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第1回 Hyper-V 2.0のライブ・マイグレーションの基礎知識Hyper-V 2.0実践ライブ・マイグレーション術(1/5 ページ)

Hyper-V 2.0の「ライブ・マイグレーション」の基礎から構築、運用までを解説。クイック・マイグレーションとの違いとは?

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[運用] Hyper-V 2.0実践ライブ・マイグレーション術
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「[運用] Hyper-V 2.0実践ライブ・マイグレーション術」のインデックス

連載目次

 「ライブ・マイグレーション」とは、アプリケーションをダウンさせずに仮想マシンを別のサーバに移動する技術のことである。VMwareが「VMotion」という名称で同社の製品に先行実装しているため、ご存じの読者も多いのではないだろうか。ライブ・マイグレーションを導入すると、サーバ仮想化の弱点を補うことができるうえ、仮想化しない場合より優れた可用性・業務継続性が得られる。このため、サーバ仮想化案件では要件として挙げられることが多い機能だ。

 マイクロソフトが提供する仮想化技術「Hyper-V」も、Windows Server 2008 R2に付属する「Hyper-V 2.0」でライブ・マイグレーション機能が新しく追加された。これを機に、Hyper-V 2.0で仮想化システムの構築を検討している読者も多いだろう。

 本連載では、Hyper-V 2.0で追加されたライブ・マイグレーションにポイントを絞り、動作の仕組みや設計・構築ノウハウなどを数回にわたって解説していく。なお、Hyper-V 2.0の新機能やHyper-Vの運用ノウハウについては、下記の記事を参照してほしい。


ライブ・マイグレーションとは
ライブ・マイグレーションとは、アプリケーションをダウンさせずに仮想マシンを別のサーバに移動する技術のことである。本連載ではHyper-V 2.0の目玉機能であるライブ・マイグレーションにフォーカスし、動作の仕組みや設計・構築ノウハウなどを解説していく。

ライブ・マイグレーションの導入効果

 初めに、ライブ・マイグレーションの導入効果について、例を挙げて説明しよう。ライブ・マイグレーションの導入で得られるメリットは大きく分けて次の2点だ。

■仮想化の弱点である、負荷の変動に対応する
 仮想化を導入する理由の1つに「昨今のハードウェアは高速過ぎて、アプリケーション1個では使い尽くせない」というものがある。つまり、ハードウェア・リソースに余裕があるため、複数のサーバを1台に集約してしまおうというものだ。この考えは非常に合理的であり、結果的にコスト削減にもつながるが、稼働開始後に思わぬトラブルに遭遇してしまうことがある。それは予測できない負荷への対応だ。

 例えば、集約した仮想マシンの中にWebシステムがあったとしよう。ある日、そのWebサイトで魅力的なキャンペーンが開始され、予想以上のアクセスが行われたとする。これによりCPU使用率が大きく上昇するのだが、ここで問題が発生する。この仮想マシンの突然の高負荷でホスト全体のCPU使用率が100%に達してしまうといったケースだ。当然ながらCPU使用率が100%に達してしまうと、それ以上の処理は行えない。つまり、起因となったWebシステムに影響が出るのはもちろん、集約したほかのシステムにも影響が生じてしまうのだ。これが複数のサーバを集約する仮想化特有の弱点である。

 しかし、ここでもしライブ・マイグレーション機能を利用できれば、この問題は解決できるかもしれない。負荷の上昇を検知できた段階で、一部の仮想マシンを余裕のあるほかのホストへ動的に移動してしまえばよいのだ。

 このように、負荷状況が大きく変化した場合でも、ライブ・マイグレーションがあればバランス調整ができるようになる。夜間バッチなど、定期的に負荷が掛かるような場合は、ライブ・マイグレーションの実行をタスク・スケジューラに組み込むとよいだろう。さらに、System Center Virtual Machine Manager(SCVMM)などの管理ソフトウェア製品を併用すれば、常に負荷を監視して、ライブ・マイグレーションの実行を提案したり、自動処理させたりすることも可能になる。


ライブ・マイグレーションによる負荷の変動への対応
予測できない負荷でCPUリソースなどが足りなくなった場合でも、ライブ・マイグレーションを利用すれば、仮想マシンを動的に再配置して負荷バランスを均等に調整することができる。タスク・スケジューラからタイマ実行させることも可能だ。

■ホストのメンテナンスを動的に実施し、計画停止を減らす
 仮想化を導入して面倒となるのが、ホストのメンテナンスだ。Hyper-Vは一種のOS(ホストOS)であるため、不具合対応や機能向上のために定期的にパッチがリリースされ、その適用時に再起動が必要となる。Hyper-Vの再起動となれば、その上で稼働している各仮想マシンもダウンせざるを得なくなるため、管理者はパッチがリリースされるたびに計画停止を決定し、対象ホストの仮想マシンを止めてHyper-Vを再起動しなければならない。もし、リリースされたパッチがセキュリティの脆弱(ぜいじゃく)性対策のものであれば「次の週末まで待って計画停止」といった猶予がないこともあるだろう。

 このような緊迫したケースでも、ライブ・マイグレーションは効果を発揮する。ホストのメンテナンスが必要になれば、その上で動いている仮想マシンをすべて別のホストに退避させてしまえばよいのだ。こうすることで、Hyper-Vの再起動を伴うハードウェアのメンテナンスを行っても業務に影響は及ぼさない。しかも、ライブ・マイグレーションは動的に実行できるため、夜間や週末を待たずにいつでもメンテナンスを実施できる。深夜残業や休日出勤が要らないという面も管理者にとっては喜ばしいはずだ。


ライブ・マイグレーションによる無停止保守の実現
Hyper-Vも一種のOSであるため、定期的にパッチがリリースされる。パッチの適用により、Hyper-Vの再起動が必要となることもあるが、仮想マシンをライブ・マイグレーションで別のホストに退避させることで業務の停止を防ぐことができる。

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