グーグルのプレスイベントで見るグーグル新時代の幕開け:ドリキンが斬る!(4)(1/4 ページ)
新型Nexus 7タブレットやAndroid 4.3、さらには新デバイスChromecastの発表から、グーグルの新世代戦略を読み解きます。
いやぁ、グーグルって本当にすごい会社ですね。
ここ数年はピークを越えて一気に大企業化が進むのかと思っていたら、2011年に創業者のラリー・ペイジ氏がCEOに復帰。今年の3月には「Androidの父」として知られるアンディ・ルービン氏がAndroidの責任者を退任。Chromeを担当していたサンダー・ピチャイ氏がAndroidも担当するという大幅な組織変更を行いました。
そんな中、グーグルは現地時間7月24日午前9時に、サンフランシスコで報道関係者向けイベントを開催しました。イベントの招待状には「Please join us for breakfast with Sundar Pichai」(サンダー・ピチャイとの朝食に参加しましょう)と記されていました。
アップルが先日開催した「World Wide Developers Conference 2013」(WWDC 2013)のレポートも終わっていないのに恐縮ですが(汗)、「旬なネタは旬なうちに」ということで、グーグルのイベントについて、今回もドリキン視点でレポートをお届けしたいと思います。
発表概要
今回の発表内容は大きく分けて次の2つでした。
- Androidタブレット「Nexus 7」の新型と「Android 4.3」の発表
- 新デバイス「Chromecast」の発表
新型Nexus 7とAndroid 4.3については、直前に情報が出回ったこともあり、ほぼ予想通りの内容でした。Chromecastについては、Chrome OSに関する何らかの発表があるという予想が多かったものの、同OSをテレビ向けに最適化するのは予想外でした。
各製品について、個別に発表内容をおさらいしつつ、筆者なりの解説を行ってみたいと思います。
新型Nexus 7のスペック
正直なところ、Androidの将来については懐疑的でした。実際、enchantMOONの記事を書いた際も、Androidの限界や最適化の難しさについて、かなり熱くなって書きました。
しかし最近、ちょっとしたきっかけで携帯電話を「Nexus 4」に変更したら、Androidのパフォーマンスがあまりに良く、軽いカルチャーショックを受けています。
設計が違うため、iOS並みのパフォーマンスは難しいと思っていたのですが、なかなかどうして、最新のモバイル端末の目覚ましい性能向上と、Android自身の粘り強い最適化の結果、iOSと比べても遜色ないレベルにまで達しているじゃないですか
そうなると、Android特有の自由度の高さや柔軟性、グーグルの他サービスとの連携の良さが生きてくるため、「スマートフォンはAndroid、タブレットはiPadで良いかな」と思い始めていました。
そういう風にAndroidのことを再評価していたタイミングでの新型Nexus 7の発表であり、ガジェット好きとして今回のイベントを楽しみにしてました。
実際に発表された新型Nexus 7の主な内容を取り上げると、
- フルHDをサポートした1920×1200のディスプレイ
- iPad Retinaディスプレイを超えたピクセル密度(323ppi)
- 初代Nexus 7液晶より30%向上したカラーレンジ
- iPad miniよりも軽量(290g)
- iPad miniよりスリムな横幅(114mm×200mm×8.65mm)
- 5.1チャンネルのバーチャルサラウンドに対応したステレオスピーカ
- 初代Nexus 7よりCPUで1.8倍、GPUで4倍高速化されたクアッドコア1.5GHzのSnapdragon S4 Pro CPUを搭載
- 2Gbytesのメインメモリ
- 背面5Mピクセル、前面1.2Mピクセルのカメラ
- 9時間持続するバッテリ
- ワイヤレス充電(Qi互換)
- デュアルバンドWi-Fi(2.4G/5G)、802.11a/b/g/n対応
- NFC、Bluetooth 4.0対応
- さらに4G LTEモデルでは、1つのモデルであらゆる周波数帯域をサポート
と、iPad miniよりスリムで軽く、性能はフルサイズiPadに匹敵するスペックてんこ盛りのタブレットに進化しました。
その上で、値段は16Gbytesモデルで229ドル、32Gbytesモデルでも269ドルという破格の価格設定となっています。
今後、グーグルはAndroidでタブレット市場により一層注力していくのだろう、という姿勢が伺えました。その理由の1つとして、2013年末にはタブレットの販売台数がPCの販売台数を上回るという予測が大きく影響しているようです。
ルービン氏がAndroidから離れ、ピチャイ氏がChromeとAndroidの責任者を兼務すると発表された際、これはグーグルがAndroidからChrome OSへとシフトするための布石かなと感じました。ですが、少なくとも当面、携帯電話とタブレット市場においては、成熟期のAndroidをベースに展開していくつもりなのでしょう。
ちなみに、Nexus 7は日本市場で特によく売れており、日本における昨年のホリデーシーズンのAndroidタブレット(iPadは含まず)売上の半数近くがNexus 7だったとイベントでは言及していました。
イベントでの発表後、ちょっとだけですが新型Nexus 7の実機に触れる機会を得られました。確かにiPad miniよりも軽く、かつスリムでした。数字で見ると小さな違いですが、実際の印象では大きな違いを生み出していると感じました。
何よりも良い意味でのチープさが好印象でした。チープといっても決して安っぽくてダサいという感じではなく、雑に扱っても気にならない気軽さがあるという意味でのチープさです。グーグルも、iPadとの差別化を図るため、「Tossable(投げても大丈夫)」なデバイスを意識してデザインしたようです。
アップル製品の美しいハードウェアデザインからくる、「大事に扱わないともったいない!」という心理的負担から解放され、「屋内ではiPad、屋外ではNexus 7」という使い分けが良さそうだなと思いました。
ということで、筆者は即買しました(笑)。
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