「データのコピー」をやめて工数を8分の1に 古河電工は「100システムのデータ統合」をどう実現?:部門ごとに分散したデータをどう横断活用するか
約100システムにデータが分散し、データの所在が分かりにくくなっていた古河電工。分散したデータをどう横断活用できるようにしたのか。データをコピーして集約する方式から転換した、データ統合の取り組みとは。
光ファイバーや電力ケーブル、自動車向けワイヤハーネスなどを手掛ける古河電気工業(以下、古河電工)は、社内で利用するシステムをスクラッチ開発してきた。経理や営業、購買などの部門ごとにシステムを管理しており、それぞれのデータベースも分かれていたことからデータがサイロ化し、全社横断でのデータ活用が困難になっていた。
データのサイロ化により、社内では「必要なデータがどこにあるのか分からない」「必要なデータが存在するかどうかも分からない」といった声が生じていた他、経営層は決算数値の速報値を迅速に確認しにくくなっていた。新入社員や中途採用者など、社内のシステム構成に不慣れな従業員は、必要なデータの所在を把握しにくい状況だった。
工数が8分の1に――選択したデータ統合の手段とは?
課題解消のために、古河電工はスクラッチ開発システムやSaaSなど、約100システムのデータ統合に着手した。当初は、Microsoftのクラウドサービス「Microsoft Azure」を活用したデータレイクに、各システムのデータをコピーして集約する「物理統合」を採用していた。ところが物理統合では、データソースを追加するたびにデータをコピーして集約する必要があったことから、新たなデータ統合手段を検討した。
古河電工は物理統合ではなく、データをコピーせずに複数のデータソースを仮想的に接続し、一つのデータソースのように利用できる「データ仮想化」技術の採用を決断した。複数の製品を比較検討した結果、Denodo Technologiesのデータ仮想化ソフトウェア「Denodo Platform」を採用した。
Denodo Platformの選定では、パッケージ製品だけではなく、スクラッチ開発したシステムで利用する一般的なデータベースにも容易に接続できることを評価した。オンラインストレージ「Box」に無制限に接続できる点も選定を後押しした。Boxに蓄積したデータも活用しやすくしたいと考えていたからだ。
約2カ月間のPoC(概念実証)を経て、古河電工は2025年11月に本番環境へのDenodo Platformの導入を開始した。同社はDenodo Technologiesと直接契約する形でDenodo Platformを導入したという。製品への理解を深め、その機能を最大限に活用しながらデータ統合を推進するのが狙いだ。
データ提供を最短30分に短縮
Denodo Platformの導入により、関係会社の統廃合に伴う、72種類のデータ提供に必要なデータ統合を約1カ月半で実現した。物理統合と比べて約8分の1の工数で済んだという。
データ活用でも効果が表れている。従来は、現業部門向けにデータを提供するための仮想ビュー(複数のデータソースのデータをまとめて利用できるようにする設定情報)の作成に、約3カ月かかることがあった。Denodo Platformの導入後は、データソースへの接続許可が得られれば、最短30分でデータを提供できるようになった。
Denodo Platformの導入により、各システムのデータとBox内のデータを組み合わせて利用できるようになり、システム化できていないデータも活用しやすくなったという。経理データの活用なども含めると延べ約500人が、Denodo Platformを通じてデータを活用している。Denodo Technologiesは2026年6月30日、本事例を発表した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「ExcelとCSVでデータ連携」をまだなくせないのはなぜ? 調査で見えたその原因
データ連携の自動化が進まず、ExcelやCSVファイルによる手作業から抜け出せないのはなぜなのか。製造業を対象にしたスリーシェイクの調査からは、その背景に業務システムの運用形式があることが浮かび上がった。
「データを社外に出さずAIを使えるインフラ」を1カ月で構築 Skyはどう実現した?
機密データを扱う企業にとって、AI活用と情報保護の両立は大きな課題だ。Skyはこの課題の解決に向けて、オンプレミスAIインフラを約1カ月で構築した。短期間で実現できた理由は何だったのか。
ネットワーク分離の悩ましい“データ受け渡し問題”をゼロトラストで解消 公立校はどう実現?
分離したネットワーク間でのデータ受け渡しは、運用負荷の増大や情報漏えいのリスクを招く。府中市教育委員会はゼロトラストを具現化するネットワークインフラにより、課題の解消を図った。どのような仕組みなのか。