11gからの新管理機構「ADR」を理解しよう:Oracleトラブル対策の基礎知識(2)(3/4 ページ)
11gからは、ログの管理機構に大幅な変更が加わり、Automatic Diagnostic Repository(以下、ADR)で管理されるようになりました。今回は、ADR、ADRに格納されている診断データ、および診断データを参照するためのユーティリティであるADRCIの使用方法について解説を行います。
インシデントパッケージングサービス(IPS)
インシデントパッケージングサービス(以下、IPS)は、クリティカルエラーが発生した際に、原因追究に必要となる情報を収集し、その情報をZIPにパッケージングし、Oracleサポートサービスに敏速に送付することを目的としています。
従来のアラート・ログやトレース・ファイルでは、アラート・ログを確認し問題時の該当のトレース・ファイルを検索・収集した後、Oracleサポートへ送付する必要がありました。
結果として、ファイルの検索に時間を要したり、送付される情報に不必要なトレース・ファイルが含まれているため、送付されるファイル数が膨大な数になってしまうという難点がありました。
IPSでは、診断情報を選択してパッケージングできるため、必要な診断情報を容易に特定でき、不必要な情報を除くことができます。従来のアラート・ログやトレース・ファイルより敏速にOracleサポートへファイルを送付することが可能です。
インシデントパッケージの作成については、基本的に2つのステップで行います。
- Logicalパッケージの作成
- Physicalパッケージの作成
まず、「Logicalパッケージの作成」で、「問題」単位もしくは「インシデント」単位などを指定し、ZIP化する診断情報のメタデータを収集します。このメタデータを基に「Physicalパッケージの作成」から実際にZIP化します。空のパッケージをあらかじめ作成し、その後パッケージにインシデントを追加したりすることも可能です。
ADRCIコマンドを使用した具体的な作成例については、後述のADRCIコマンドの項目で解説します。
ADRCIコマンド
ADRCIコマンドは、Oracle Database 11gから新しく導入されたコマンドツールです。ADRCIコマンドから、以下を実行することができます。
- ADR内の診断データの参照
- インシデントパッケージの作成
では、実際にADRCIコマンドを使った診断データの確認およびインシデントパッケージの作成方法について解説していきます。
ADRCIの起動
ADRCIは、ORACLE_HOME/bin配下にあるadrci(Windows系OS環境の場合はadrci.exe)から起動します。
ADRCIを起動すると、バージョン情報および現在参照しているADR_BASEのPATHとADRCIのコマンドプロンプトが表示されます。
今回は、Windows環境の実行例を記載しています。
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ADRCIからアラート・ログの参照
ADRCIからのアラート・ログの参照は、ADRCIコマンドプロンプトからSHOW ALERTを実行します。
この際、同一マシン上に複数のデータベースが存在する場合、ADR_BASE配下に複数のADR_HOMEが存在するため、単一のADR_HOMEの選択を要求されます。ADRCIコマンドでは、マルチADR_HOMEに対応していないコマンドがあります。そのため、あらかじめADR_HOMEを設定しておくと便利です。
また、SHOW ALERTはデフォルトで、UNIXに標準で実装されているviエディタを使用して、アラート・ログを表示するように設定されています。Windows系OSの環境ではviエディタが標準では存在しないので、あらかめ使用するエディタを設定しておく必要があります。
以下の例ではWindows系OS環境での実行手順について記載します。
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以前、Windows系OS環境においてUNIXのtailコマンドのような確認を行いたい場合には、Cygwinなどを利用する必要がありましたが、ADRCIでは、
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を実行することで、UNIXコマンドのtail -fと同様の出力を得られます。テストを実施しながらリアルタイムでアラート・ログの出力状況を確認する場合に利用すると便利です。
ADRCIから「問題」「インシデント」の確認
ADRCIから「問題」の発生状況を確認するには、show problem/show incident を実行します。発生している「問題」のPROBLEM_ID、PROBLEM_KEY、INCIDENT_IDについて確認できます。以下に、show problem/show incidentの出力例を示します。
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