検索
連載

簿記はエンジニアの仕事で本当に使える? 会計資格・本音トーク!お茶でも飲みながら会計入門(44・番外編)(2/3 ページ)

Share
Tweet
LINE
Hatena

簿記2級と簿記1級のレベルは思った以上に違う

吉田 簿記2級と1級って、全然レベルが違うんですよね。

西本 そうそう! 3級がレベル1、2級がレベル2だとすれば、1級になると一気にレベル8ぐらいになる。「2級受かったから次は1級」と思っていくと、初期装備なのに中ボスに挑むぐらいのレベル差があります。

吉田 「えっなんで?」というぐらい、急に難易度が上がりますよね。漢字検定みたいに準1級を設けた方がいいんじゃないかと思うぐらい。

――難易度、というのは試験範囲が広くなるということですか? それとも、もっと微(び)に入り細(さい)に入るような質問が増えるということでしょうか。

西本 質問が難しくなるというより、とにかく範囲が広いんですよ。中でも1級の新しいテーマであるリース会計やデリバティブ取引、連結会計、税効果会計、企業意思決定のための管理会計などは、初めはとっつきにくくてかなり苦労しました。2級はテキスト1〜2冊で済んでいたのに、1級になるといきなり10冊ぐらいになりますね。

吉田 それでも、簿記1級の範囲は公認会計士に比べると、まだ範囲が狭いんですよ。簿記1級では税務の話はほとんど出てきませんが、公認会計士試験では税務も勉強しなくてはならない。公認会計士は、簿記の3倍ぐらいの分量があります。とはいえ、日本の企業の会計は、税務の仕組みにかなり合わせている部分があるので、本当に会社が動く仕組みを知りたいなら、税務の知識も必要になりますね。

――これまでのお話をまとめると、簿記3級はほとんど使えない、簿記2級は部分的な知識を得られて現場のオペレータと話が通じるレベル、簿記1級になると経営層の話している内容が理解できるレベルの知識が得られると。こんな感じでしょうか?

吉田 そうですね。個人的には、簿記にプラスして税務の知識、中でも会計システムに直結する法人税や消費税の仕組みについて、エンジニアが知っておくといいと思います。

西本 簿記1級を勉強してからは、顧客企業に向かう前に会社の決算書を見るようになりました。決算書は、会社情報としてはかなり優秀で、これを見れば会社の状況は大体分かってしまうんですよね。「まずは客先に行ってみてヒアリング」というのではなく、「事前情報を仕入れてから客先に向かえる」という点では、かなりアドバンテージを得られたと思います。なので、顧客折衝の機会が多いエンジニアに、簿記1級はかなりお勧めです。

勉強する時間をどう捻出するか

――読者調査の中で、資格を取得する障害トップ2は「お金」「時間」でした。お2人にとって資格取得の障害は何でしたか?

資格を取得するうえでの障害(複数回答)
資格を取得するうえでの障害(複数回答)

吉田・西本 時間です!

――息がぴったりのご回答、ありがとうございます。簿記1級は600時間、公認会計士は3000時間という勉強時間が必要だといわれています。1週間、どんなスケジュールで勉強していましたか?

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

吉田 公認会計士を志した当時は、情報システム部門に所属していました。ネットワークエンジニアだったころは毎日22時ごろまで働いていたのですが、情報システム部門に移ってからは少し時間ができたんですよ。21時ごろには家に帰ることができたので、そこから2〜3時間かけて勉強しました。土日はひたすら予備校通いです。9時から21時までかけて、一気に3〜5コマ講義を取りました。わたしのようなスケジュールで受講する人間はまれなので、朝はお茶の水、昼は横浜、夜は池袋……といったように、1日であちこちの校舎を回っていました。あまりに切羽つまっていたので、講義中に牛丼を食べたこともあったぐらいです。

西本 ……それ、怒られなかったんですか?

吉田 めちゃくちゃ怒られました。でも、当時は本当にごはんを食べる余裕もなかったんです。本気で勉強すれば、会社と両立して合格できるかなと思ったんですが、途中で「やっぱり無理だ」ということに気が付きまして。

――それで、受験に専念するために会社を辞めたのですか。

吉田 そうですね。勉強をし始めた2005年当時は、会社を辞めるつもりはなかったんですけれど、それでは「2年かけて合格する」という目標をクリアできないと思ったんです。計算してみると、会社を辞めて受験に専念すれば、どうにか合格できる見込みでした。なので、2007年1月に会社を辞めて、7月の試験日まではひたすら勉強していましたね。あのとき会社を辞めていなかったら、たぶん2007年には合格できなかったのではないでしょうか。

西本 会社に行きながら、公認会計士試験に合格する人って多いんですか。

吉田 少数派ですけれど、いるにはいますね。わたしのように、いったん会社を辞めて専業受験生になる人の方がメジャーじゃないでしょうか。

西本 会社を辞めるのはかなり大きな決断だと思うんですよ。資金のこととか、つい心配してしまう。

吉田 そこら辺は、あまり心配していませんでしたね。貯金を計算したら、働かなくても2年は食べられる貯蓄があったんです。なので、「2年たっても合格できなかったらあきらめる」という制限は設けていました。まあ、無事に1年で合格できたので何よりでした。

――西本さんは、どのようなスケジュールを立てて勉強していますか。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

西本 わたしは、仕事が22時ごろまでかかるため、平日は実質ほとんど時間を取れません。なので、土日にがっつり勉強するスケジュールを最初に立てて、勉強していました。簿記1級を受験するまでの半年間は、友人からの飲み会の誘いなどはすべて断り、土日にひたすら自習していました。

吉田 最初にしっかりスケジュールを立てるタイプなんですか?

西本 そうですね。最初にやるべき項目を全部洗い出して、いつまでにこのページまでは終わらせる、という目標を立てて全部スケジューリングしました。「決めたところまでは何が何でも終わらせる」という心づもりで勉強していましたね。ここら辺のやり方は、自分でもエンジニアっぽいと思います。

吉田 確かに、プロジェクトマネジメントっぽいですね。わたしはそこまで細かいスケジュールは立てませんでした。

――資格取得について、資金はどれくらいかかりましたか?

吉田 わたしは2年で60万円ぐらいです。公認会計士と簿記2級、簿記1級の勉強を全部一緒に受講できる講座に、一括で支払いました。

西本 わたしは、ほぼテキスト代と受験料だけです。テキストを10冊ほど購入したので、全部で3万〜4万円ぐらいでしょうか。予備校などには通っていません。

吉田 西本さんが、完全に独学で簿記1級を受験したことはすごいと思います。

西本 確かに、「独学で簿記1級は無理」という話は聞いていましたが、わたし自身はあまり無理だとは感じなかったですね。とはいえ、難易度と範囲の広さは想像以上でしたが。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る