バックアッププロセスの最適解は運用から考えろ!:仮想化環境のデータバックアップ 最適解の見つけ方(2)(3/3 ページ)
仮想化環境のバックアップにはいろいろな方法が用意されているが、システムの運用状況や権限付与状況次第で、選択すべき手法が異なる。本稿では運用プロセスを幾つかに分類してそれぞれの最適解を考察する。
仮想機能連携型バックアップの手法で完全に一本化できるか?
「仮想機能連携型バックアップ」では、VADPによってイメージバックアップとして取得したものからファイルレベルリストアが可能であるし、きめ細かなデータアイテムをリストアできる「アプリケーションGRT(Granular Recovery Technology)」が可能な製品も登場してきている。しかし、まだ細かな制約に注意しなければならないのが実情だ。
VADP対応製品によって異なるが、例えば以下のような制限には特に注意したい。
- NTFS、FAT/FAT16、EXT2/EXT3以外のファイルシステム上のファイルを持つ仮想マシンからは、ファイルリストアができない
- UNIX系仮想マシンでUFS(UNIX File System)を利用したケースをカバーできない
- WindowsでGPT(GUID Partition Table)や単一VMDK(Virtual Machine Disk File)内に2つ以上のパーティションを作成している場合にファイルリストアができない
- ファイルリストア時にACL(Access Control List)のセキュリティ属性はリストアされない
- 複数のディスクで構成された仮想マシンの特定ディスクドライブ(=特定のVMDK)のみをバックアップしたり、リストアの対象にしたりできない
- アプリケーションGRTは、WindowsのVSS(Volume Shadow Copy Service)の機能連携であるため、Microsoftアプリケーションのみが実装されており、広範囲なアプリケーションサポートには至っていない
「仮想機能連携型バックアップ」は、まだ現状においては、仮想マシンのイメージバックアップやイメージリストアという使い方が無難といえるが、技術的な仕組みとしては非常に優れたフレームワークであるため、今後の広がりに期待したい。
ライセンスや容量の落とし穴に注意
ここからは、バックアップ手法を選択する際に見落としがちな点について補足する。
「統合バックアップ型運用スタイル」におけるバックアップソフトでは、「(1)従来型であるエージェント数でライセンス料金をカウントするタイプ」と「(2)バックアップ保存容量での容量課金をとるタイプ」の2つに分類される。
同じ仮想マシンに対するバックアップを、バックアップエージェント型とVADP双方で同時にとる場合は、バックアップ容量が二倍必要な点に配慮する必要がある。またバックアップエージェントのコストと、VADPのコストが二重に掛かる場合もあるので注意が必要だ。
「仮想機能連携型バックアップ」では、仮想サーバのOSを含めたシステムバックアップが容易だというメリットがあるが、一方でバックアップのデータ量が膨大になってしまう。じようなOSの仮想マシン群をシステムバックアップとして多数とるようなケースでは、バックアップデータのリポジトリには重複除外効果の高いものを使うと非常に効果的だ。
また、一言で重複除外対応といっても、固定長アルゴリズムを使っている場合と可変長アルゴリズムを使っている場合とでは削減率がそれぞれ50%、90%という大差が生じる場合もあるため、効果を定量数値で評価することをお勧めしたい。
最後に
一般企業においては、「仮想基盤型の運用スタイル」が、既存のナレッジ・ノウハウも生かしつつ、最もスムーズに仮想環境のデータ保護への移行が可能な形ではないかと筆者は考えている。
バックアップ手法の選択では、既に長い運用の歴史によって自社(顧客)が持っているナレッジを、有効的な形でデータ保護システムに実装しつつ、どのようにして、よりTCOを削減するための簡素化も上手くバランスをとりながら併せて盛り込んでいけるかがポイントになる。
バックアップ手法においては「これがベストプラクティス」という手法が1つに定まるものでないことから複雑に見えることがあるが、本稿が読者の方々にとって、実装を進めていく上での1つのヒントになることを願う。
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