第5回 リモート・デスクトップ・サービスがもたらすデスクトップ環境の仮想化とVDI 〜「ターミナル・サービス」という名前を捨てるほど新しい〜:Windows Server 2008 R2の真価(1/3 ページ)
ターミナル・サービス改めリモート・デスクトップ・サービスの新機能「仮想デスクトップ・インフラ(VDI)」を中心に強化点を解説する。
「Windows Server 2008 R2の真価」は、Windows Server 2008の後継OSである、Windows Server 2008 R2の注目機能について解説するコーナーです。
近年、多くのクライアントPCを保有する企業システムでは、クライアントPCの管理・運用コストの削減や、クライアントPCを介した情報漏えいの防止といった難題を抱えている。本連載の第5回目となる今回は、この問題に対するマイクロソフトの回答の1つといえる、Windows Server 2008 R2のリモート・デスクトップ・サービスについて解説する。この機能は、いままでターミナル・サービスと呼ばれていたものの後継である。なぜ認知された名前まで捨てたのか、それを技術者の観点から理解していただきたい。
リモート・デスクトップも仮想化技術の1つ
さて、「あたかも……しているように」という抽象化は、仮想化技術そのものであり、ITにおいてさまざまな場面で利用されている。マイクロソフトは、この考え方に基づき、よく知られているサーバの仮想化以外にも以下のような仮想化(抽象化)技術を提供している。
- プレゼンテーションの仮想化
- デスクトップの仮想化
- データ(プロファイル)の仮想化
- アプリケーションの仮想化
このうち、Windows Server 2008 R2では、プレゼンテーションの仮想化とデスクトップの仮想化が大幅に強化されている。
プレゼンテーションの仮想化とは、簡単にいえば画面(プレゼンテーション・レイヤ)の仮想化であり、あたかも目の前のマシンを触っているかのようにリモートのマシンを操作できる技術である。従来のターミナル・サービスやリモート・デスクトップ接続がこれに該当する。一方、デスクトップの仮想化は、1対1で結び付いていたPCとデスクトップ環境の関係を1対多に変える、もしくはサーバの仮想化技術上に大量のクライアントPC環境を仮想マシンとして構築したりするものである。それでは、これらの仮想化技術をWindows Server 2008 R2の機能と結び付けて解説していこう。
リモート・デスクトップ・サービスの強化ポイント
ここ数年、内部統制や情報漏えい対策などのキーワードに触発されて、データの格納と処理をサーバ・ルーム(データセンター)内で実現しようとする動きがある。次の図は、これをWindows Server 2008 R2のリモート・デスクトップ・サービスで実現する場合の構成の一例である。
Windows Server 2008 R2 のリモート・デスクトップ・サービスの利用例
サーバ・ルームにあるアプリケーション環境をリモートから操作することで、アプリケーションもデータも集中的に管理し、情報漏えいから守ることもできる。また、クライアント・マシンに高い性能や機能が必要なく、シンクライアントも利用できるというメリットもある。
この環境では、データの格納と処理を集約できるだけでなく、クライアント・マシンに高い性能や機能を必要としないため、シンクライアント・ソリューションとしても利用されている。また、Windows Server 2008 R2で採用されたリモート・デスクトップ用通信プロトコルの新バージョン「Remote Desktop Protocol(RDP) 7.0」では、パフォーマンスや使い勝手が大幅に強化され、ローカルのコンソールと比べてリモートであることを感じさせないような工夫がなされている。その主要なポイントは以下のとおりだ。
- パフォーマンス向上
- マルチメディア・リダイレクト(クライアント側でマルチメディアの処理を行うことで動画再生などを高速化)
- DirectXのリダイレクト(クライアント側でDirectXの処理を行うことで描画を高速化)
- Aero Glassのサポート
- 10台までのマルチ・ディスプレイ構成のサポート
例えば、リモート接続をした状態でAero Glass(ウィンドウの透過表示)を利用することも可能だ。
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