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最新Intelプロセッサ「第2世代Core iシリーズ」は何が変わった?基礎解説

Intelの最新プロセッサ「第2世代Coreプロセッサ・ファミリ(Sandy Bridge)」では何が変わったのか。気になる性能は? 最新プロセッサを解説する。

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 Intelは、同社の主力プロセッサ・シリーズ「Coreプロセッサ・ファミリ」をフル・モデルチェンジし、「第2世代Coreプロセッサ・ファミリ(開発コード名:Sandy Bridge)」として販売を開始した(インテルのニュースリリース「インテル、ノートブック PC およびデスクトップ PC 向けに画期的なビジュアル性能を提供する第2世代インテル Coreプロセッサー・ファミリーを発表)。


第2世代Coreプロセッサ・ファミリのダイ写真


第2世代Core i5のパッケージ写真

 プロセッサ名は、これまでのCoreプロセッサ・ファミリと同様、Core i3/i5/i7だが、マイクロアーキテクチャ(設計)はまったく新しくなっており、デスクトップ向けのプロセッサ・ソケットも第1世代のLGA1366/LGA1156から第2世代ではLGA1155に変更になっており互換性がない(第1世代のCoreプロセッサ・ファミリについては、「用語解説:Core i5/i7」参照)。対応するチップセットも変更になっており、これまでのIntel 5シリーズ(デスクトップ向け:X58/H57/H55/P55/Q57 Expressチップセット、モバイル向け:QM57/QS57/HM55/HM57 Expressチップセット)から、Intel 6シリーズ(デスクトップ向け:P67/H67 Expressチップセット、モバイル向け:HM67 Expressチップセット)に変更される。後述のとおり機能面でも、さまざまな強化が行われている。

Core i7 Core i5 Core i3
インテル ターボ・ブースト・テクノロジー
インテル ハイパースレッディング・テクノロジー
最大8wayのマルチタスク処理 4wayマルチタスク処理
最大8Mbytesキャッシュ 3Mbytesキャッシュ
インテルHDグラフィックス 2000/3000
インテル クイック・シンク・ビデオ
インテル InTru 3D
インテル ワイヤレス・ディスプレイ(モバイルのみ)
インテル クリアー・ビデオHDテクノロジー
インテル AVX命令
第2世代Core i7/i5/i3の主な機能の違い
インテル ハイパースレッディング・テクノロジーは、デスクトップ向けCore i5でサポートしないモデルあり。

