仮想化を成功させるのは「圧倒的な運用管理の容易性」
全社仮想化統合の最も重要な目的の1つは、「ビジネスニーズに即した迅速、柔軟なITの提供」だ。この目的を達成するには、仮想化運用担当者の日常業務を容易にしなければならない。運用にコストが掛かるようでは、本末転倒になってしまう。
前回のコラム「仮想化を成功させるのは、圧倒的な導入と拡張の容易性」では、仮想化による全社IT統合を進めるため、ストレージには機器調達、初期導入、容量・性能拡張といった点で、従来とは異なる発想が求められると述べた。
同様な発想の転換は、日常の運用・管理作業でも求められる。現在はちょうど、ITベンダが提供する製品と、ユーザー組織における運用体制の双方が、過渡期に差し掛かっていると表現できる。
それは、前回のコラムでも取り上げたIDC Japanの「国内企業のストレージ利用実態に関する調査2013年版」(2013年2月)で、「データ量の増大」に続き、「管理者のストレージスキルの不足」「適切なストレージ管理ツールの不足」が課題に挙げられている点からもうかがえる。
「管理者のストレージスキルの不足」「適切なストレージ管理ツールの不足」は、いずれも本来なら課題と認識されるようであってはならない。仮想化統合環境における日常的な運用管理では、作業の焦点が、IT製品自体の設定よりも、その利用環境の管理に移るからだ。
言い換えれば、下記のようになる。仮想化統合環境の日常的な運用では、ユーザー部門が求めるITを機動的に提供し、安定的に使い続けられるようにすることが至上命題になる。また、全社的なIT基盤であれば、その規模は大きなものにならざるを得ない。小規模な導入からスタートしたとしても、やがて大規模なものに育つ可能性は高い。
大規模な環境を機動的かつ安定的に運用するためには、運用作業自体の抽象化と自動化が不可欠だ。そのうえで、ストレージの利用にかかわる日常的な運用作業は、ストレージ管理者ではなく、仮想化環境の運用担当者が自ら行えなければならない。
例えばあるユーザー部署が、(仮想)サーバ1台、データ領域も100Mバイトで済むような小規模な業務アプリケーションを構築したいと申請したとする。社内承認が済めば、仮想化運用担当者は、仮想サーバを必要なミドルウェアなどとともに、即座に用意できる。
一方で、この新規アプリケーションのためのデータ領域の確保、すなわちボリュームの作成と仮想サーバへの接続については、従来どおりストレージ運用担当者に依頼しなければならないとすると、ストレージ関連の作業だけでも多くの時間を費やしてしまう可能性がある。これでは、全社仮想化統合の最も重要な目的の1つである「ビジネスニーズに即した迅速、柔軟なITの提供」ができなくなってしまう。
こうしたことから、ストレージのデータ領域の払い出しにかかわる作業は、仮想化環境運用担当者が行えなければならない。だからといって、仮想化環境運用担当者がストレージに関する高度な知識を習得する、あるいは複雑なストレージの構成管理ツールの操作方法を学ぶ、といったことが求められるようでは本末転倒だ。仮想化環境の運用担当者の仕事は、「社内のユーザーに対し、ビジネスニーズに即してITを迅速、柔軟に提供すること」であり、ITインフラ自体の管理ではないからだ。
話を前述のIDC Japanの調査結果に戻すと、「管理者のストレージスキルの不足」「適切なストレージ管理ツールの不足」をユーザー組織が感じることのないような製品や環境を提供する責任は、ITベンダにある。
ストレージ運用の自動化はどう進むのか
富士通の「ETERNUS VX700シリーズ」は、仮想化環境の運用管理に関する上記の課題に正面から取り組んだ製品として、特筆できる。
VX700シリーズの場合、まずストレージの構造自体に高度な抽象化が組み込まれている点に、注目したい。
VX700シリーズはiSCSIストレージであり、ストレージの接続設定がファイバチャネルストレージに比べて簡単だ。出荷時にRAIDは構成済みであり、アプリケーション単位でRAIDを組むといった作業とは無縁だ。さらにRAIDグループをまたがる形で「ストレージプール」という、論理的なデータ領域の大きなかたまりが構成され、仮想化環境運用担当者は、ここから業務アプリケーション単位でボリュームを切り出せる。VX700シリーズには、容量仮想化(シンプロビジョニング)の機能が備わっているため、仮想化運用担当者が、ストレージ装置の容量を、非効率的に消費してしまうという心配もない。
物理機器上のデータ格納領域の上に、論理的な「ストレージリソース」が用意され、仮想化運用担当者はこの論理的なストレージリソースをユーザーに切り分けることだけを考えればいいので、管理作業が容易になっている。
富士通 プラットフォームソフトウェア事業本部 第二プラットフォームソフトウェア事業部 第四開発部 マネージャーの村山浩氏は、次のように説明する。
「従来は、サーバ集約や新たなサーバのプロビジョニング(利用開始のための設定)に伴って、サーバで使用するディスク領域の配備が必要でした。ストレージの専門知識を持つ管理者によるストレージ側での定義が必要で、定義したものを使うためには接続の操作が必要でした。しかしVX700では、VMwareを使っているユーザーならvCenterプラグインを用い、仮想化環境の管理画面からストレージ領域の配備ができます。メニューで『新規ボリュームをESXサーバに追加する』というボタンを押すだけです。あとは、容量など少数の設定だけで、接続までが自動的に行われます」。
全社仮想化環境のためのストレージ製品は、今後2つに分かれていく可能性がある。運用しやすいかのように見せかけたものと、構造から担当者にとっての使い勝手に至るまで、あらゆる面での運用容易化を目指す製品だ。VX700シリーズは後者の代表例の1つとして、注目されていくことになるだろう。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2013年10月13日