ドキュメントを参考にしていただきたい。
■開発フェイズ
開発フェイズの作業は要件によってまったく異なる。標準機能だけでポータル・サイトの要件を満たせる場合は開発フェイズでの作業はほぼ必要なくなるし、標準機能だけでは実現できない要件ばかりだと多くのWebパーツの開発やカスタム・フィールドの開発が必要となり、見積もりが大きく異なる原因となる。そういった事態を避けるためにもできるだけ早いフェイズからMOSSの実際の画面を利用し、どこまでがMOSSの標準機能で実現できるか見極めておくことが重要である。開発に関する情報は、下記SDKを参考にしていただきたい。
■テスト・フェイズ
テスト・フェイズでの作業も要件によって大きく異なる。しかし、少なくとも「運用テスト」「パフォーマンス・テスト」「セキュリティ・テスト」については実施した方がよい。
- 運用テスト
ポータル・サイトの運用に必要なドキュメントやツールの整備が完了しているか、手順に従ってバックアップやリストアを正しく行うことができるかの検証を行う。 - パフォーマンス・テスト
この時点で行うパフォーマンス・テストには、現在のシステム構成/ハードウェア構成でどの程度のキャパシティを持っているか(どの程度のアクセスまで耐え得るか)というパフォーマンスの基礎データを収集するという目的がある。本格運用に入る前にそれらの基礎データを収集することで、ユーザーがどの程度増えればWebフロントエンド・サーバを追加すればよいかという指標を持つこともできるからだ。特にMOSSの大きなカスタマイズを行った場合は、パフォーマンス・テストを行い、カスタマイズで作成したWebパーツなどがサイト全体のパフォーマンスに影響を与えていないか検証するとよい。パフォーマンス・テストに関しては、下記ホワイトペーパーが参考になる。 - Microsoft Office SharePoint Server 2007 パフォーマンス検証 ホワイトペーパー
- Microsoft Office SharePoint Server 2007 インデクシング パフォーマンス検証 ホワイトペーパー
ここまででMOSS導入に当たって必要となる作業をフェイズごとに解説した。ここで解説した作業はあくまで必要最低限のものであるので、MOSSの導入を行う作業者自身がポータル・サイトの要件に応じて必要な作業を考えることが最も重要となる。特に決まったやり方があるわけではないので自分なりの解を持って導入に当たっていただきたい。
まとめ
この連載では、MOSSのサイト機能やデータ管理機能、プロファイル機能、検索機能などMOSSの基本機能について解説してきた。MOSSにはほかにも連載の中で紹介できなかったビジネス・データ・カタログ機能やシングル・サインオン機能、ワークフロー機能など、豊富な機能が含まれている。
MOSSをこれから勉強される方は本連載で紹介した基本機能をしっかりと理解し、それからほかの機能について学習を進めるとよい。またMOSSの導入に際しては、標準機能でまかなえる範囲とカスタマイズを要する範囲の見極めが重要になる。その見極めは、記事やトレーニングによる学習だけでは絶対に身に付けることができない。記事やトレーニングで基本的な考え方を学んだ後で、MOSSの環境を構築し、実際に自分自身の手で動かしてMOSSの細かな部分まで掘り下げて学習する必要がある。
ほかにもWebパーツ開発やカスタム・フィールド開発、ワークフロー開発などSharePointのカスタマイズに関する知識も必要となるが、MOSSはまだまだ日本語情報が少ない。本連載が、MOSSの基本機能を理解し、MOSSの導入を円滑に進める一助となることを願っている。
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