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簿記はエンジニアの仕事で本当に使える? 会計資格・本音トーク!お茶でも飲みながら会計入門(44・番外編)(1/3 ページ)

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お酒を酌み交わしながら、会計にまつわる裏話や本音を語る番外編「お酒でも飲みながら会計入門」。今回のテーマは「会計資格は、エンジニアの仕事に役立つか」。公認会計士や簿記1級など、難易度の高い会計資格に挑戦したエンジニア(元も含む)に、試験対策のコツや資格の有用性などについて、本音を語りまくってもらった。


 エンジニアが取得を目指すビジネス系資格として、「会計」関連資格の人気は高い。@IT自分戦略研究所が2010年10月に行った読者調査で「今後取得を目指す」ビジネス系資格について聞いたところ、「TOEIC(600点以上)」に引き続き、「簿記検定(2級以上)」が第2位につけた(参考:「上位資格を狙う派2割、IT以外の資格も取りたい派4割」)。「公認会計士」も、「1年以内に取りたい資格」の第7位にランクインしている(2009年11月調査)。

 ところで、簿記2級以上などの資格や会計の知識は、エンジニアの仕事にどれぐらい役立つのか? 「お茶会計」筆者の吉田延史氏と簿記1級に挑戦する現役エンジニアに、お酒の力を借りて本音を語ってもらった。

●登場人物

:吉田氏 ご存じ、「お茶会計」の筆者。ネットワークエンジニアとして働き、2005年に公認会計士の資格取得を志す。2007年に退職して同年に公認会計士試験に合格。取得した資格は簿記2級と1級、公認会計士。

:西本氏(仮名) 会計知識の習得を目指す9年目のSE。2010年2月に簿記2級に合格。2010年11月に1級を受験したばかり。

まずは自己紹介から

――現在のお仕事について教えてください。

吉田 どうも、「お茶会計」を執筆している吉田です。2002年にオービックに入社し、3年ほどネットワークエンジニアとして働いていました。その後、社内の情報システム部門に移り、2005年に公認会計士の勉強を始めました。会社を辞めて受験一本に絞ったのは、2007年です。無事、同年に合格して、いまは仰星監査法人で働いています(参考:「ITエンジニアになぜ会計は必要なのか」)。

編注:公認会計士として登録するには、公認会計士試験のほかに「業務補助」(2年以上)が課せられる。試験合格後は、実務補習(約3年)と修了考査をクリアする必要がある。吉田氏は、来年に修了考査を受験する。

西本 西本です。現在、9年目のエンジニアです。4〜5年ほどプログラマとして構築を行い、それからはSEとして働いています。主な仕事内容は、顧客との打ち合わせ、要件定義、設計書を書くことなどです。部下を持っているので、チームマネジメントも行っています。

吉田 いわゆるプレイングマネージャなんですね。いま、構築の仕事はしているんですか。

西本 構築の仕事もしています。週の半分以上は打ち合わせのために外出し、残りの半分は社内で設計書作りや書類仕事を行っています。

エンジニアの仕事で、会計知識が必要だと思った瞬間

――吉田さんは公認会計士を志し、西本さんはいま簿記1級を受験されているそうですね。エンジニアをやっていて、会計の知識が必要だと思った瞬間はありますか?

西本 あります! というか、“切っても切り離せない”といった方が正確ですね。わたしが主に担当しているのは、債権管理システムです。勘定系システムは、最終的に会計システムと連携します。システム設計をするときには、いつどのタイミングでどんな情報を渡せばいいのか、売り上げや売り掛けの管理はどうするか、貸倒引当金はどのタイミングで計上するのかといったことを考慮しないといけないんですよ。

吉田 お客さんと話をしているときには、普通に会計用語が出てくるでしょうね。

西本 そうなんです。一番「会計のことを知っていないとやばい!」と思ったのは、やはりお客さんとの打ち合わせのときです。彼らは、当たり前のように会計用語を使ってきますから。

吉田 確かに、勘定系システムは会計にかなり近い位置にありますから、そう思う瞬間はありますね。とはいえ、システムも千差万別で、ユーザーの職種によって必要な会計知識も全然違う。例えば建設業ならプロジェクトごとの原価計算、製造業だと標準原価と呼ばれる目標値の設定、金融業だと債権評価などですね。もちろん、その会社のどのシステム構築に携わるかにもよります。

