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SSD(Solid State Drive)Windows Insider用語解説

ハードディスクの代わりとして、ノートPCでの採用が増えてきた「SSD」を取り上げる。SSDとは何か、その特徴やメリット/デメリットは?

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 ハードディスクを代替することを目的として、半導体素子を用いて作成された記憶装置。現在、最も競争と進歩が激しいデバイス領域の1つ。

 記憶媒体としては、不揮発性の半導体記憶素子であるフラッシュメモリを用いるものが主流である(DRAMを採用したSSDも存在する)。ハードディスクのようにモータやヘッドなどの可動部品がないことから、衝撃に強く、消費電力が少ない、静穏であるなどの特長がある。そのため主にノートPCでSSDを採用するモデルが増えてきている。

 いわゆる「5万円ノートPC」として大きく話題になったASUSTeK Computer製ネットブック「Eee PC 701 4G」がハードディスクの代わりとしてSSDを搭載したことや、フラッシュメモリの低価格化によって比較的リーズナブルな製品が登場したことなどから、SSDに注目が集まった。

 このEeePCを始め、ネットブックに搭載されるSSDは、独自のインターフェイスを採用しているケースが一般的だが、より高性能なノートPCでは、IDEやSATA(シリアルATA)など、ハードディスクと交換可能な汎用的な接続インターフェイスを採用しているものもある。この場合、必要ならばSSDを取り外して、ハードディスクと交換することが可能だ。

EeePC向けのSSD
EeePC向けのSSD
EeePC 901対応のバッファロー製SSD「SHD-ES9M64G」。独自インターフェイスを採用するEeePC向けの置き換え用SSDで、EeePC 901のデフォルトの16Gbytesから64Gbytesに記憶容量を拡大する。

Intel製のSSD「Intel X25-E Extreme」
Intel製のSSD「Intel X25-E Extreme」
インターフェイスにSATAを採用したSLC型のフラッシュメモリのSSD。形状は、2.5インチ・ハードディスクと同じである。

 SSDは、現時点において容量や容量単価の面でハードディスクにかなわないものの、ここ数年で大容量化、低価格化が進んでおり、小容量でよければ、ハードディスク代わりに使える記憶装置になった。ただし、フラッシュメモリの書き込みシーケンスはオーバーヘッドが大きく、製品と用途によっては、ハードディスクに比べてアクセス性能が大幅に低下するケースがある(詳細後述)。

フラッシュメモリの種類

 SSDには、大きな記憶容量を比較的容易に実現可能な、NAND型フラッシュメモリが使用されている。SSDに採用されるNAND型フラッシュメモリは、1つの記憶素子(セル)に1bitのみが記憶可能なSLC(Single Level Cell)型と、2bit以上が記憶可能なMLC(Multi Level Cell)型の2種類に大別される。

 SLC型は、単純に記憶素子に電荷量の「ハイ」と「ロー」の2値(1bit)でデータを記憶するため、記憶素子の劣化やノイズに対する耐性に強い。そのため、信頼性が高く、書き換え可能回数も10万回程度と、MLC型の1万回に比べて10倍も大きい。反面、1bit当たりの単価が高くなってしまう。

 一方のMLC型は、電荷量の「ハイ」と「ロー」だけでなく、中間値を設けることにより、3値以上でデータを記憶する。そのため、記憶素子(セル)の数に対して記憶できるbit数が多くなり、その結果、SLC型に比べて安価に大容量の製品が製造できるというメリットがある。一方で、記憶素子の劣化やノイズなどにより、電荷量が不安定になると、間違った値として読み出されることになるため、SLC型に比べると若干、信頼性が劣る部分がある。

 一般にクライアントPC向けでは安価なMLC型、サーバ向けでは信頼性の高いSLC型が採用されることが多い。

種類 SLC型 MLC型
1記憶素子当たりの保存bit数 1bit 1.5bit以上
価格 高価 比較的安価
性能 高速 やや高速
書き換え可能回数 10万回程度 1万回程度
SLC型とMLC型の違い

SSDの書き換え速度は遅い!?

 NAND型フラッシュメモリは、その特性として、すでに書き込みが行われている記憶素子に別のデータを上書きする場合、以前のデータをまず消去してからでないと、新しいデータを書き込めない。そして、この消去が単純な書き込み処理に比べて非常に遅い。例えば、あるNAND型フラッシュメモリでは、書き込み時間が200μsなのに対して、消去時間は2msと10倍も遅い場合がある(実際の速度はフラッシュメモリの製品によって異なる)。

 さらに読み出し/書き込みはページ単位で可能なのに対し、消去は複数ページからなるブロック単位でしかできない。従って、例えば1ビットを書き換えるだけでも、変更のないページを含めブロック全体をいったん消去し、ブロックのデータを書き戻さなければならない。

 具体的には、例えば、ページが2Kbytes、ブロックが64ページ(128Kbytes)の製品の場合、2Kbytes(1ページ)を書き換えるだけでも、1ブロック(128Kbytes)全体の読み出し、1ブロックのデータ消去、書き換えた1ブロックの書き込みが必要になる(下図参照)。このような仕様から、SSDでのデータ書き換えのオーバーヘッドは非常に大きい。

SSDの書き換えシーケンス
SSDの書き換えシーケンス
1ページのデータを書き換える場合でも、常に1ブロック全体のデータ読み出し、消去、書き戻しが発生する。なお図では、1ページのサイズを2Kbytesとしているが、実際にはこれに予備領域(スペア領域)として64bytesが加わるため、2Kbytes+64bytesとなる。

 この図では、分かりやすくするために、物理的な1つのブロックを更新するという前提で説明したが、実際には、書き換え回数をメモリ全体で均一化するため、異なるブロックに書き戻すようになっている。従って実際には、ブロックは「未使用」としてマークされるだけだが、いずれにせよ次回に上書きする際には、ブロックの物理的な消去(ゼロクリア)が必要になる。

 低価格なSSDにおいては、このような書き換えの仕組みから、書き込み時に一瞬Windows OSがフリーズしたように見える「プチフリーズ(プチフリ)」と呼ばれる現象が発生するという問題があった。しかし、コントローラの改善やキャッシュ・メモリを搭載することなどで、SSDの見かけ上の書き換え性能は向上しており、プチフリーズを起こすような製品は減る傾向にある。

 また前述のようにフラッシュメモリには書き換え回数に制限があり、MLC型ではわずか1万回の書き換えで障害が発生する可能性がある。そこでコントローラによって、同じ記憶素子ばかりを書き換えないように均一化を図る「ウェアレベリング」と呼ぶ操作を行うことで、製品寿命の延長を図っている。SSDベンダによれば、ウェアレベリングにより、実用上問題ないレベルの製品寿命が確保されているとしている。とはいえ、SSD(のほぼ全域)を何度も書き換えるような作業やデフラグ操作などは書き換え回数を無用に増加させ寿命を縮めることになるので、避けるべきである。

 なおSSDの大容量化と低価格化は急速に進行しているものの、一方でハードディスクの容量当たりの単価は1Gbytes当たり20円程度(2.5インチ、SATA製品の場合)と、依然として1Gbytes当たり300円以上もするSSDよりも非常に安価であることから、当面の間SSDは、一部のノートPCでの採用にとどまるという見方が多い。

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