企業システムではネットワークストレージへの移行が進み、一部のクラウドサービスではソフトウェア的にストレージの冗長性を確保する動きも見られるようになってきた。すると、サーバ用のSAS RAIDアダプタの市場は先細っていくのではないか。以前サーバ用のSCSIアダプタで市場を席巻し、現在はSASアダプタを中心にビジネスを展開するアダプテックジャパン代表取締役の稲葉知彦氏に聞いた。
パラレルSCSIアダプタのイメージがいまでも強いアダプテックだが、「すでにSCSI製品は同社の売り上げ全体の30%弱に低下、SAS/SATA RAIDコントローラ製品が70%程度を占めるようになっている」と稲葉氏は話す。
特に大きいのはWebホスティング・サービス事業者などのためのホワイトボックスサーバベンダ向けビジネス。例えばサーバを製造・販売するとともに、レンタルサーバ事業を展開するエーティワークスでは、双方でアダプテックのSAS RAIDアダプタを全面的に採用しているという。
「Webホスティングやレンタルサーバ事業者では、1Uサーバに1ユーザーといった専用サーバ・サービスを提供する場合、各サーバでディスクドライブにミラーリングをかけ、データを保護する必要がある。そこで、高価ではなく性能のいい、安定したRAIDカードのニーズがある。この分野はかなり大きい」
しかし、一般のPCでもチップセットでディスクミラーリングをサポートしているものがあり、コストに敏感な事業者はこうしたものを使うことになってしまわないのだろうか。
「サウスブリッジでサポートされるものはあくまでもソフトウェアRAID。ホビーユースなら高速化のためにこうしたものが使われるが、問題が発生した場合にOSが落ちてしまうとログが取れず原因を究明できない。従って当社ではハードウェアRAIDに力を入れている。障害発生時にはログをファイルで送付してもらい、解析するサービスも提供している。購入前の検証のための評価機貸し出しも積極的に行っており、かなり利用されている」
アダプテックのRAIDアダプタは、ほかにもノンリニアビデオ編集、オーサリング、ストリーミング配信や、レセプトシステム、MRI装置用サーバなどの医療系、さらにはFA、半導体製造などのサーバでかなり利用されているという。
「産業系ではSSDのニーズが高まっているが、こうしたユーザーはSSDの寿命を懸念している。例えばSSDを販売するジェイ・ディ・エスは寿命監視ツールを提供しているが、当社ではこれをRAIDカード経由で適用できるよう、情報を開示するなどしている」
こうした業務特化型のシステムは、データを保護するニーズは高いが、統合ストレージを利用する方向に進みにくく、安定的な市場になっているという。
サーバベンダへのOEMが向こう1年の最重点項目
では、エンタープライズ・サーバ向けの製品については、今後あまり力を入れていかないのだろうか。
「昨年米アダプテックは、RAIDコントローラASICのAristos Logicを買収した。同社の製品を通じて、(エンタープライズサーバベンダに対する)OEMビジネスに力を入れていきたい。Aristos LogicのASICは他社にない設計がなされている。現行製品は7つのRISCエンジンによる並列処理を行うことができる。IBMはこれを、ブレードサーバ用のSAS RAIDコントローラカードとして採用している。現在は次世代の6Gbps SAS RAIDコントローラのデザインインに向けて、国内サーバベンダに対する働きかけを進めている」
稲葉氏は、サーバベンダへのOEM供給ビジネスが、今後1年間における最重要項目だと話した。
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