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原子だけで作った映画はストレージ技術をどう進化させるか?遠くない未来の技術

IBM Researchが、原子だけで撮影した「世界最小」の映画を公開している。IBMいわく、この作品がストレージ技術を革新する重要なヒントとなるという。その理由は……?

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 IBM Researchは、原子だけで撮影した「世界最小」の映画を2013年5月1日から公開している。『A Boy and His Atom(少年と彼の原子)』と題されたこの作品、実は何千個という量の原子を配置し、約250フレームのコマ撮りで撮影している。

 IBMはなぜ原子を意図どおりに配置すること、移動させることに注力した研究に投資しているのか。その理由は、我々人類が扱うデータ量が将来的に膨大な量になることを予見したものだった。

 「データの生成ならびにデータの消費が継続的に増加するのに従い、データ記録は原子のレベルまで小さくなるでしょう。新しいコンピュータアーキテクチャや、データを記録する別の方法を考え出すのに採った方法をこの映画の製作に適用しました」(IBM Research 主任研究員Andreas Heinrich氏)

 原子の操作には「走査型トンネル顕微鏡(STM)」という、IBMが発明した顕微鏡を使っている。STMは、個々の原子を観測可能なツール。映画製作は、このSTMと、温度・圧力・振動を正確に制御する技術を用いている。


STMを使った「映画制作現場」(IBM Reseachのflickr投稿画像より)

 STMの操作はごく一般的なコンピュータから遠隔操作で行われている。銅表面上で原子を感知、銅表面から1ナノメートルの距離で、特殊な針を操作して原子や分子を特定の位置に配置している。原子の動きは原子が移動する際に発する「音」を観測して測定しているという。


STMの遠隔操作はこの端末で行われた(IBM Reseachのflickr投稿画像より)

 この技術は、IBM Reseachにおけるストレージデバイス研究の応用である(『EE Times Japan』関連記事参照)。

 現代のストレージデバイスでは、1ビットの情報を記録する際、約100万個の原子が必要である。一方、原子を正確にコントロールして情報記録に利用できるようになれば、1ビットの情報を最小で12原子のみで表現できるという。

 この技術が安定的に提供できるようになれば、「今まで製作されてきた映画全てを、指のつめの大きさのデバイスに記録することがいつかできるようになる」(IBMのリリースより)という。

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