 今回発表となったモデルは下表のとおりである。出荷は、クアッドコア版は2011年1月9日から、デュアルコア版は2011年2月からの予定となっている。

TDP キャッシュ容量 動作周波数(GHz) ターボ動作時の動作周波数(GHz) コア数/スレッド数 グラフィックス・コア グラフィックス・コア動作周波数(MHz) 価格
モバイル向け
Core i7-2920XM 55W 8Mbytes 2.50 3.50 4/8 HD Graphics 3000 650-1300 9万3250円
Core i7-2820QM 45W 8Mbytes 2.30 3.40 4/8 HD Graphics 3000 650-1300 4万8330円
Core i7-2720QM 45W 6Mbytes 2.20 3.30 4/8 HD Graphics 3000 650-1300 3万2160円
Core i7-2657M 17W 4Mbytes 1.60 2.70 2/4 HD Graphics 3000 350-1000 2万6970円
Core i7-2649M 25W 4Mbytes 2.30 3.20 2/4 HD Graphics 3000 500-1100 2万9440円
Core i7-2629M 25W 4Mbytes 2.10 3.00 2/4 HD Graphics 3000 500-1100 2万6460円
Core i7-2620M 35W 4Mbytes 2.70 3.40 2/4 HD Graphics 3000 650-1300 2万9440円
Core i7-2617M 17W 4Mbytes 1.50 2.60 2/4 HD Graphics 3000 350-950 2万4590円
Core i5-2540M 35W 3Mbytes 2.60 3.30 2/4 HD Graphics 3000 650-1300 2万2630円
Core i5-2537M 17W 3Mbytes 1.40 2.30 2/4 HD Graphics 3000 350-900 2万1270円
Core i5-2520M 35W 3Mbytes 2.50 3.20 2/4 HD Graphics 3000 650-1300 1万9140円
デスクトップ向け
Core i7-2600K 95W 8Mbytes 3.40 3.80 4/8 HD Graphics 3000 850-1350 2万6970円
Core i7-2600S 65W 8Mbytes 2.80 3.80 4/8 HD Graphics 2000 850-1350 2万6040円
Core i7-2600 95W 8Mbytes 3.40 3.80 4/8 HD Graphics 2000 850-1350 2万5010円
Core i5-2500K 95W 6Mbytes 3.30 3.70 4/4 HD Graphics 3000 850-1100 1万8380円
Core i5-2500S 65W 6Mbytes 2.70 3.70 4/4 HD Graphics 2000 850-1100 1万8380円
Core i5-2500T 45W 6Mbytes 2.30 3.30 4/4 HD Graphics 2000 650-1250 1万8380円
Core i5-2500 95W 6Mbytes 3.30 3.70 4/4 HD Graphics 2000 850-1100 1万7440円
Core i5-2400S 65W 6Mbytes 2.50 3.30 4/4 HD Graphics 2000 850-1100 1万6590円
Core i5-2400 95W 6Mbytes 3.10 3.40 4/4 HD Graphics 2000 850-1100 1万5660円
Core i5-2390T 35W 3Mbytes 2.70 3.50 2/4 HD Graphics 2000 650-1100 1万6590円
Core i5-2300 95W 6Mbytes 2.80 3.10 4/4 HD Graphics 2000 850-1100 1万5060円
Core i3-2120 65W 3Mbytes 3.30 2/4 HD Graphics 2000 850-1100 1万1740円
Core i3-2100T 35W 3Mbytes 2.50 2/4 HD Graphics 2000 650-1100 1万810円
Core i3-2100 65W 3Mbytes 3.10 2/4 HD Graphics 2000 850-1100 9950円
1月6日に発表となった第2世代Coreプロセッサ・ファミリ(価格は1000個時のOEM価格)

 上表を見ても分かるように、プロセッサ・ナンバーがこれまでの3けたから、千の位が2で始まる4けたとなっており、第1世代と第2世代はこの番号で判別できる。さらにモデルによっては、数字の最後に「M」や「K」「S」などのアルファベットが付く。

 「K」と付くモデルは、オーバークロック動作に対応した製品で、対応マザーボードを利用することで、動作周波数を規定値よりも引き上げて利用することも可能になっている。また内蔵グラフィックス機能も強化され、内部演算ユニットが12個の「Intel HD Graphics 3000」を搭載している(モバイル向けは、すべてのモデルでIntel HD Graphics 3000を搭載する)。「S」はTDPが65W、「T」はさらに低い35〜45Wのモデルである。

 モバイル向けは、「XM」がエクストリーム・エディション(クアッドコアの最速のモデル)、「QM」がクアッドコア、「M」が通常のモデルとなっている。

IntelのTick-Tockモデルとは

 Intelは、CoreシリーズからTick-Tock(チック・タック)モデルと呼ばれる2段階の開発サイクルを採用しており、第2世代Coreプロセッサ・ファミリはTick-TockモデルのTockに当たるものだ。

 Tick(チック)で製造プロセスを微細化し、翌年のTock(タック)でマイクロアーキテクチャの刷新、翌々年には再びTickで製造プロセスを微細化する、といった具合だ。つまり製造プロセスは2年ごと、その間の年にマイクロアーキテクチャが刷新されることになる。製造プロセスについては、これまでもほぼ2年ごとに微細化を行ってきたが、マイクロアーキテクチャについては不定期に刷新されてきた。これを2年ごとに固定化することで、毎年、定期的に新製品が投入できる体制を整えられることになる。Intelとしては、製造プロセスとマイクロアーテキチャが同時に更新されるリスクが回避できるわけだ。


Intelのチック・タック・モデル
製造プロセスの微細化とマイクロアーキテクチャの刷新を順番に繰り返すことで、毎年新しいプロセッサがリリースできるようになっている。

