TOEICテストを運営する国際ビジネスコミュニケーション協会は5月16日、明海大学外国語学部 小池生夫教授を研究代表者とする研究グループ「小池科研」と共同で実施した、英語教育に関する基礎研究の成果を発表した。海外勤務経験者を対象に行った「企業が求める英語力」の調査結果を発表すると共に、そこから導き出される、日本の英語教育への提言を行った。
「企業が求める英語力調査」は、海外勤務の経験者(短期の出張を含む)7354人を対象に行った。高千穂大学商学部 寺内一教授は、「実際に海外で仕事をした経験のあるビジネスパーソンを対象にした、これだけ大規模な調査は国内初」であると語った。英語コミュニケーション能力の具体的な指標を設定し、最高到達目標を具体的に提示すること、またその目標に到達するために必要な教育のステージを設定することを目標としている。
寺内氏は「調査結果は膨大」であるとし、その中から調査結果を抜粋して説明した。アンケートから、「最後に受けたTOEICのテスト結果」について聞いたところ、母数6651人のうちの90%が「550点以上」を取っていることが分かった。「850点以上」は全体の20%だった。しかし、「日本人が国際交渉を第一線で行うのに必要な英語力」を得るために必要だと思うTOEICの得点を聞いたところ、母数7294人のうちの20%が「900点以上」が必要と回答した。「750点以上」が必要だと考えている人は全体の90%。全体的に、自身が実際に取得している点数では、実践的に必要なレベルに到達していないと考えられていることが分かった。これを受けて寺内氏は、「日本人が国際交渉を第一線で行うには、最低でも、TOEIC換算で800点は必要である」と提言した。
さらに、職務上で「どの程度、英語で内容を理解または発表できるか」について、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4つのアクションごとに、「簡単な内容の場合」と「複雑な内容の場合」に分けて調査した。その結果、「聞く」「読む」に比較して、「話す」「書く」が「難しい」と考えられていることが分かった。例えば、複雑な内容について話す場合、90%以上の内容を話すことができると考えている人は、全体のわずか8.0%に過ぎなかった。「日本人が苦手とされているスピーキングとライティングは、本調査でも苦手意識が如実に出た。これはTOEIC高得点者であっても同様だ。また、簡単な内容か複雑な内容かで、理解または発表できるかどうか、大きな差が出ている」と寺内氏は解説した。
また、調査は業種・職種共に幅広く行われたが、中でも業種では「情報通信」、職種では「経営企画」や「販売」、「技術」などが、特に高い英語力を必要としている傾向にあると寺内氏は説明した。
調査結果を受けて小池氏は、中国や韓国、台湾の状況と比較し、「到達目標を考えると、日本でも小学1年生から段階的に英語教育を行う必要がある」と提唱。また、上記3カ国に比べて、英語の学習指導要領に記載されている「英語教育への姿勢」が日本は弱いと指摘し、国の政策レベルで考える必要があると強調した。
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