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第152回 スマホ用SoCにIntelの未来が見える?頭脳放談

Intelがスマホ向けにAtomベースのSoCの提供を開始。残念ながら新しいコンセプトが見えてこない。Intelは、新しいコンセプトを打ち出して成功できるのか、それとも誰かのコンセプトを支えるだけの部品屋に逆戻りするのか。

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 Intelの2012年第4四半期の決算が発表された(Intelのニュースリリース「インテル コーポレーション、2012年第4四半期および通年決算を発表)。苦境にあえぐ日本半導体産業と比べたら、いぜんとして別次元の利益を上げてはいるものの、Intel自身としたら不調。それもこの1年ばかり停滞ぎみである。とうとう売上もピークを越えて低落傾向に向かっているのではないかという疑いも出てきた。

 アナリストは、パソコンが売れなくなっているからだと指摘する。そんなことアナリストにいわれなくても、みなさん先刻ご承知のことであろう。以前はパソコンでないとできなかったことの多くを、いまでは普通にスマホやタブレットを使ってやっている。家の外で便利なものは、家の中でベッドに入ったままでも便利である。パソコンは事務用品としてはいまだに重要であるものの、エンタメ、コミュニケーションなどというパーソナルな目的ではすでにフォーカスから外れはじめているように見える。

 IntelもMicrosoftもその昔は、パソコンがそのうち通信も放送も飲み込むような構図を描いていた。しかし歴史の流れは、携帯からスマホ、タブレットへの流れの方が主流派となるようである。狭間で、結局益のなかった独自路線を模索していたらしい家電系統は、いまやスマホ系統の流れのもとに統合されてしまうことがほぼ明白のようだ。

 このままではかつて自分らが追い落とした大型機やミニコンなどの二の舞になりかねない。結局、二番煎じといわれようと何でもスマホ、タブレットなどの携帯起源の流れに乗っていかねばならない。スマホやタブレットのCPUを見れば、みんなSoC(System On Chip)といわれる、必要な各種周辺機能までをほとんどすべて集積したLSIの中にある。単品CPUの外側にやれチップセットだ、インターフェイスだなどという構成にはなってないし、1日やそこらは電池が持つような低消費電力である。CPUだけで性能が足りないところや、ソフトウェア処理では電気を多く消費するところは、適材適所で軽いGPUもあり、ハードウェアの個別アルゴリズムのアクセラレータもありという具合でハイブリッドである。x86がコンシューマ市場で生き残りを図ろうとするならば、必然的にスマホやタブレットに搭載されているようなSoCに生まれ変わらないとならないわけだ(Intelのニュースリリース「インテル、新たなモバイル体験を幅広く提供」)。

 高集積のx86は、ここ15〜16年くらい、Intelにしたら、企画しては鳴かず飛ばずで仕切り直し、という悪しき伝統がある。いまままでパソコン市場の大きさの前にそれでもなんとかなっていたが、こんどばかりはそうもいっていられない。ぼやぼやしていたらこんどこそはコンシューマ市場を失ってしまうからだ。長年の相棒であるMicrosoftもWindows 8で、それまでの伝統をかなぐり捨てるかのごとくスマホ系統のOSであるかのような見た目を整えつつある。Intelが力瘤を入れてスマホ、タブレット向けのSoCを出したのは必然ともいえるし、ある意味、追い込まれた結果だともいえる。

Atom Z2420を搭載したスマートフォン
Atom Z2420を搭載したスマートフォン
IntelがCES 2013で発表したAtom Z2420を搭載したスマートフォンのリファレンス・モデル。Atom Z2420は普及価格帯向けのSoCで、動作周波数1.2GHz、ハードウェア・アクセラレーションによる1080pのフルHD画像のエンコード/デコード機能などを搭載する。

 しかしSoCという市場は、ちょっとCPUとは違うのではないかと思う。それは、高度な設計力を持つIntelにとってもだ。悪い例でいえば、日本勢はSoCという世界を昔風のASICというカスタムLSIの延長上で捉えて惨敗した。お客が必要だといったものをあれもこれも集積したものがSoCだ、ということで。実は、どうやらそのお客にも売れる商品のコンセプトが分かっていなかったのだ。そしてあれもこれもと「必要」な機能を並べていって行き詰った。

 それに対してSoCで成功している会社は、Appleのように儲かるコンセプトを持った自社の製品を支えるためのものであったり、通信という外せないインフラ技術の上に構築しているものだったりする。確かに機能だけはあれこれ入っていて、みんな似ているかもしれないが、売れるコンセプト、ビジネス・モデルの道筋にしっかりと組み込まれているSoCだけが売れている。ただ機能を並べればよいというものでもないのだ。

 Intelはその昔、IBM互換機というまだ売れるか売れないかよく見えなかったビジネス・モデルに率先して乗ることで、IBMに部品を納めるだけの会社から、パソコン業界を牽引する存在へと脱皮した。いまはその影響力を使って、自社陣営になるべく多くの会社をかき集め市場影響力を拡大しようとしているようにも見えるが、なぜ、IntelのSoCなのか腑に落ちるコンセプトを提示できていないように思える。その辺、AmazonやGoogleのほうが、そういうコンセプトを持ち合わせているようにも見える。

 自らそういうコンセプトを打ち出して成功できるのか、それとも誰かのコンセプトを支えるだけの部品屋に逆戻りするのか、IntelのSoCの将来には、Intelの行先も、また透けて見えているように思えるのである。

筆者紹介

Massa POP Izumida

日本では数少ないx86プロセッサのアーキテクト。某米国半導体メーカーで8bitと16bitの、日本のベンチャー企業でx86互換プロセッサの設計に従事する。その後、出版社の半導体事業部などを経て、現在は某半導体メーカーでヘテロジニアス・マルチコア・プロセッサを中心とした開発を行っている。


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