社内SEへキャリアチェンジするための4つのステップ:転職から見た「ITエンジニアの転機」(2)(1/2 ページ)
社内SEの仕事はシステムを作ることではない? ―― 4つのステップを踏んで転職成功したエンジニアの事例を紹介しよう。
企業の採用活動が活発になり、転職のテーマもバラエティに富んでくるようになりました。2〜3年前までは離職中で再就職先を探す方が多かったのですが、最近はご自身のキャリア形成を考えて、攻めの姿勢で転職にチャレンジされる方が多くなったように感じます。
かねてより転職先として人気があるのが社内SE。今回は中堅SI企業のシステムエンジニア(SE)から社内SEへキャリアチェンジ転職した林さん(仮名)の事例を紹介します。
漠然とした憧れから、社内SEを目指したが
林さんは31歳のSE。大学の情報系学部を卒業し、独立系の中堅SI企業で8年のキャリアがあります。転職活動を始めてから4カ月経過していましたが、転職先は決まっておらず、人材紹介会社を訪れたのです。
私はまず林さんに、転職活動の状況を教えてもらいました。
林さんの希望は社内SEで、転職情報サイトなどを使って10件の求人に応募しました。そのうち2社は面接まで進みましたが、結果は2社とも不採用。そこで私は次に、なぜ社内SEを希望するのかを尋ねました。
林さん「自社システムの仕事に取り組みたいから、というよりも、本音を言うと顧客側に移りたいと考えたからです」
林さんが現在働いている職場は、大手SI企業からの受託仕事が半分、エンドユーザーからの比較的小規模な直接請負が半分とのこと。顧客折衝も経験できますが、開発工程に集中することが多く、SEとしてのキャリア形成に限界を感じていたそうです。そんな中、仕事で接する顧客企業の情報システム担当者の仕事に漠然とした憧れを抱き、転職活動を始めたのだそうです。
最初のステップ〜己の希望を知る
そこで私は、社内SEとはどのような仕事なのかと林さんに尋ねてみました。
林さんの答えは「自社のためにシステムを作ること」。うーん、決して間違いではないのですが、正解でもありません。続いて私が尋ねたのは、今までの仕事との違いです。「発注する側と受ける側でしょうか……」
これも、正解としては不十分です。SI企業のSEと社内SEでは働く上での“目的”が違います。SI企業のSEは顧客のシステムを作ることで報酬をいただきます。しかし社内SEは、本業を支援するのが仕事です。製造業には製造業の、流通業には流通業の、金融業には金融業の本業があり、その本業を遂行するためのIT環境を整備するために働くのです。
本業を遂行するためにシステムはどうあるべきかを考え、実現する。実現したら運用する、徹底的に使い倒す。システムを実際に作る技術力よりも、システムのあるべき姿を構想するスキル、そしてさまざまなリソースを使いこなしながら調達するノウハウが求められます。これもすべて本業を支援するという目的のためです。
社内SEの仕事を説明し、改めて希望を確かめたところ、林さんの答えは「YES」でした。社内SEの仕事と目的を知ることによって、漠然とした憧れの気持ちが明確な希望になったのです。「作ることを目的とした仕事」から「目的のために何をすべきかを考える仕事」へ、「次々と新しいシステムに取り組むこと」から「ひとつのシステムにじっくり腰を据えて取り組むこと」へと。
セカンドステップ〜相手の希望を知る
自分の希望が明確になったら、次は相手(求人企業)の研究です。企業がどのような人を希望しているのか分からずやみくもにアタックしても、効果は上がりません。
林さんは今まで10社に応募し、書類選考通過は2社。あまりよい数字ではありません。「もしや」と思って彼が過去に応募した求人の内容を詳しくみたところ、ビンゴ! 求人の採用対象がバラバラだったのです。
ここで言う採用対象とは組織内でどういう役割を求められているかということです。
例えば総務部長の下に20代の若手が2人いる中小企業の情報システム部門があるとします。事業拡大に伴いITを専門的に経験してきた総務部長の右腕になってもらえるような人を求めているのだったら、おそらく30代の実務経験者を採用対象にするのではないでしょうか。
SI企業では複数名を募集するケースが多く、必然的に若手からリーダー層まで採用対象が広くなります。しかし社内SEは違います。ほとんどの求人がワンポジション=1人枠です。社内SEを受ける場合は、その組織の構成を知り、どのポジションが欲しいのか、どんな役割を受け持つのかを把握できると、その求人が自分にマッチしたものかどうかが分かります。年齢や経験年数でマッチした求人は限定されるのです。
林さんは、ご自身よりも若手を対象にした求人や、より経験豊富な方を求めている求人などにも応募していたので、書類選考通過率が低かったのです。
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