NATとPATの設定方法を学ぶ:ネットワークの基礎を学習する CCNA対策講座(31)(1/2 ページ)
本連載では、シスコシステムズ(以下シスコ)が提供するシスコ技術者認定(Cisco Career Certification)から、ネットワーク技術者を認定する資格、CCNA(Cisco Certified Network Associate)を解説します。2007年12月に改訂された新試験(640-802J)に対応しています。
今回は、NAT(Network Address Translation)とPAT(Port Address Translation)について解説します。NATとPATは、端末がインターネットに接続する際に使用するローカルアドレスとグローバルアドレスの相互変換の技術です。全世界的にグローバルアドレスが不足している問題に対応するために、NATやPATの技術が登場しました。NATやPATの概要と、設定方法を学習します。
ネットワークの基礎を学習する CCNA対策講座 各回のインデックス
- 第1回 新CCNA試験について知ろう
- 第2回 ネットワークのABC、OSI参照モデルとプロトコル
- 第3回 データはどうやって伝わるの?
- 第4回 LANの基礎を丸かじり
- 第5回 データ同士の通せんぼ――コリジョンてなぁに?
- 第6回 TCP/IPを制するものはネットワークを制す
- 第7回 TCPで、確実&効率よくデータを送受信しよう
- 第8回 サブネットマスクの計算をマスターする
- 第9回 どこまでがネットワーク部? クラスフルとクラスレス
- 第10回 シスコ ソフトウェアの基礎を学習する
- 第11回 Cisco IOSモードの設定
- 第12回 Cisco IOSのモードの設定情報と識別情報
- 第13回 インターフェイスの設定とルータの初期化
- 第14回 ネイバーの検出とCDPによるデバイス管理
- 第15回 Telnetを使用したリモートデバイスの情報収集
- 第16回 SDMによるルータの設定と管理
- 第17回 MACアドレスとフレームで、スイッチの基本動作を学ぶ
- 第18回 スパニングツリープロトコル、動作の仕組み
- 第19回 スイッチにVLANを設定する
- 第20回 VLAN操作を容易にするVTPの機能
- 第21回 ポートセキュリティの設定コマンドと確認
- 第22回 ルータの経路学習とスタティックルートの設定
- 第23回 RIPによるルーティングテーブルの作成
- 第24回 リンクステートルーティング(OSPF)の設定と確認
- 第25回 高速なコンバージェンスを実現するEIGRPを学習する
- 第26回 可変長サブネットマスク(VLSM)と経路集約
- 第27回 標準アクセスリストについて学習する
- 第28回 拡張アクセスリストについて学習する
- 第29回 無線LANの基礎について学習する
- 第30回 無線LANセキュリティの必要性と対策
- 第31回 NATとPATの設定方法を学ぶ
- 第32回 IPv4の枯渇に備えよ――IPv6の特徴と必要性
- 第33回 VPNの基礎を学習する
- 第34回 WANカプセル化プロトコルについて学習する
- 第35回 フレームリレーの基本を学習する
NATとPATの概要
NATとPATは、どちらもローカルアドレスとグローバルアドレスを変換する技術です。ローカルアドレスとグローバルアドレスを変換する技術は、大きく3つに分類されます。
- スタティックNAT
- ダイナミックNAT
- PAT
スタティックNATは、1つのローカルアドレスを、1つのグローバルアドレスに変換します。変換する際、常に固定のグローバルアドレスに変換します。例えば、ローカルアドレス 192.168.1.1 は、常にグローバルアドレス 202.221.204.65 に変換されます。
ダイナミックNATは、複数のローカルアドレスを、複数のグローバルアドレスのいずれかに変換します。グローバルアドレスは、その時点で未使用のアドレスが動的に使用されます。そのため、スタティックNATのように常に固定のアドレスに対応付けるわけではありません。
PATは、複数のローカルアドレスを、1つのグローバルアドレスに変換します。トランスポート層のポート番号の情報を利用して、1つのグローバルアドレスを区別します。
図1は、NATの中でも最も基本的なスタティックNATの基本動作です。図では、企業Aのローカルアドレス 172.20.1.1 を割り当てられたホストAが、インターネット上のサーバ 202.221.204.65 へアクセスする際のスタティックNATのアドレス変換の仕組みを表しています。
ルータには、「ローカルアドレス 172.20.1.1 を、グローバルアドレス 202.33.245.195 に変換する」という設定をあらかじめ行います。ホストAから送信されたパケットの送信元IPアドレスは、ホストAのIPアドレス 172.20.1.1 です。アドレス変換をしたルータから送信される際のパケットの送信元IPアドレスは 202.33.245.195 になっています。NATを設定したルータはNATテーブルを保持しています。これにより、どのローカルアドレスを、どのグローバルアドレスに変換したかが分かります。
シスコが定義しているNAT用語は4種類あります。
- 内部ローカルアドレス:
自組織の内部ネットワーク上のホストに割り当てているローカルアドレス自組織の内部ネットワーク上のホストに割り当てているローカルアドレス - 内部グローバルアドレス:
自組織がサービスプロバイダにより割り当てられたグローバルアドレス自組織がサービスプロバイダにより割り当てられたグローバルアドレス - 外部ローカルアドレス:
他組織が内部ネットワーク上のホストに割り当てているローカルアドレス他組織が内部ネットワーク上のホストに割り当てているローカルアドレス - 外部グローバルアドレス:
他組織がサービスプロバイダにより割り当てられたグローバルアドレス他組織がサービスプロバイダにより割り当てられたグローバルアドレス
これらは、自組織を基準にした用語です。図1の場合、自組織は「企業A 東京拠点」、他組織は「企業A 東京拠点」以外の組織を指します。
確認問題1
問題
スタティックNATの特徴として正しいものはどれですか。1つ選択してください。
a.1つのローカルアドレスを、1つの固定ではないグローバルアドレスに変換する
b.複数のローカルアドレスを、複数のグローバルアドレスのいずれかに変換する
c.1つのローカルアドレスを、1つの固定のグローバルアドレスに変換する
d.複数のローカルアドレスを、1つのグローバルアドレスに変換する
正解
c
解説
正解は選択肢cです。スタティックNATは、1つのローカルアドレスを、1つのグローバルアドレスに変換します。この際、常に固定のグローバルアドレスに変換されます。
PATの動作
PATは、複数のローカルアドレスを1つのグローバルアドレスに変換します。トランスポート層のポート番号の情報を利用して、1つのグローバルアドレスを区別します。
図2は、ホストAとホストBが同時にインターネット上のWebサーバ 202.221.204.65 にアクセスしたときのPATの仕組みを表しています。1つのグローバルアドレスを区別するのに、送信元のポート番号を利用しています。NATテーブルには、ポート番号の情報が登録されます。
確認問題2
問題
PATにおいて、1つのグローバルアドレスを区別するために使用する情報はどれですか。1つ選択してください。
a.TTL
b.プロトコル番号
c.ポート番号
d.ToS
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