テレワークは企業の成長につながる、では具体的にどうするか:特定のIT技術の話ではない
安倍晋三首相も前回の首相就任時から一貫して、労働力減少への対処のため、テレワーク人口を増やす必要があると述べている。企業は福利厚生のためというより、自社の今後の成長のために、自社の事業におけるテレワークの活用を考えていく必要がある。では、具体的にどうすればいいのか。
4月中旬に掲載した記事「日本の企業で柔軟な働き方は実現できるのか」に、「なぜデスクトップ仮想化が前提なの?」というツイートをいただいた。
この記事でもくどくない程度に説明したつもりだったが、真意を疑う読者がいらっしゃるようなので、はっきりさせたい。筆者はデスクトップ仮想化の宣伝のために、この記事を書いたわけではない。デスクトップ仮想化がなければ在宅勤務が実現できないとも、まったく考えてはいない。ただし、デスクトップ仮想化は、読んで字のごとく、通常職場におかれているデスクトップ(PC環境)を仮想化し、地理的な壁を越えてどこからでも使えるようにする技術だ。テレワークをうまく取り入れようと考える企業にとって、デスクトップ仮想化が前提となる必要はまったくないが、便利な技術であることは、多くの人が認めるだろう。
一方で、前回の記事でもお伝えしたように、テレワークとは直接関係のない理由で、国内企業におけるデスクトップ仮想化の導入は進んでいるようだ。理由はどうであれ、導入が進んでいるのなら、これをテレワーク推進に生かさないと、あまりにももったいないのではないだろうか。前回の記事で、テレワークマネジメント代表取締役の田澤由利氏が述べていたように、テレワークは福利厚生ではなく、今後の企業の生き残りや成長を左右するテーマだからだ。安倍晋三首相も前回の首相就任時から一貫して、労働力減少への対処のため、テレワーク人口を増やす必要があると述べている。
[2012/5/2追記] 安倍首相は4月22日の会見で、「子供が3歳になるまでは男女がともに子育てに専念し職場復帰できるように、経済三団体に『3年育休』の推進をお願いした。積極的に認める企業には助成金をつくるなど応援したい」と話した。しかし、育児休業を3年に延長するというだけでは、対象者から、「3年も休んだら職場復帰ができなくなる」とか、「完全に休む必要はない、育児をやりながらも仕事をやり続けたい」という声が出そうだ。筆者が田澤氏に取材したのは4月初めだが、同氏は現在の育児休業について、完全な休みよりも、ある程度仕事をしてもらったほうが、本人と企業の双方にとってメリットが大きいのではないかと話していた。出社しなくとも十分に仕事ができる環境があれば、男女ともにライフステージにかかわらず企業に貢献しやすくなり、そのほうが労働力不足への対処としては近道だという考えだ。
「クライアント仮想化はキャズム超え」だが……
IDC Japanが4月30日には発表したクライアント仮想化(VDIだけでなく、プレゼンテーション仮想化、つまり以前のシンクライアントや、アプリケーション仮想化を含む)の市場調査によると、「2012年の法人向けクライアント端末における仮想化導入率は20.2%となり、キャズム超え」「キャズム超えはアーリーマジョリティへの浸透を意味し、2013年以降は市場が一気に拡大」するという。
なぜ、これほどまでに導入が進んでいるのだろうか。企業によってさまざまなきっかけや理由があるだろう。タブレット/スマートフォン端末への対応、災害への備え、Windows XPの延長サポート期限切れをきっかけとしたデスクトップ端末/OS調達手法の見直し、などが考えられる。だが、導入や維持のためのコストを踏まえると、最終的に「元が取れた」と感じることのできる企業は、どれくらいの割合に達するのだろうか。一部の部署や社員を対象として試験的に導入してみたものの、コストとメリットの兼ね合いから、導入を拡大しない、あるいはやめる企業も出てくるのではないか。
デスクトップ仮想化で「元が取れる」のは、モバイルワークを含むテレワークの促進により、ビジネスのスピードを高めたり、従業員の才能や経験を柔軟に生かしたりできたときなのではないだろうか。
では、(デスクトップ仮想化を使うかどうかにはまったく関係なく)、在宅勤務は具体的にどう進められるのか、目の前にいない部下を上司はどう管理できるのか、そもそも時間管理はどうすればいいかなどを、「在宅勤務を企業の成長に生かすための7カ条」(PDF)にまとめましたので、ぜひご覧ください(本コンテンツのダウンロードには、TechTarget会員登録が必要です)。その前編である「日本で柔軟な働き方が広がらないのはなぜか」(PDF)も併せてお読みください。
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