ラブレターは読まれてなんぼ――“読ませる”エンジニアの職務経歴書を書く:きのこる先生のエンジニア転職指南(2)(1/2 ページ)
元プログラマ、現Web系企業の人事担当者による、エンジニア転職指南。「応募書類の書き方」や「自己PRの仕方」について、エンジニアの視点を持ちながらアドバイス。エンジニアの幸せな転職のために、菌類が奮闘する。
こんにちは。「きのこる先生」です。史上初(たぶん)の、菌類によるエンジニア向け転職アドバイス、今回のテーマは皆が気になる「人事担当者が読みたくなる職務経歴書の書き方」です。
その前にちょっと寄り道。中途採用のフローについて
その前にちょっと寄り道を。まず、企業側から見た「中途採用」のフローを説明します。ここでは、「転職サービスを介した応募」の場合を例に挙げます。
エンジニアを中途採用しようとする企業は、転職サービスに求人を出します。「募集業務を代わりにやってよ」と委託するわけです。転職サービスは、「企業に営業活動を行って集めた求人」と「転職を希望し、登録しているエンジニア」のマッチングを行います。そして条件がマッチするエンジニアに対して、該当企業への応募を勧めます。
一方、エンジニアは転職サービスにスキルを登録し、条件に合う求人の紹介を受けます。勧められた企業が気に入れば応募します。転職サービスは、応募が決まったエンジニアの応募書類を企業に送り、企業は「書類審査」を行います。書類審査に合格した場合、エンジニアは次のステップである面接に進みます。企業とエンジニア双方の条件がマッチすれば採用、転職です(おめでとう!)。
転職サービスは、推薦したエンジニアを企業が採用した時に、企業から報酬を受け取ります。金額は「採用されたエンジニアの年収相当額の○%」(通常30%程度)と決められていることが多いようです。この点は今後の連載で何度か出てくるので、記憶の片隅にとどめておいてください。
中途採用で必要な書類は3種類
さて、転職サービスは推薦するエンジニアの「応募書類」=3点の書類を、企業側に送付します。
- 推薦書
- 履歴書
- 職務経歴書(スキルシート)
1.推薦書
前述したように、転職サービスは企業にエンジニアを「推薦」します。エンジニアを企業に売り込むため、応募書類にエージェントが書いた「推薦文」が添えられることが多いです。
とはいっても、推薦するためのテキストなので、内容は美辞麗句がほとんど。本人が見たら「自分ってこんな立派なエンジニアだったっけ?」と驚くかもしれません。「コミュニケーション力のある方」やら「技術を吸収する意欲が高い方」やら……採用担当的には参考にならない情報がほとんどです。唯一の例外が、外国人(非日本語ネイティブ)エンジニアの場合。日本語によるコミュニケーションができるかどうかは、エージェントによる所感を判断の目安にする場合があります。
2.履歴書
おそらく、誰もが一度は書いたことがあるであろう、ベーシックな書類です。名前や住所、学歴や職歴などの基本的な情報、資格、賞罰などを記載します。エンジニアの中途採用の場合、内容を大きく問題にするケースはほとんどありません。記述に嘘がないか、極端に応募条件から外れていないかなどが確認できれば十分です。
「履歴書は手書き? それともデジタル?」といった質問をWeb上で見掛けますが、中途採用の場合、必ずしも手書きである必要はありません。むしろ採用担当側としては、デジタルデータの方を歓迎します。
また、履歴書には写真が添付されていると良いです。これは「これからのエンジニアはルックスだ! モテギークを目指せ!」という意味ではありません。本人の顔が見えることによって、親近感を抱くことがあるためです。なので、恥ずかしがらずに添えましょう。
3.職務経歴書(スキルシート)
間違いなく、これが最も大事な書類です。
職務経歴書は、これまでの仕事で得たスキルや経験、エンジニアとしての技術を判断するための材料です。書類選考の段階では、職務経歴書をメインに読んで、「求人条件にマッチしているか」「入社後に活躍してくれるか」を判断します。
一番大事な「職務経歴書」の構成
さて、本題はここからです。前述したとおり、3種類ある書類の中で最も重要なのが「職務経歴書」です。
「職務経歴書が、書類選考の当落をほぼすべて握っている」といっても過言ではありません。それほど大事な書類なのに、あまりにも残念な記述が多いという悲しい現状は、第1回「元プログラマのWeb企業人事、エンジニアのアピール下手を嘆く」でお伝えしたとおりです。
では、どうすれば残念な職務経歴書ではなく、「この人に会ってみたい!」「もっと読み込みたい!」と人事が興奮する職務経歴書を書けるのでしょうか。職務経歴書には、「職務経歴」「志望動機」「自己PR」を書きますが、それぞれに書くべきポイントがあります。
◎職務経歴(過去のこと)
- 書くこと:いままで仕事で経験してきたことを、プロジェクト単位で時系列に沿って書く
- 具体的な内容:プロジェクトの概要、開発目的、開発期間、チーム人数、担当職位、アーキテクチャなど(守秘義務に抵触しない範囲で)
◎志望動機(未来のこと)
- 書くこと:なぜその企業を転職先として選んだのか、その理由を書く
- 具体的な内容:応募先の企業に感じた魅力と応募に至った経緯、そこで自分がどんな価値を発揮できるかなど
◎自己PR(今のこと)
- 書くこと:エンジニアとしての優秀さをアピール。できるだけ具体的に、選考担当者が評価しやすいように書く
- 具体的な内容:職歴で発揮してきた強み、普段からスキルアップに努めている姿勢、技術的なアウトプットなど
過去=職務経歴は淡々と書けばいいという発想は大間違い
上記のうち、「志望動機」や「自己PR」については、皆さんそれなりに力を入れています。しかし、「職務経歴」についてはどうでしょうか。
「過去の資産=職務経歴」は淡々と書けばいいと思っている人がいたら、大間違いです。職務経歴はつまらなく書こうと思えばいくらでも無味乾燥にできるし、魅力的に書けば「もっと読みたい!」と人事担当にアピールできます。他のエンジニアとの差別化を図りたいなら、職務経歴の部分にこそ力を入れるべきなのです。
なぜ、「職務経歴」に力を入れる必要があるのでしょうか?
「エンジニア」と一言でいっても、その仕事内容はさまざまです。PHPで書いたWebアプリケーションを運営している会社の場合、PHPのスキルとWeb全般の知識が求められるでしょう。仕事内容を「Webアプリケーション開発」に限定しても、フロントエンド(ユーザーが直接触るHTMLに近い部分)とバックエンド(データベースに接続したりAPIとしてデータを返したりする部分)に分かれます。
求人を行う企業は、大抵の場合「このサービスにはバックエンド担当者が足りない」といった、ピンポイントなプランを持っています。よって、エンジニアは職歴をきっちり書き、「この人のスキルはうちが想定するプランにマッチしている」と企業に思わせる可能性を高めましょう。
具体的に書くポイントは、以下の3つです。
「(a)どんな範囲の開発を、(b)どんな規模で、(c)どんなアーキテクチャを使ったか」
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