西本 吉田さんは、いつ「会計知識が必要だ」と思ったんですか。

吉田 実はエンジニア時代、自分の仕事に会計が直接絡むことはあまりなかったんですよ。業務アプリケーションは比較的、顧客の業務に近い位置にいますが、ネットワークエンジニアとなるとそこから一歩遠のく。インフラエンジニアになると、さらに遠く感じるんじゃないでしょうか。わたしが会計士の勉強をしようと思ったきっかけは、まったく別のところにあります。

勉強するエンジンは「危機感」

――「会計の知識が必要だ」と思ってから、実際に資格の勉強を始めるまでに至った経緯を教えてください。

西本 一言でいえば、「危機感」です。特に、SEとして顧客企業の経理担当者や経営層と話をするとき、「会計用語が分かりません」ではどうしようもない。プロである以上、相手と対等に会話ができないと……という思いがありましたね。

――会計知識は業務に直結するものだからという危機感から勉強を始めたわけですね。そこで、あえて簿記を受けたのは何か理由があるんですか?

西本 入社した当時、研修として簿記3級を取得したんです。ですから、会計の知識を体系的に得られるのは簿記だろうと思いました。最初は2級を目指し、2級に合格してからは1級取得に向けて勉強しました。

吉田 逆に、わたしは業務に使おうという気はまったくなかったんですよね。わたしが公認会計士を目指したのは、ゲームのやりすぎがきっかけです。

西本 ゲーム?!

吉田 そう、わたし、ゲームが猛烈に好きなんですよ(編注:吉田さんはカプコンの「ヴァンパイア」で、1998年に全国1位になったことがある)。一時期、本当にインターネットゲームばかりしていて、堕落した生活を送っていたんです。そうしたら、嫁に怒られまして。時間を使うならもっと有効に使えということで、資格の勉強をしようと思い立ちました。どうせ挑戦するなら、実用的かつ難易度が高いものにしようと思ったんですよね。資格のパンフレットの中で選んだら、それがたまたま「公認会計士」だった。

西本 いや、それ最初のハードル設定、高すぎない?

吉田 いま思うとそのとおりなんですけれど、当時はあまり考えていませんでしたね。まあ、いけるかなと。

――吉田さん、ゲームでもHardレベルやLunaticレベルにがんがん挑戦していきそうなタイプですね。ということは、「資格取得」が最初の目的だったということですか。

吉田 そうですね。まじめな話をすると、当時はエンジニアの仕事をし続けることに、不安があったんですよ。だから、もっと別の資格を取り、その道のプロとして自分の市場価値を高めようと思ったんです。

西本 それは分かる気がします。やっぱり、エンジニアとして技術だけを追い続けると、どうしても将来が不安になります。エンジニアとして仕事をしている以上、自分は会社の庇護(ひご)下にいるんですよね。じゃあ、会社から離れたら自分の市場価値はどうなるのだろうと考えると、一気に不安になります。ただ「SE」として仕事を続けていくだけではこの先、生き残れないと思うんですよ。

ぶっちゃけた話、簿記は仕事に役立つか

――今秋、@IT自分戦略研究所で「資格」に関する意識調査を行いました。その中で、ビジネススキルとして簿記はTOEICに次いで2番目の人気を誇っています。

資格取得状況:ビジネス系資格・認定 (複数回答)
資格取得状況:ビジネス系資格・認定 (複数回答)

――西本さんは現在、簿記2級を取得して1級の試験を終えられたばかり。吉田さんも、公認会計士試験中に簿記2級と1級に合格しています。ぶっちゃけた話、簿記はエンジニアの仕事に役立ちますか? 3級から順番にお願いします。

西本 3級は、実務ではあまり使えないレベルですね。まったく会計のことを知らなかった新人のわたしが合格できましたから。

吉田 そうですね、2級になってようやく、断片的な会計知識が分かるようになると思います。業務アプリケーションを使う現場のオペレータと話せるぐらいのイメージです。

――すると、簿記2級は、SEが打ち合わせする経営層や経理担当者と話せるレベルではないと。

西本 そうですね。1級の試験結果はまだ発表されていないですが、1級の勉強をしたことでようやく経営層が話す内容がきちんと分かるようになってきました。やはり、顧客と話して要件定義するSEなら、簿記1級ぐらいじゃないと「現場で使える」という実感はわきにくいのではないでしょうか。

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