enchantMOONファーストルック:ドリキンが斬る!(1)(1/2 ページ)
1時間で1000台予約を達成したenchantMOONをshi3z氏から、直接プロトタイプを見せてもらったドリキンがファーストインプレッションをお届けする。
ついに価格が発表され、予約も開始された、一部で話題の手書き入力デバイス enchatMOONですが、先日、一足お先にユビキタスエンターテインメント社長shi3z氏から、直接プロトタイプを見せてもらったドリキン(筆者)がファーストインプレッションをお届けしたいと思います。
ドリキンの自己紹介
こんにちは! 改めましてドリキンです。普段はサンフランシスコにある某電機メーカーにて、組み込み系デバイスのソフトウェアエンジニアとして働いています。今回、縁あって@ITでenchantMOONの解説記事を書きました。よろしくお願いします。
仕事ではWebKitを組み込み機器に移植したり、Androidデバイスの最適化やJavaScriptベースのミドルウェア/アプリケーションの開発をしています。
そんな僕のスキルセットを知っていたユビキタスエンターテインメント社長のshi3z氏が、enchantMOONの解説記事を書くならドリキンしかいないと、@IT編集者の河内さんと勝手に話を決めてしまい、今に至っています。
個人ではDrift Diaryというガジェット系というかグルメ系というか、ひたすら自分の私生活をさらし出しているブログを10年近く続けています。
shi3z氏との出会いもブログがきっかけでした。ここ数年はサンフランシスコから最新IT情報をお届けするビデオチャンネルdrikin.tvも放送しているので、興味があればぜひこちらもよろしくお願いします。
enchantMOONとは?
ちょっと自己紹介&宣伝が長くなってしまいましたが、いよいよenchantMOONについて僕なりに解説していきたいと思います。
この記事を読んでくれている読者ならすでにenchantMOONについては知っている人も多いはず。一応、僕なりの理解でenchantMOONを一言で解説してみると「Androidをベースに最適化を行い、ペンによる手書き入力に特化したタブレットデバイス」という感じでしょうか。
shi3z氏の解説によれば、enchantMOONには
- 手書き入力用デバイス
- プログラミング教育用デバイス
という2つの側面があります。
互いの機能は密接に連携してenchantMOONという1つのデバイスを実現していますが、特に後者の教育用途は、特定のターゲットに限定されているので、この記事では、手書き入力デバイスとしてのenchantMOONに注力して、手書き入力機能について深く掘り下げていきたいと思います。
enchantMOONの仕組み
ソフトウェアからみるenchantMOON
実際のenchantMOONの機能を紹介していく前に、少しenchantMOONの中身について解説していきたいと思います。
enchatMoonは「Androidをベースに最適化を行い、ペンによる手書き入力に特化したタブレットデバイス」と書きましたが、文字通りGoogle Android OS 4.0をベースに作られたタブレットデバイスです。
ただ、ほかのAndroidベースのタブレットとの大きな違いは、enchantMOONを実現するために不要なAndroid機能はそぎ落とし、手書き入力に特化した最適化が行われている点です。
enchantMOONの電源を入れてみても、見慣れたAndroidのホーム画面は見当たらず、いきなり手書き入力用のキャンバスが現れます。
ホームボタンすら見当たらないので、通常のAndroidデバイスしての機能を期待するとがっかりします。というか期待することが間違いです。
実際、enchantMOONはAndroidをベースにしていますが、Googleに認定されたAndroidデバイスではないのでGoogle Play Storeも搭載されていません。
enchantMOONの魅力は、Androidベースなデバイスであることではなく、Androidをベースにしつつ、徹底的な最適化を行い、ペン入力による快適な手書き入力を実現したタブレットデバイスであると言えます。
ハードウェアからみるenchantMOON
具体的にどのような最適化をして快適なペン入力を実現しているのかは後述するので、少しハードウェアにも目を向けてみましょう。
ハードウェアに関して、shi3z氏の言葉を借りて説明すると「メモリこそ多いけど、基本的に初代iPadに近いハードウェア」とのことでした。
画面解像度も、初代iPadや現行iPad miniと同じ1024×768ですが、静電容量式タッチパネルと電磁誘導式のタッチペンを搭載しています。
