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11nの10倍以上! 次世代無線LANの802.11acとは?解剖! ギガビット無線LAN最新動向(1)(1/2 ページ)

スマートフォンの急速な普及に応えようと、モバイルネットワークでもいくつか新しい技術革新が起こっています。その1つが、ギガビットイーサネットを視野に入れた新しい無線LAN規格、802.11acです。その仕様はどんなものなのか、解説します。

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モバイルネットワークの現状〜なぜ「Wi-Fi」?

 ここ数年のICT市場の注目度ランキングトップスリーを挙げるとすれば、間違いなく「スマートフォン」や「タブレット」が入るでしょう。iPhoneが発売された2007年当時に、ここまでのスマートフォンの広がり、話題性を予測していた人は少なかったかと思います。

 また、ここ最近の出来事で印象的だったのは、新年の携帯電話事業者が行う通信規制(いわゆる「あけおめ」規制)が「データ通信」に限定されていたことです。つまり携帯電話の多くは、「電話端末」としてではなく、メールやSNSなどの「データ通信端末」としての役割が強くなってきているということです。さらにはSkypeやLINEのように、データ通信網を使って電話できる仕組みも広がってきています。

 この予想外のスマートフォン普及により、いくつかの課題も出てきてしまっています。その原因となっているのが、「端末数の増加」と「端末当りの通信量、セッション数の増加」です。両方とも、普及という観点では歓迎すべきことなのですが、その伸びがあまりに急激だったために、システム(インフラ)の対応が追いつかなくなってきています。

 モバイルネットワーク側でも、いくつもの対応策(技術革新)がなされています。モバイルネットワークと一括りにしましたが、3G/4G、無線LAN(Wi-Fi)の両方で課題を解決のための取り組みが進められています。また個々の技術革新だけでなく、両方が共存する形での取り組みも進められており、一例として、3G/4Gから無線LANへのオフロードも積極的に進められ、2015年までに64%がオフロードされるという推計もあります。

 無線LAN単体での技術革新の1つが、今回ご紹介する802.11ac(以下11ac)です。このテクノロジーの中には、「端末数の増加」「通信量の増加(通信の高速化)」の両方に対応可能な大きな進歩が含まれており、11ac導入によるメリット(逆に導入しないことによるデメリット)は大きなものになると予想されます。

 最近では、「LTEも出てきたし、これからは4Gだけで十分では?」という声も耳にすることが増えてきました。しかしオフロードの取り組みからも分かるように、現時点では、4Gだけでは十分ではありません。

 また、無線LAN=Wi-Fiと記載されることが増えてきましたが、Wi-Fiとは、ベンダ依存なくつながるための取り決めのことです。一方4G端末は、どうしてもキャリアに依存してしまいますが(SIMフリー端末といえども、SIM自体はキャリア依存です)。これに対し無線LAN端末は、世界中どこでも、Wi-Fi対応のアクセスポイントにつながることが可能です(後日改めて紹介するPasspoint/Hotspot2.0で、さらにその世界が広がっていくと期待されています)。

 余談になりますが、2012年3月に総務省の中で「無線LANビジネス研究会」が開催され、その最終報告書が公開されています。そこでも無線LANの現状、今後の予測についてのデータがまとめられているので、ぜひ参考にしてみてください。

【関連リンク】

総務省:「無線LANビジネス研究会」報告書の公表

http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02kiban04_03000093.html


IEEE 802.11acって何?

 ではまず、802.11acについておさらいするところから始めましょう。802.11acとは無線LANの新しい規格のことです。2009年に802.11n(以下11n)が規格化されてから4年を経てようやく出てきた次の規格です。

 企業のIT管理者の中には、まだ11nへ移行途中のユーザーもいるでしょう。しかし、この数年間でのモバイル市場の成長を考えると、11acは必然的に11n以上のスピードで企業ネットワーク、公共施設、コンシューマと、さまざまな場所へ浸透していくと考えています。

 すでにいくつか11ac対応のアクセスポイント製品が出てきていますが、11acはいまだドラフトの段階です(正式に規格として採用されるのは2013年末の予定)。

 11acの規格を決める上での要求条件は、以下の通りです。

  • 複数STA(Station)環境で合計1Gbps以上のスループット、単一STA当たり500Mbps以上のスループットを実現する(MU-MIMOの適用を前提としているため、複数STA、単一STAでの値が異なっています。またここでのスループットは「実効スループット」を意味しています)。
  • 2.4GHz帯を除く6GHz以下の周波数帯での運用と、既存の5GHz IEEE 802.11(802.11a、11n)STAとの下位互換性を条件とする。

 2点目にあるとおり、11acは完全に5GHz帯だけを念頭に置いた規格です。下位互換性は保ちますが、あくまでも5GHz帯のみ(つまり802.11b/gは省く)となります。

 従って、これからの無線LANでは、迷わず5GHz帯を選択すればよく、2.4GHz帯をサポートする新規無線LAN端末は少なくなっていくことでしょう。iPhone 5で5GHz帯がサポートされたことも記憶に新しいかと思います。そういえば、話題のノートPCでも、11acのチップを採用することが噂されていましたね。

 また、11acは完全にギガビットイーサネットを意識した無線LAN規格となっています。つまり、完全に有線LANと同等レベルのアクセスの提供が可能になります。

 IEEEでは11acの利用モデルも示しており、その多くはビデオなどの動画/映像に関するものとなっています。もちろんその背景には、YouTubeに代表されるビデオコンテンツ、動画アプリケーションの増加と、それらを見る端末のモバイル化があります。

【IEEEが示す11acの利用モデル】

  • ワイヤレスディスプレイ
  • HDTVの配信
  • 大容量ファイルの高速アップロード/ダウンロード
  • メッシュネットワークのバックホール用途
  • アウトドア、大講堂
  • 工場でのオートメーション化

 また11acでは、単純に1つの端末との通信速度を向上させるだけではなく、MU-MIMOの機能により、複数の端末が1カ所に集まった環境でその威力を発揮します(MU-MIMOについては後ほど詳しく説明します)。

 つまり、BYODのように1人でノートPC、スマートフォン、タブレットなど、複数のモバイル端末を使いこなし、さらにその上で動画などのヘビートラフィックを使うのが当たり前になってきている今こそ、11acは最適なモバイルプラットフォームといえるでしょう。

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