 製造プロセスの微細化は、コピー機でA3判をA4判に縮小コピーするように、トランジスタの大きさや配線の幅を縮小(約0.7倍)することで、同じデザインのプロセッサならば面積を半分にできる。これにより、1枚のウエハから製造できるプロセッサの個数を増やすことができ、製造コストを大幅に引き下げることが可能になる。またトランジスタの大きさが小さくなることから、消費電力の低減や動作周波数の向上が見込める(Pentium 4世代の90nmプロセスからは、それ以前に比べて消費電力の低減と動作周波数の向上の幅が狭くなっている)。またマイクロアーキテクチャの刷新では、実行ユニットやキャッシュ・システムを改良したり、新しい機能を追加したりすることで、デザイン変更による性能向上が実現する。これにより、製造プロセスの微細化で性能が向上し、翌年はマイクロアーキテクチャの刷新で性能が向上する、というサイクルが繰り返されることになる。

 第2世代Coreプロセッサ・ファミリは、前述のとおり、Tockに当たり、製造プロセスは前モデルの開発コード名「Westmere(ウエストメア)」と同じ32nmプロセスを採用している。来年の2012年では、今回発表された第2世代Coreプロセッサ・ファミリ(Sandy Bridge)のマイクロアーキテクチャを、製造プロセス22nmで製造した「Ivy Bridge(アイビー・ブリッジ)」が提供される予定だ。

第2世代Coreプロセッサ・ファミリの改良点

 では、第2世代Coreプロセッサ・ファミリでは、第1世代(Nehalem/Westmere)に対してどのような点が強化されたのだろうか。

 第2世代のCoreプロセッサ・ファミリの最大の特徴は、グラフィックス機能が完全にプロセッサに統合されたことだ。第1世代でも、プロセッサにグラフィックス機能が統合されていたものの、プロセッサ部分とは別に製造されたチップをパッケージの中で接続していただけであった。グラフィックス機能が完全に統合されたことで、プロセッサ・コアとグラフィックス・コアの両方を合わせた電力制御/動作周波数が可能になり、グラフィックス処理を多用するアプリケーションに対してはプロセッサ・コアとグラフィックス・コアの消費電力(発熱)/動作周波数を調整し、グラフィックス性能を引き上げるといったことが可能になっている。

 またプロセッサ・コアとグラフィックス・コアが統合されたことで、ラスト・レベル・キャッシュ(LLC:3次キャッシュ)が共有可能になるなど、グラフィックス性能の向上に大きく寄与している。


第2世代Coreプロセッサ・ファミリのブロック図
このようにグラフィックス・コアがプロセッサ・コアに統合され、ラスト・レベル・キャッシュ(LLC)も共有化されている。なお図中のPECI Interfaceは、温度管理を行うためのインターフェイスである。

 グラフィックス・コア自体も強化されており、HDMI 1.4規格に対応したBlu-rayステレオ3Dや、ビデオのエンコーディング、プロセッシング機能をハードウェアでサポートするなど、主にビデオ処理に対する強化が行われている。だがグラフィックス・コアの性能は、第1世代からは強化されたというものの、AMD(旧ATI Technologies)やNVIDIAのグラフィックス・チップと比較すると、エントリ・クラス相当(ビジネス用途であれば十分な性能だが)なので過度な期待は持たない方がよいだろう。

 このほか、第2世代Coreプロセッサ・ファミリでは、SIMD演算の幅を従来の128bitから256bitに拡張した新命令セット「Intel AVX」を追加しており、SIMDによる浮動小数点演算の性能向上を実現している。

 Intelによれば、このような機能強化/改良により第2世代Coreプロセッサ・ファミリは、第1世代に対して、コンテンツ制作などで20%以上、ゲームや3Dグラフィックス処理などでは60%からアプリケーションによっては2倍以上の性能向上が実現するとしている。

 さて気になる価格だが、OEM価格は上表のとおりで、新製品ながら第1世代のCoreプロセッサ・ファミリから大きく値上がりはしていないようだ。実売価格についても、販売開始となっているモデルが少ないことから判断が難しいところであるが、同じような動作周波数のモデルであれば、第1世代と同等の価格設定になっている。同等の動作周波数であれば、性能的には第2世代の方が高いので、第1世代に比べ、第2世代のコストパフォーマンスは高いということになる。

 2月には、売れ筋のデュアルコアのCore i5やi3の販売も開始される。そのころには、各ベンダから第2世代のCoreプロセッサ・ファミリを搭載したコンピュータが販売されることになるので、いまコンピュータの購入を検討しているのならば、2月の新製品発表まで待って比較したうえで購入するのがよいだろう。なお新しいプロセッサを利用するためには新しいマザーボードが必要となっており、従来のマザーボードでプロセッサだけを差し替えて利用することはできない。

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