VMware vSphere 4の登場:VMware vSphere 4徹底解剖(1)(2/3 ページ)
主要サーバ仮想化ソフトウェアであるVMware Infrastructure 3の後継バージョン、「VMware vSphere 4」が登場した。「クラウドOS」をうたい、基本機能を大幅に強化するとともに、重要な機能追加を行った。本連載では、このvSphere 4の主要機能を解剖する。
Serial ATA内蔵ディスクドライブのサポート
VMware ESX 4.0では内蔵ディスクドライブとしてSerial ATA(以下SATAと略記)を利用する構成方法を正式にサポートしている。以前はSCSIもしくはSASディスクドライブの利用が必須であったが、VMware ESX 4.0ではSATA内蔵ドライブへのESXのインストール、ダンプ用パーティションの作成、ならびにVMFS領域の構築が可能となった。SATAをサポートしたことで、導入の敷居は大幅に低くなったといえるだろう。
サポートされているSATAコントローラに関しても、上記のコンパチビリティガイドで確認することができる。本稿執筆時点ではIntel ICH10、nVidia MCP55、Broadcom BCM HT1000などがサポート対象デバイスとして掲載されている。なお、SATAコントローラは機種によっては複数の動作モードを有しており、構成モードによってはESXでの利用がサポートされない場合がある。VMwareのコンパチビリティガイドでは、サポートされるデバイスのVIDとDID(デバイスによってはSVIDとSSIDも)を明記しているため、導入時はサポートされる動作モードとなるよう、デバイスの構成を事前に行っておく必要がある。
電源管理と保守性の向上
VMware vSphere 4では、対応可能な物理マシンのスペックの拡大に加え、より綿密な電源管理機構や、仮想マシンの保守性の向上に寄与する新機能を提供している。
CPUパワーマネージメント
ESX 4.0はEnhanced Intel SpeedStep TechnologyならびにEnhanced AMD PowerNow ! Technologyに対応した。これによりそのときの負荷に応じて動的にCPUの電圧や周波数を変化させ(プロセッサのP-States制御)、低負荷時の消費電力の削減を実現している。
デフォルトではこの機能は「static」、つまりOSによるパワーマネージメントを行わないという動作モードに設定されている。BIOSなどによるパワーキャッピング機構により電力制御を行なう場合は、こちらのモードで利用する。
ESX自身による動的なCPUパワーマネージメント機能を有効化したい場合は、Power.CpuPolicyというパラメータを「dynamic」に変更する。これは「構成タブ→ソフトウェア・詳細設定」で起動される詳細設定ウィンドウから行うことができる。ただし、この機能を有効化するには、その物理マシンのCPUおよびBIOSが電力管理テクノロジに対応しており、かつ有効化されていなければならない。変更の際にエラーとなってしまう場合は、ハードウェアおよびBIOSが電力管理テクノロジに対応しているか確認してみよう。
VMware Distributed Power Managementの正式サポート
CPUパワーマネジメントが単一物理マシン内部における省電力機構を提供しているのに対し、VMware DPMは複数の物理マシン群に対して適用する省電力機構である。仮想マシンのワークロードが低い状況が続くと、システムは自動的に仮想マシンのVMotionを発行し、限られた数の物理マシン上に集約させる。これにより仮想マシンがひとつも実行されていない物理マシンを意図的に作り出し、その後その物理マシンのシャットダウンを行う。このとき該当システムはACPI S5ステートに遷移するため、実質的にパワーオフ状態となり、大幅な電力削減を期待することができる。仮想マシンのワークロードが高まってきた際には、休止中の物理マシンの電源を投入し、再び計算資源の中に組み入れる。するとVMware DRSにより自動的にVMotionが実行され、物理マシン間における負荷分散が行われる。
VMware Distributed Power Management(VMware DPM)はVMware Infrastructure 3においても「試験的サポート」という扱いで提供されていたが、VMware vSphere 4では「正式サポート」という取り扱いに変更された。また物理マシンの電源投入を行う手段として、これまで提供されていたWakeup On LANによる方法に加え、IPMIによる方法、iLOによる方法をサポートした。いずれの場合も事前に各ESXに対して「スタンバイモードへの切り替え」と「パワーオン」の操作をテストし、正常に動作することを確認しておくことが必須となる。これが該当システムにおけるVMware DPM適用の正式サポートの条件となるためだ。
IPMIもしくはiLOによる電源投入機能を利用したい場合は、該当物理マシンのBMCにアクセスするためのIPアドレス、ユーザ名、パスワード、MACアドレスなどの情報を設定しておく必要がある。これは構成タブの「電力管理」より設定することができる。
VMware DPMによる消費電力の削減は大変効果的である。負荷状況に合わせて通電するサーバをダイナミックに変更していくという手法は仮想化されたインフラならではの先進的なアプローチといえるだろう。DPMのベースとなっているテクノロジであるDRSは市場投入後3年、VMotionは6年が経過しており、すでに十分に安定した機能といえる。今回DPMも正式サポート扱いとなったことで、データセンターのあり方はよりダイナミックな方向にシフトしていくことだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.