オラクルはT5、M5投入で「マーケットリーダーになる」と宣言
サン・マイクロシステムズの系譜を受け継ぐハードウェアがオラクルからついに登場する。日本向けの会見では、本国の製品戦略担当者も登壇、マーケットリーダーシップを獲得すると意気込む。
2013年4月16日、日本オラクルはSPARCサーバの新製品を国内向けに発表した。先に米国で同社CEOであるラリー・エリソン氏が発表した「T5」「M5」サーバラインアップである(関連記事)。サン・マイクロシステムズ買収(2010年1月)から約3年、ついにオラクルのロゴが刻印されたSPARCプロセッサが登場したことになる。
サンの系譜を受け継ぐT5、M5
SPARCアーキテクチャのチップには、サン・マイクロシステムズ「ULTRA SPARC」の系譜と、富士通が開発する「SPARC 64」の系譜がある。先に富士通が「M10」として発表したサーバ機に搭載されているのはこのうち「SPARC 64」の流れをくむ「SPARC X」である。
今回、オラクルが提供するのは「SPARC M5」「SPARC T5」という2つのプロセッサラインアップによる、計5機種のサーバ製品群だ。
サン・マイクロシステムズ時代から「M」はミッションクリティカル系、「T」はスループット系として、それぞれ特性の異なる2系統のラインアップを用意しており、今回の「T5」「M5」もこの流れを踏襲している。
このうち、パフォーマンスの高さを特徴とするT5について、オラクル・コーポレーション シニア・バイスプレジデント システムズ・セールス アジア・パシフィック&ジャパン エイドリアン・ジョーンズ氏は、直近のベンチマーク結果を示して「17のベンチマークテストで世界記録を樹立した世界最速のプロセッサ」(資料)であるとし、同社SPARC製品が世代間でコンスタントに2倍の性能向上を達成していることを強調した。
「サン・マイクロシステムズのハードウェア資産について、今までも年間約50億ドルの投資を行ってきた。今後も投資を継続する」(エイドリアン氏)
DB、Javaミドルウェアを高速化する「Oracle Optimized Solutions」
続いて登壇したオラクル・コーポレーション システムズ・プロダクト・マネジメント&ストラテジ担当 シニア・バイスプレジデント デイビッド・ローラー氏は、今回の製品が「Oracle Optimized Solutions」として、Oracle DatabaseやOracle Weblogic ServerなどのJavaアプリケーションミドルウェアのアクセラレート機能を回路上に実装している点などを紹介、今後も「顧客のビジネススピード向上に貢献するようなアプリケーションのパフォーマンス向上につながるハードウェア実装を推進する」と語った。
会場からは、別の汎用アーキテクチャ向けのOracle Database、Javaがどのようになるかという質問が出たが、「Oracle Optimized Solutionsはあくまでも、より最適化するということであり、他のアーキテクチャを排除するものではない」(ローラー氏)と明確に懸念を排除した。また、DBやJavaの処理を考慮した回路実装をしているが、「将来的にはこの実装を他の処理で利用するといったことも考えられる」(ローラー氏)と、適用範囲の拡大を示唆した。
また、既存のSolarisアプリケーションの動作も保証しており、「既存ユーザーも安全に最新のハードウェアに移行できる」(ローラー氏)とした。
なお、今回発表になったT5、M5のラインアップは既存T4サーバの後継ではなく、相互に補完し合うものになる。
「T4サーバ機も継続して販売する。今回T5、M5のラインアップが登場したことで、T4をベースにしたエントリモデルからT4、T5によるミッドレンジモデル、M5を32ソケット搭載したハイエンドモデルまでをカバーできる」(ローラー氏)
コストパフォーマンスを強みに「市場のゲーム」の主導権を握る
続いて登壇した日本オラクル 執行役員 システム事業統括 飯尾光國氏は今後の販売戦略について説明した。
飯尾氏によると、同社の日本国内におけるSPARCサーバ製品販売戦略のポイントは、(1)既存のオラクルハードウェアユーザーに対するアプローチ、(2)オラクルのソフトウェア製品を他社ハードウェアに搭載しているユーザーへの「Oracle on Oracle」(オラクル製品向けにチューニングされたハードウェアによるパフォーマンス向上)の訴求、(3)競合ハードウェアユーザーへの性能とコストパフォーマンス優位性による訴求、の3点。
特に競合サーバ製品との比較において「同等の性能のハードウェアであれば80%オフに近い価格帯で提供できるコストパフォーマンスの良さ」(飯尾氏)を強みに、ミッションクリティカル系システムでのマーケットリーダを目指し、「市場のゲーム」の主導権を握りたい考えだ。
同製品については、旧サン・マイクロシステムズ時代からのパートナーを中心に下記の企業が販売パートナーとして名を連ねている。会見でも一部パートナー企業からのコメントが寄せられた。
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