VMotion、DRS、そしてVMware HA:VMware Infrastructure 3 徹底入門(3)(3/4 ページ)
ハイパーバイザの「VMware ESX」をベースに、サーバ運用の自動化と円滑化のためのさまざまな機能を組み込んだのが「VMware Infrastructure 3」だ。仮想マシンを無停止で別の物理サーバに移動することで、ハードウェアのメンテナンスを楽にしたり、自動的に各物理サーバ上の負荷を調整したり、低コストで可用性を確保したりすることができる。今回はこれらの有用な機能について解説する
DRSとDPM - 自動的なワークロードの分散配置
前節でVMotionの活用方法の1つとして、「各物理マシンのワークロードを比較的均一に保つ」という例を紹介したが、これを自動化することはできないだろうかと考えた読者もいるのではないだろうか。まさにそれを実現しているのが DRS - Distributed Resource Scheduler(分散資源スケジューラ)である。
VMotionを単独で利用した場合は、管理者が何らかの方法(多くの場合はGUIからの操作で)でVMotionによる仮想マシンの移行をその都度実行するか、もしくは VirtualCenterのスケジュール化機能を使用し一定の規則で移行を行うかになる。そうではなく、各 VMware ESXのワークロードの状況をリアルタイムに収集し、そのときそのときの負荷状況に合わせて自動的にVMotionを実行するというのがDRSである。
DRSを有効化すると、VirtualCenterは各ESXと仮想マシンのワークロードを監視するようになる。仮想マシンごとに移行することの有効性を判断し、必要に応じてVMotionを自動的に発動し、計算資源が均一に利用されるよう最適化を行う。
VMware ESX 3.5/VMware VirtualCenter 2.5以降では、DRSに加えてDPM - Distributed Power Managementという機能も提供されている。インフラ全体のワークロードが低い時間帯、例えば深夜や週末などを考えてみてほしい。多くの仮想マシンがアイドル状態にある時間帯は、できれば稼働させる物理マシンの数は少なく抑えたいと考えるはずだ。
DPMを有効化するとこれを自動的に行わせることができる。負荷が低く計算資源が余っている時間帯が続くとVMotionを自動的に発動し仮想マシンをより少ない台数の物理マシン上に集約する。そして幾つかのVMware ESXについてはその上で動作する仮想マシンがない状態にしてしまい、物理マシンごとシャットダウンさせてしまう。再びワークロードが高まると、自動的に物理マシンに電源を投入しサービスを再開させる。物理マシン単位で電源のオン・オフを自動制御することで、極めて効果的に消費電力の最適化を行うことが可能となる。
DPMはDRSの追加機能といった形態で提供されている。DPMを有効化したい場合はまず DRS の設定を完了させ、その後 DPM の設定を有効化する。DPMは残念ながら本稿執筆時点では「試験的サポート」という扱いとなっている。これは物理マシンの電源投入にWakeup On LAN(以下、WOLと略記)というテクノロジーを利用しているためだ。WOL 自体は比較的長く使われてきた技術であるが、一方で100パーセント確実な電源投入が保障できる機構ではないことも事実である。このため 、VMware ESX 3.5/VMware VirtualCenter 2.5の世代ではDPMは正式サポート扱いとはしていないので注意が必要である。現在ヴイエムウェアでは確実な電源管理機構の実装を進めており、次期以降のバージョンでは正式サポートとする計画である。
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