介護かキャリアか〜重大な意思決定でのポイント:心の健康を保つために(13)(1/2 ページ)
ITエンジニアの周りにはストレスがいっぱい。そんな環境から心身を守るためのヒントを、IT業界出身のカウンセラーが分かりやすく伝えます。
エンジニアの皆さんは、まだ介護について悩むことはあまりないかもしれません。しかしこれから日本は「超高齢化社会」に突入しようとしています。兄弟や親戚が少ない、一人っ子であるなど、頼る人間が少ない状況で介護の役割を担わなければならなくなったとき、どうすればいいでしょうか。「キャリアをとるか介護をとるか」で悩んでしまうかもしれません。
「キャリアか介護か」――今回は、重大で難しい意思決定をする際のポイントを説明します。
父が倒れた
Cさんは35歳のエンジニア(男性、独身)です。父親は75歳で、母親は昨年病気で亡くなりました。現在は実家で父親と2人の生活です。
母の死のショックがようやく薄らいできたころ、今度は父が脳梗塞(こうそく)で倒れてしまいました。幸いなことに命に別状はありませんでしたが、手足がしびれるなどの症状が残ってしまいました。家の中をゆっくり動くことはできますが、手にしびれがあるので食事の用意などができません。そのため、Cさんが昼食や夕食を用意してから出勤し、残業を少なめにして帰宅するようになりました。父親の世話をしながら仕事をする毎日で、Cさんはかなり疲れがたまっていました。
介護か赴任か
あるとき、Cさんは部長に呼ばれました。地方都市の事業所に新しくできるグループに、課長として赴任してくれないかと打診されたのです。会社が最近力を入れている事業に絡む仕事だったため、Cさんにとっては昇進のチャンスでした。本当は大喜びで引き受けたい話ですが、父親のことを考えると、Cさんはどうしていいか分からなくなってしまいました。
Cさんは一人っ子で、近くに父親の世話を頼める親戚もいません。「母が亡くなったうえに体も不自由になってしまって心細そうにしている父を見ると、家を離れることはできない」と、Cさんは悩みに悩んで相談にいらっしゃいました。
まずは頭をクールダウン
まずじっくり話を聞き、父親思いであるからこその悩みであることを理解してもらいました。新しい仕事にチャレンジしたい思いや、父との幼少の頃の思い出などをさまざまに話した後で、Cさんはほんの少しだけ落ち着いた表情になりました。
大きな意思決定をするときには、まず頭をクルーダウンする必要があります。以下のポイントを押さえておきましょう。
(1)じっくりと話を聞いてもらい、考える余裕を作る
大きな意思決定をしようとする際、頭に血が上ってしまって、さまざまな可能性を冷静に見渡せなくなることがあります。冷静さを欠いた状態のときは、ただゆっくり話を聞いてもらう必要があるのです。自分の中のさまざまな思いを吐き出してみると、考える余裕が生まれます。よく眠れるようになり、十分な睡眠の後でふと新しい考えが浮かぶこともあります。
(2)悩むところはしっかり悩み、他のことはあまり悩まないようにする
大きな意思決定と比べればそれほど重要でない事柄については、意思決定のスピードを速くします。どう決めても人生にはそれほど大きく影響はないと割り切って、大切な意思決定に時間やエネルギーを確保しましょう。
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