IT界の埋蔵金? 手付かずのセキュリティコストと戦う:セキュリティ、そろそろ本音で語らないか(1)(2/3 ページ)
あなたの会社は、従業員に負担を強いるセキュリティ対策を行っていませんか? 本連載ではコンサルタントの視点から「やったつもりの対策」や「やる気をそぐ対策」、「守れもしない対策」を本音で語り、これらも含めた「情報セキュリティコスト」を考えます(編集部)
セキュリティベンチャー乱立の時代
セキュリティ対策が対症療法的に単機能製品の重ね合わせになってきた背景には、ITバブルの流れも関係しています。セキュリティベンチャー企業には、その成長性が見込まれて多くのベンチャーキャピタルが出資をしてきました。特に米国でその流れがしばらく続いたために、できたばかりの製品が日本に持ち込まれては「これは新しい画期的な製品である」とセミナーで集客していました。
その流れを受けて、それほど多くはないですが日本でも「国産」を売りにしたセキュリティ製品が、ベンチャー企業を中心に開発されてきました。いくつかはいまも残っていますが、消えていったものも少なくありません。
このようなベンチャー企業によるセキュリティ製品の開発、販売も一服した感があります。それはセキュリティビジネスが以前のような高い成長性を維持できないことが分かってきたからです。さらに、セキュリティに限らずITベンチャー全体の流れの影響も強く受けています。
ベンチャー企業によるセキュリティ製品の中には、とても優秀なものもあり、米国製品の大ざっぱな作りよりは、仕様や機能が細やかで融通が利くものも多くあります。しかし残念なことに投資金額、市場の規模の違いから、開発投資に競争力が不足しているケースが少なくないのも現実です。その中でも戦っている企業には、政府調達を含め国としての支援が必要であると思います。
こういったベンチャー企業の製品を複数導入した場合、いずれは統合しなければいけない時代が来ます。いま、まさにその大波が押し寄せてきているのです。
企業が困ったときに削るコストは何でしょう?
いま、日本企業には戦争中よりも深刻、あるいは、100年に一度の経済危機が襲いかかってきています。不動産バブルの直後だけに不意を突かれた形で、大企業は次々と業績の下方修正を出しています。特に輸出をメインとする製造業には計り知れないダメージを与えています。首相をもってして「全治3年、その後消費税アップ」というくらいですから、この先何年も耐え忍ぶ時代が来るのでしょう。
企業にとって収益が悪化したときにまずやることは「コスト削減」です。売り上げを伸ばそうにもこの円高ではコスト削減が最優先の課題です。では、何のコストが削られるのでしょうか? まともな経営者であれば、人件費、特に、正社員の給与に手を付けるのは最後にするでしょう。
原材料費の価格交渉、未執行予算の凍結、さらには光熱費、事務用品費まで徹底したコスト削減のキャンペーンがやってきます。事務所の蛍光灯を間引いて減らしている会社も珍しくありません。さらに悪いことに、年末のタイミングでは期末決算までほとんど時間がありませんから、猛烈なコスト削減の波となることは容易に想像がつくでしょう。
そんな今日このごろ、情報セキュリティにかけられているコストにも当然目を向けられることでしょう。「一律20%カット」の指示が出ている大企業もあります。生産に必要なコスト以外の間接コストは徹底的に削減対象として「絞りきれるまで絞る」のが基本的な考えであるからです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.