勉強ではなくすごいことの共有――Shibuya.pm/Shibuya.js竹迫良範氏インタビュー【前編】:OSSコミュニティの“中の人”(3)(1/2 ページ)
「OSSコミュニティに参加したいけれど、どうしたらいいか分からない」「中が見えにくいので不安」……OSSコミュニティの“中の人”へインタビューし、OSSコミュニティをもっと身近に感じてほしい。
PerlとJavaScript、2つのコミュニティで活躍する竹迫氏
OSSの世界で活躍するエンジニアへのインタビュー連載、今回はサイボウズ・ラボの竹迫良範さんにお話をうかがいます。名刺には「Shibuya Perl Mongers」とありますが、その活躍はPerlコミュニティだけにとどまりません。Shibuya.pmの2代目リーダーとしての活躍、その他にもJavaScriptやセキュリティ、若手教育など、多方面で活躍しています。
今回のインタビューは2本立て。前編では2つのOSSコミュニティ、Shibuya.pmとShibuya.jsでの活動について話を聞きました。「自分のファーストランゲージはあくまでPerl。JavaScriptはセカンドランゲージ」と語る竹迫さんが、2つのコミュニティにコミットしたきっかけは?
Perl Mongersというコミュニティの全貌
深見 竹迫さんはさまざまな顔をお持ちですが、やはりPerlコミュニティの人、というイメージが最も強い気がします。そこで、まずは「そもそもPerl Mongersって何だ」、というところから話を進めたいと思います。
Perl Mongersは世界中にあるPerl好きエンジニアのコミュニティで、日本には、Tokyo.pm、Shibuya.pmなどがありますね。
竹迫 他、Kansai.pm、Fukuoka.pm、Hokkaido.pm 、Kamakura.pm、Yokohama.pmなどもあります。
深見 「日本」ではなく、日本の中の「地域」コミュニティなんですね。
竹迫 はい。Perl Mongersのグループ名は、主として活動する「都市」の名前で登録することが推奨されているので、基本的に国名の「Japan.pm」とは登録できないんですよ。日本全体のPerl文化の普及啓発を行う団体としては、JPA(Japan Perl Association)が別組織としてありますね。
大規模なイベントになるとYAPC(Yet Another Perl Conference:Perlコミュニティの国際カンファレンス)があります。現在、日本で開催しているのは「YAPC::Asia Tokyo」ですが、他にも「YAPC::NA(North America)」、「YAPC::EU」などがあります。あとは、Perl Mongers以上、YAPC未満の中規模カンファレンスとして「Perl Workshop」もありますね。
深見 地域コミュニティとYAPCは有名ですね。でも、Workshopは、日本ではあまり聞き慣れないですが。
竹迫 そうですね。日本の場合は少し特殊で、YAPC::Asiaが日本全体のWorkshopの役割も果たしているんです。
深見 なるほど。YAPCとWorkshopの違いは何ですか?
竹迫 YAPC::Asiaは国際カンファレンスなので、海外から参加者が来ることが前提となります。開催期間も数日間と長く、日本語だけではなく英語を中心として開催することになります。一方、Workshopは国内の1つの言語だけでやることが多いです。日本でも、Perl Workshopはもっと気軽に開催されて良いと思います。
深見 YAPCやWorkshopは、さまざまなエリアのコミュニティが交流する重要な機会なわけですね。地域コミュニティの次はいきなりアジアまで規模が広がる、というのが面白いです。
話を聞くだけではなく、自分たちも海外に出向く
深見 YAPCの運営は、開催する地元コミュニティが行うわけですよね。スピーカーはいろいろな国から呼ぶのですか?
竹迫 そうですね。ヨーロッパやアメリカなどからも人を呼びます。アジアで開催するからアジア限定、ということはありません。Shibuya.pmでYAPC::Asiaをホストしていた頃は、初代リーダーの宮川達彦さんの個人的なつてで海外ゲストを招聘していました。
深見 竹迫さんは、人を呼ぶだけではなく、海外に出向いてもいますよね。
竹迫 はい。2010年にはShibuya.pmの有志メンバーと一緒に、台湾のOSDC.TW(Open Source Developers Conference, Taiwan)でプレゼンテーションしました。
深見 国際カンファレンスを日本で開催する試みは、多くのコミュニティが実施しています。しかし、海外に出て現地コミュニティと交流するのは、意外に聞かないですね。
竹迫 Shibuya.pmには数多くのCPANモジュールを開発しているメンバーが多いので、その成果を別の国に紹介することは意義のあることだと思っています。Rubyコミュニティの人達も日本発の成果を携えて海外のカンファレンスで発表している人も多いですね。海外での交流はとても面白いですよ。
深見 例えばどんな面白い展開がありましたか。
竹迫 台湾の例では、日本のガラケーや日本語処理の話をした時などは、すごい興味を持ってもらえました。日本は、海外からすると不思議な国なので、日本独特の対応に興味を持って聞いてもらえたりします。
深見 皆さん、自腹で行っているのですよね。
竹迫 はい、そうです。
深見 一見、ハードルが高いように思うのですが、そうでもないのですか?
竹迫 プライベートの旅行も兼ねて、という形にすればいいので、特に抵抗感はないですね。家族同伴で行く人もいますし、全日程の発表を必ず聴く必要はありません。特に海外のカンファレンスだと、家族同伴で来ているスピーカーも多いです。もっと、気楽に海外のカンファレンスに行けばいいのではないでしょうか。日本人は真面目すぎですよ(笑)。
深見 それは確かに!
セカンドランゲージとしてのJavaScript
深見 竹迫さんは、Perlの他にもShubuya.jsなど、JavaScriptコミュニティにもコミットしています。JavaScriptとの出会いについて教えてください。
竹迫 2006年ごろ、Shibuya.jsの講演を頼まれたのがきっかけで、JavaScriptに興味を持ちました。Shibuya.jsの発起人であるid:secondlifeさんとid:nagayamaさんが、Shibuya.pmの活動をリスペクトしてくれていて「Shibuya.jsを今度立ち上げようと思っているんだけど、初回のイベントで何か講演してもらえないか」と声を掛けていただいたのが最初です。
深見 最初からコミュニティつながりだったのですね。それまで、JavaScriptは使っていたのですか。
竹迫 JavaScriptは業務の中でセカンドランゲージとして少し触っていたぐらいで、そんなに詳しいわけではありませんでした。僕自身はPerlがファーストランゲージですが、Shibuya.jsはファーストランゲージがJavaScriptという人がいるので、面白かったです。特に、JavaScriptのコミュニティは、世界的にもあまりないみたいですね。
深見 Shibuya.jsの発起人から呼ばれるということは、以前から交流があったわけですよね。Perlコミュニティ以外との交流は、積極的にしていたのでしょうか。
竹迫 そうですね。2005年のLLDNという軽量プログラミング言語のイベントが、Perl以外の人達と触れ合った初めての機会でした。そこでppencodeという自作プログラムの発表をしたのですが、そこでRubyや他の言語のコミュニティの人達に興味を持ってもらえました。
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