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仕事が面白く感じる心理状態〜フローな状態について心の健康を保つために(15)(1/2 ページ)

ITエンジニアの周りにはストレスがいっぱい。そんな環境から心身を守るためのヒントを、IT業界出身のカウンセラーが分かりやすく伝えます。

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 技術者にとって心が沸き立つときとはどんなときでしょう。高収入や地位を手に入れたとき? 高度な技術を習得したとき、それとも顧客の満足を得られたとき?

なんだか仕事が面白くない

 浮かない表情のMさんがやってきました。「体調が悪いわけでも、仕事がうまくいっていないわけでもない。でもなんだか仕事が面白くない」とため息をついています。

 Mさんは、プロジェクトがそこそこ順調にいっている状況のSEです。忙しいけれど、連日徹夜というわけではない。たまに同僚と飲みに行くし、家庭にも大きな問題はありません。では何が問題なのでしょう?

Mさん 「状況はいいんだけど、でも……生きている感じがしないというか。やっぱりわがままですよね?」

カウンセラー 「いままでの人生の中で、どんなときに『自分は生きている!』とか『生き生きしていたなあ』と思えたでしょうか?」

Mさん (しばらく考えて)「うーん、例えば高校時代の文化祭で、出しものを前日ぎりぎりまで仲間と準備していたときかなあ」

カウンセラー 「そのときどんな気持ちがしていたのでしょうか?」

Mさん 「1つのものに向かって、仲間と一緒にガーッと集中している状態にわくわくしましたね。だんだん出来上がっていくのを見ていると力がわいてきて、全然疲れなかったんですよね」

 ポイントは、「仲間と」「1つのこと」「集中して」「出来上がっていく過程」のようです。

 そこで、「例えば仕事でこういう感じを得たときはないでしょうか?」と質問したところ、Mさんは次のように話されました。

 「そうですね、数年前のかなり難しいプロジェクトで、でも完成すればかなり画期的なものになるという仕事にかかわったとき、同じような感じがありました。あのときは、問題も次から次へと出てきたし、大変でした。でも、なんだかみんなハイテンションになったせいか、困難を打ち破るようなアイデアが不思議と出てくるんですよね」

 当時のことを話しているうちに、Mさんの表情も明るくなってきました。きつかったけれど、強烈な印象を残したプロジェクトであったようです。

「フローな状態」とは

 Mさんのような経験をされた方もいらっしゃるかもしれませんね。このようなチームの状態を、かつてソニーでAIBOの開発を手掛けた土井利忠(ペンネーム:天外伺朗)さんは「たくさん経験した」と著書の中で書いています。こうした状態は、心理学的には「フロー」な状態として説明されている、と土井さんはいいます。

 「フロー」は、1960年代にシカゴ大学心理学科の教授だったハンガリー出身のM.チクセントミハイが『Beyond Boredom and Anxiety』(Jossey Bass、1975)※1という著書の中で提唱した理論です。

※1(今村浩明訳『楽しみの社会学』新思索社、2000年 )

 「人が喜びを感じるということを、ちゃんと内観的に調べていくと、仕事、遊びにかかわらず、何かに没頭している状態」※2があります。チクセントミハイはそんな状態を「フロー」と名付けました。

※2(天外伺朗『運命の法則―「好運の女神」と付き合うための15章』飛鳥新社、2004年。p.30)

 チクセントミハイは、人間の行動に対する動機付けについて、金銭や地位といった「外発的報酬」と、活動に没頭しているときに内部から込み上げてくる喜びや楽しさという「内発的報酬」に分けました。「仕事」と「遊び」という二分法よりも、「外発的報酬」か「内発的報酬」かの区分が重要であるとしています。

 つまり、仕事だから「つらい、苦しい、つまらない」とは限らず、遊びがいつも「楽しい、魅力的」とは限らないということなのです。活動に没頭している「フロー」の状態であれば、大きな満足感が得られます。

 フロー体験の構成要素として、チクセントミハイは8つの項目を挙げています。

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