第1回 SCVMMによって複数のHyper-Vを一元管理する:仮想化環境を効率よく管理するSCVMM 2008の概要(1/3 ページ)
サーバ仮想化技術Hyper-Vの実運用に必須の管理ツール「System Center Virtual Machine Manger 2008」。その機能概要と運用の実際。
サーバ仮想化技術「Hyper-V」は、Windows Server 2008の標準機能として登場し、標準管理ツール「Hyper-Vマネージャ」との組み合わせによって仮想環境を容易に利用できるようにした。また、Windows Server 2008の標準機能であるHyper-Vとは別に、仮想化ソフトウェア単体として「Hyper-V Server 2008」が無償提供されたことで、企業の事情などでWindows Server 2008を導入するまで時間を要する企業であっても、Windows Server 2003などの既存システムをHyper-V上で仮想マシンとして利用できるようになった(以降、Windows Server 2008のHyper-Vと、単体で提供されたHyper-V Server 2008を合わせて「Hyper-V」とする)。
今後、多くの企業がサーバの仮想化を進めていくことは誰もが予想している。これにより企業の中には、複数台のHyper-Vマシンとその上で稼働する多くの仮想マシンが存在することになるだろう。そして次には「複数台のHyper-Vを効率的に管理する方法はないのか?」という問題に直面するはずだ。
こうしたニーズに応えるため、マイクロソフトは、複数のHyper-Vマシンの一元管理を支援する製品「System Center Virtual Machine Manger 2008(以降 SCVMM)」の開発を進めている。サーバ仮想化技術の導入理由に「運用管理の柔軟性」を挙げる企業が多いことを考えれば、Hyper-Vを理解した管理者は、ほぼ間違いなくSCVMMについても学ぶことになるだろう。そこで本連載では、SCVMMを利用した仮想システムの構築と運用について数回に分けて解説をしていく。
複数のHyper-Vを効率的に管理するために
一昔前までは特殊な環境でしかなかったサーバの仮想化も、いまでは多くの企業と管理者の注目を浴びており、効果が出やすいことも手伝って導入事例も徐々に増えてきている。しかし仮想化することのハードルは下がっても、仮想サーバの管理という未知の世界の運用管理が待っており、運用管理者にとってはメリットばかり語っていられない状況になってきた。そこでマイクロソフトは、物理サーバ/仮想サーバが乱立するシステムであっても効率的に管理できるようにするための仕組みを「System Center」ブランドによって確立しようとしている。
System Centerは現在、以下の4つの製品で構成されている。
- 構成管理
- 稼働監視
- バックアップと復元
- 仮想システム管理
今回紹介するSCVMMは、このうち「仮想システム管理」向けの製品として複数のHyper-Vとその上で動く多くの仮想マシンの一元管理という役割を担うことになる。
SCVMMのコンセプトと一元管理のポイント
まずは下図を見てSCVMMを頭の中でイメージしてもらいたい。
仮想システムの一元管理
SCVMMを利用すれば、ネットワーク内にある複数のコンピュータ上の、複数の仮想環境を一元管理できる。図にあるとおり、Hyper-Vはもちろん、VMware ESXベースの仮想環境も統合管理が可能である。
図のように、SCVMMは、複数のHyper-Vマシン/Virtual Serverマシン/VMware ESXの集中コントロール機構として仮想システムの管理環境を提供する。そして、ライブラリと呼ばれるVHDファイル(Hyper-V環境を構成するファイル)の置き場所を用意することで、テンプレートの集中管理ができ、スムーズにサーバのコピーが作成できるようになる。また、仮想マシンを作成する際、どの物理マシン上に配置するべきかを教えてくれるのもSCVMMだ。図のような5台の物理マシンがある場合、仮想マシンが1台しか動作していない2番目のHyper-V(Hyper-V 2)が、一見すると負荷が低く、新たな仮想マシンを作成するのに最適であるように思える。しかし物理マシンの性能や負荷などから、すでに仮想マシンが2台動いている3番目のHyper-V(Hyper-V 3)の方が配置に適しているということもある。こうした点は、見た目だけでは分からないが、SCVMMはサーバをリアルタイムに監視することでそれを可能にする。このようにSCVMMでネットワークを一元管理することで、個別のサーバ単位ではなく、ネットワーク内にある複数のサーバ全体を見わたす管理ができるようになる。
上図は、SCVMMの管理画面と、ある仮想マシンにリモートコンソールで接続したところだ。SCVMMは、マイクロソフトが提供するほかの管理環境と同様のユーザー・インターフェイスを備えており、使い慣れた管理者なら違和感なく使える。もちろん、作業は物理的な場所を意識することなく実行でき、複数の物理サーバをまたがるような作業も容易に行えるようになっている。
自明なものもあるだろうが、ここでSCVMMによる一元管理のメリットを整理しておこう。
■仮想サーバ・ライブラリを利用した迅速な仮想マシン作成
Hyper-Vで稼働する仮想サーバは基本的にVHDという形式のファイルとして保持される。SCVMMは、Windows Server 2003やWindows Server 2008をインストールして出来上がったVHDファイルをライブラリ化することで、それをテンプレートとして仮想サーバを次々と作っていくことができる。これで、サーバOSをインストールするという手間から解放され、同様の構成を持った複数のサーバ環境を展開することも可能となる。
また、仮想サーバを作成する物理マシンに優先順位付けをし、適切な環境で仮想マシンを動かせるよう支援する。
■プロファイルやテンプレートによる作業の標準化
CPUやメモリなどの設定を事前にプロファイルとして保存しておくことができる。例えばハイスペック/スタンダード/ロースペックといった設定を事前にしておけば、毎回細かな設定をすることなく作業を標準化できるようになる。
■スクリプト環境との融合による管理の自動化推進
SCVMMは、すべての操作をスクリプトで実行可能なため、繰り返し処理や定期的に実行する処理を容易に自動化できる。また、コマンドやスクリプトに慣れた管理者であれば、管理コンソールを立ち上げることなく日々の管理作業をこなすことも可能だ。
■仮想マシンの移動や複製
複数の物理マシンを一元管理することによって、物理マシン間で仮想マシンの移動・複製などを実行できる。
■物理環境から仮想環境への変換(P2V)とVMware環境からの移行(V2V)
すでに稼働しているWindows 2000 Server SP4以降/Windows Server 2003 SP1以降/Windows Server 2008(詳細は次回以降に解説)などの物理マシンを仮想マシンに変換できる。また、VMware環境で作られた仮想マシンをHyper-V上の仮想マシンに移行する機能も提供する。
■権限委任とセルフサービス
SCVMMは、エンド・ユーザー自身が管理者として仮想サーバを管理できるように、セルフサービス・ポータルを用意している。これらを利用すれば、部門で管理していたサーバをサーバ・ルームで仮想化した場合でも、部門の管理者に管理を委任できる。
■Virtual Server 2005 R2 SP1、VMware環境の管理も一元化
SCVMMは、Hyper-Vのほか、Virtual Server 2005 R2 SP1環境(2006年4月より無償提供)を管理できる。さらに相互運用性を確保するために、VMware ESXの管理も行える。VMware環境の管理は、Virtual CenterというVMware専用の管理環境経由で実行されるが、すべての作業をSCVMMの管理画面から一元的に実行できる。
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