「情報システム部門は正当に評価されてこなかった」、ガートナー長谷島氏:浅薄な情報システム部門不要論の不毛さ
世界のCIO意識調査に基づき、「情報システム部門は静かな危機を迎えている」と提言したガートナーのリポートに関わった、ガートナー ジャパンの長谷島眞時氏は、本質とかい離した情報システム部門不要論に異を唱えている。
企業が情報システム部門を切り離し、子会社化するなどの動きは、いまに始まった話ではない。だが、各種のクラウドサービスが次第に注目を浴びるようになってきたことで、「情報システム部不要論」が改めて目立つようになってきた。
一方、調査会社ガートナーは、「2017年にはマーケティング部門が行使できるIT予算は情報システム部門を上回るようになる」と予想したり、「情報システム部門に静かな危機が迫っている」と提言したりしている。ではガートナーも、今後の企業において、情報システム部門は不要になるといいたいのだろうか。
ガートナー ジャパンのエグゼクティブパートナーであり、CIO やIT責任者を対象としたエグゼクティブ・プログラムを担当する長谷島眞時氏は、「静かな危機」提言と、そのベースとなった世界のCIO意識調査に関わった1人。だが同氏は、ガートナーが唱えているのは情報システム部門不要論ではないと否定する。
長年情報システムの業務に携わり、7年にわたって企業のCIOを務めた経験を持つ長谷島氏は、企業の情報システム部門の多くが現在置かれている状況に関しては、経営層の認識不足が大きく関係していると指摘する。
長谷島氏は、「情報システム部門は正当に評価されてこなかった」と話す。ITは、複雑度が年々増してきた。一方で、企業の業務活動における重要性も着実に高まってきている。ますまず重要な仕事を、ますます難しくなるなかでこなしているにもかかわらず、経営陣からは利益を生まない間接部門の1つと見なされ、さらに予算規模の大きさから目をつけられ、有無をいわさずコスト削減ばかりが求められてきた。
企業IT担当者にとって「使える」アドバイザリ情報の提供を目指す「IT INSIDER」シリーズの第19弾、「『情報システム部門の危機』、その実像とは」(PDF)では、情報システム部の置かれている状況の本質に関するインタビューを掲載しています
最近ではコスト削減に加え、利益への貢献を情報システム部門に求める経営者が増えている。だが、ただの間接部門という扱いのままで利益への貢献を強いたところで、現状を打開する策は見えてこない。
情報システム部門は従来も、ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)などの必要性に応じて仕事の幅を広げてきたし、今後の業務ニーズに対応することも十分可能だとする。だが、その前提として、各企業における情報システム部門の役割を再確認し、その役割を果たすのに必要な権限や原資、リソースを与えるべきだと強調する。現在の、情報システム部門と経営陣との間の認識ギャップが変わらない限り、情報システム部門は徐々に「危機」と呼べる状態に陥っていく。それがガートナーのいう「静かな危機」だという。それは、場合によっては企業自体にとっての危機につながっていく可能性もある。
情報システム部門が現在置かれている状況について、長谷島氏にインタビュー。IT INSIDER No.19「『情報システム部門の危機』、その実像とは」にまとめました。ぜひご覧ください。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.