VMotion、DRS、そしてVMware HA:VMware Infrastructure 3 徹底入門(3)(2/4 ページ)
ハイパーバイザの「VMware ESX」をベースに、サーバ運用の自動化と円滑化のためのさまざまな機能を組み込んだのが「VMware Infrastructure 3」だ。仮想マシンを無停止で別の物理サーバに移動することで、ハードウェアのメンテナンスを楽にしたり、自動的に各物理サーバ上の負荷を調整したり、低コストで可用性を確保したりすることができる。今回はこれらの有用な機能について解説する
小さく始めて後からシステム増強
「最初は小規模な設備でサービスを開始し、トランザクションの増加に応じて順次規模を拡大していきたい」という場合でもVMotionを活用することができる。新規にシステムを構築する場合、数カ月先まで見据えた大規模な設備を最初の段階から設置しておくことはなかなか難しい場合が多い。そこで最初は小規模でサービスを開始し、順次システムを拡大するというアプローチを取ることになるが、VMotionを用いるとサービスを停止させることなく物理資源を増設できる。
ほかにもさまざまなVMotionの活用方法が考えられるが、いずれにせよこれは「仮想マシン」であるからこそ実現可能な芸当であることにほかならない。
非常に便利なVMotionであるが、必ず共有ストレージ装置が必要になるということに注意してほしい。前回でも述べたがVMware Infrastructure 3を活用する上で、複数の物理マシンから共有利用可能なストレージアレイ装置は極めて重要な役割を担っている。VMotionは仮想マシンの実行インスタンスを無停止移動させる機能であり、ディスク上のデータを移動させる機能ではないためである。共有ストレージ装置の接続形態としては ファイバチャネルSAN、iSCSI SAN、NFS version 3 over TCPを利用することができる。
また、VMkernelネットワークと呼ばれる専用のネットワークを構成することも必須となる。VMotionを実行する際、物理マシン間で仮想マシンの実行インスタンスのデータを転送する必要があるためだ。ここにはGigabit Ethernetを用いる必要がある。
まるで魔法のようなVMotionであるが、「本当に無停止なのだろうか?」と疑念を抱く方もいるだろう。厳密には「ミリ秒単位では停止時間が存在する」という表現が正確である。しかし言い換えると、これは「停止時間はミリ秒単位しか存在しない」ということである。しかも、ネットワークセッションも切れず、仮想マシンの状態も完全に保持され、移行される。今日のx86系システムではミリ秒単位の停止時間であれば問題とならないサービスが大半であり、「無停止」という表現で問題ないだろう。
VMotionは2003年より提供されている機能である。市場に投入されてから5年以上も経過している。安定した、十分に枯れたテクノロジーであるといえる。仮想マシンを採用するに当たって、ぜひこの素晴らしい機能を活用することを検討していただきたい。
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