「ユーザーは私たちの期待を裏切ってくれた」――API公開発表前日に語ったBitcasaへの想い:Bitcasa CEO ブライアン・タペッチ氏が語る
容量無制限のクラウドストレージサービスを提供している「Bitcasa」は、2013年11月12日に開催されたTechCrunch Tokyo 2013で、開発者向けにAPIを公開することを発表した。
容量無制限のクラウドストレージサービスを提供している「Bitcasa」は、2013年11月12日に開催されたTechCrunch Tokyo 2013で、開発者向けにAPIを公開することを発表した。
Bitcasaは、2011年9月に設立されたスタートアップ企業。2013年2月にサービスリリースし、2013年8月28日に日本市場への本格参入を発表した。勢いは今も衰えず、Bitcasaに格納されているデータ量は35ペタバイトを超えている(2013年11月12日現在)。
今回API公開に至った理由を、BitcasaのCEO ブライアン・タペッチ(Brian Taptich)氏は次のように述べる。「ストレージを自社で賄う企業は少ない。開発者の中には、Amazon S3などのサービスを使っている人もいるが、そのサービスと連携するために追加の開発が必要だ。BitcasaのAPIを公開することで、この問題を解決できる。自社製品のコアでない部分は、他社から賄えばいい。これからは、自分でクラウドストレージを構築しようと考えなくていい」(タペッチ氏)。BitcasaのAPIは、2013年11月中に公開される予定だ。本APIの特長は以下のとおり。
API公開発表前日の単独インタビューで、もう1つ面白い話をタペッチ氏に聞いた。Bitcasaがマスメディアなどに注目される最大の理由は「容量無制限」といった特徴があるからだ。10ギガバイトまでは無料で使え、年間99ドルまたは月10ドル支払えば無制限に利用できる。しかし、タペッチ氏は最新のデータとユーザーアンケートから、こんな話をしていた。
「今、クラウドストレージ業界は、危機に瀕している。なぜなら、現実を見失っているように思えるからだ。ストレージというのは、単にデータやハードウェアの容量の話ではない。人々が持っている重要なコンテンツに関わる話だ。
業界の中で語られる『クラウドストレージ』は、『データ』や『ストレージ』といった抽象的な意味に徹していて、その実体が人々が所有している非常に重要な資産であるとことを見失っている。デジタル所有物というのは、今や人々にとってリアルな資産と同じくらい(またはそれ以上に)重要な所有物である。
Bitcasaは『容量無制限』だ。しかし、99%のユーザーは5テラバイト以下、95%のユーザーは1テラバイト以下しか使わない。ユーザーインタビューを行うと、長所としてプライバシーやセキュリティ、アクセシビリティ、低コストといった声はあるが、『容量無制限』というトピックは出てこない。確かにストレージの容量も重要だが、Bitcasaが支持される理由はそこではなかった。
私たちはこのデータを見て不思議に思ったが、開発時のことを振り返ると納得がいった。Bitcasaは開発に優先順位を付けず、すべての要求の実現を目指した。例えば、ユーザーの所有物がプライベートでセキュアな格納ができるか、多くの人に使ってもらうにはどうすれば価格を抑えられるのかなどを並行して実現していった。その1つとして、十分な容量を確保するというトピックがあり、高度な技術を使ったら容量無制限が実現できたというだけだ。
私たちは確かに『無制限の容量』に対して関心があった。そして、リリース時には『無制限は素晴らしい』『これは、ユーザーに受け入れられるのではないか』と期待した。しかし、ユーザーはその期待を裏切り、私たちの最初の想いを思い出させてくれた。Bitcasaの最大の強みは、どれか1つに特化するのではない『包括的な理念』にある」(タペッチ氏)。
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