言うまでもなく、昨今のタブレットデバイスのハードウェア進歩はすさまじく、新機種が出るごとに倍々でスペックが進化していくので、今時、初代iPad相当(AllWinner製のA10「Cortex-A8」のシングルコアCPUを搭載)のスペックはないんじゃないの? と思われるかもしれません。
ただ、今時のタブレットがいくらマルチコアなCPUを搭載していても、ソフトウェア側が対応してていなければその性能は最大限に生かせません。enchantMOONの設計はJavaScriptを最大限に活用するアーキテクチャになっています。
現状のJavaScriptエンジンは、いまだ多くの部分がシングルスレッド・シングルコアに最適化されているので、ハードウェアコストなども考えると、無駄にマルチコアなCPUを採用してコストを上げるよりは、価格もこなれたシングルコアのCPUを選択するというのは妥当な選択だったのでしょう。
誤解がないように補足しておくと、これは、シングルコアCPUで十分と言っているのではなく、最新のマルチコアCPUであっても最適化が不十分な状態では、まだまだJavaScriptなどの快適な動作にはパフォーマンスが足りないという意味です。
なので、正直、実際にenchatMOONに触るまでは、「これはいくらなんでも実用に耐えないんじゃないかな」と想像してました。
この予想は半分正解で半分間違っていたいうのが僕の正直な感想です。
外観デザインからみるenchantMOON
少しenchantMOONのハードウェア外観についても触れておきましょう。
ハードウェアデザインについても、shi3zさんのこだわりは半端ではなく、すでに一部でかなり話題となった、映画監督の樋口真嗣氏によるYouTubeのティーザー広告や、そのほかの解説記事などで、この記事をここまで読んでくださっている人には、そのこだわり具合を説明するまでもない気がします。
イラストレータの安倍吉俊氏がデザインした、ハンドルを特徴としたデザインは、プロトタイプを見た限り、少し無骨さは感じるものの、作りもしっかりしていて、安っぽさもなく、製品版がこのクオリティと同等か、それ以上で出荷されるのであれば、NeXT CubeやNetwonのように、デバイスとしては使われなくなった10年後でも、ガジェット・ハードウェアコレクションとして十分価値を生み出すレベルのクオリティだと思いました。
このクオリティのハードウェアを、大手ハードウェアメーカーではなく、従来ソフトウェア会社であったユビキタスエンターテインメントが出す、初めてのハードウェア製品で実現しているということに驚きすら覚えました。
使い心地からみるenchantMOON
外観デザインについては、こだわりとクオリティーの高さを紹介しましたが、実際にタブレットデバイスとして使ってみたときのハードウェアクオリティについても少し触れておきます。
enchantMOONデザインの最大の特徴は、なんといってもハンドルですよね。ひと目で目に付くハンドルは、ポートレイト(縦置)で使うことを前提にデザインされているので、片手でハンドルをつかんでenchantMOONを腕に乗せ手書き入力を行うときには、その機能が最大限に活かされます。
また、ハンドルを折りたたむことで、卓上で利用するときにもスタンドになったり、自立させることも可能です。
ただ、このハンドルはあくまでもポートレイト(縦置)での利用に最適化されているという点がポイントです。
個人的には、タブレット利用時の縦置き、横置きによる利用比率は半分半分という感じで、こまめに縦横切り替えて利用することが多いです。
また、手書きでノートを取るときなどはマインドマップ手法でメモを取ることが多いので、ノートを横置きにしてメモを取ることが多いのですが、横置きにして使う時には、ハンドルはあまり活きないというのが正直な感想でした。
また、液晶の初期設定の背景が黒ベースだったこともあって、最初、「液晶はモノクロですか?」って聞いてしまったくらいで、今時のiPadや最新Androidダブレットが搭載している液晶と比較すると見劣りしてしまうことは確かだと思います。
特に、視野角の狭さはちょっと問題で、ハンドルを折りたたんで角度を付け、卓上に置いて利用する時すら、視野角の不足を感じました。ココは、今回enchantMOONを使っていて感じた最大の問題だと思います。
もちろんこの問題にshi3z氏が気付かないはずはなく、液晶のクオリティーに関しては、最終的なenchantMOONの価格や、enchantMOONが実現したい機能など、トータルバランスを考慮して決断された品質なので、実用には十分であることは確かだと思います。
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