東京大学の「マイクロソフト先進教育環境寄附研究部門」(MEET)は12月5日、聴衆がプレゼンテーションに参加できるソフトウェア「MEET Borderless Canvas」を開発し、デモンストレーションを行った。
MEET Borderless Cnvasは、聴衆がプレゼンテーションを聞くだけでなく、参加しリアルタイムに議論を展開できるシステム。発表者のスライドの気になった部分に、ペンタブレットPCで書き込みができる。ユーザーは、MEET Borderless Canvasのサーバにアクセスし、資料を共有する。ソフトウェアは、2009年3月4日にMEETのWebサイトで無償配布する予定。また、マイクロソフトが運営する開発者向けコミュニティ、CodePlexのWebサイトでソースコードを公開し、さまざまな教育機関で活用できるようにする予定だ。
MEET Borderless Cnvasを開発した東京大学 大学総合教育研究センター 特任助教の栗原一貴氏は、従来のプレゼンテーションの問題点について次のように指摘する。「発表者が一方的にプレゼンテーションを終えた後、最後に質問を募っても質問が出てこないことは多い」。聴衆は何か聞きたいことがあっても、プレゼンテーションの間に忘れてしまったりするからだ。また、「従来のプレゼンテーションは、発表者のペースで行われるため、聴衆が内容を理解できていなくても次へ進んでしまっていた」(同氏)。MEET Borderless Canvasでは、現在のスライドだけでなく、前後のスライドも映せるため、過去や未来のスライドを振り返ったり、書き込んだりすることが可能。また、質問については、リアルタイムでコメントができるため、質問内容を忘れることは減る。
今回のデモンストレーションでは、東京大学大学院情報学環 准教授の山内祐平氏と学生10人が、MEET Borderless Canvasと3台のプロジェクタを使って、授業を行った。プレゼンテーションを聞く学生は、ペンタブレットPCを使用し、発表者のスライドで気になった部分に丸や四角などの記号、絵文字、文字、下線などの印をどんどん付けていく。
プレゼンテーション後は、山内氏の進行で、学生の書き込みを基に授業が進められた。山内氏が生徒の書き込みの中から議題を選び、「これは誰が書きましたか?」と質問すると、書き込んだ学生が手を挙げて説明をする。そこで議論が生まれる。学生参加型でも、議論は教授主体で行われるため、教授のファシリテーション能力が非常に問われる。
学生は、プレゼンテーションの途中、書き込みをしないでただ聞いていることも可能だ。山内教授は「この仕組みを使ってから、発言をしない学生というのがいなくなった。具体的な質問や発言をすることに抵抗がある学生でも、スライドに下線を引くくらいならできる。議論への敷居を下げることができた」と述べる。授業に参加した学生からは「ほかの人の着眼点が分かって面白い」といった感想があった。
山内教授は、MEET Borderless Canvasは、生徒数20人以下で、文献購読のような授業に向いているという。「100人以上の講義で、生徒を参加させる場合は、グループワークなど別のやり方を考えた方がよいのかもしれない」(同教授)。活用方法は、現在研究段階にある。来年のソフトウェア公開時には、活用事例をまとめた「すぐに実践できる活用シナリオ集」を配布する予定だ。
使用環境について、OSは、Windows VistaまたはWindows XP SP2以上。タブレットPCを推奨するが、タブレット以外のノートPC、デスクトップPCでも利用可能。プロセッサは、400MHz以上のCPUを推奨。物理メモリ 512MB以上(Windows Vista)、256MB以上(Windows XP)。フレームワークは.NET Framework 3.5が必要。
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