デプロイメントツールの充実、キャリアグレードOpenStack/OpenStack Havanaの新機能まとめ:たまおきのOpenStackウォッチ(2013年12月版)(2/2 ページ)
OpenStack Summit Hong Kongの注目セッションの情報、OpenStack Havanaの新機能を紹介します。
ミッションクリティカルな場面での活用事例
3つ目はOpenStackの活用事例です。
今回のOpenStack Summitでは数多くの事例発表がありましたが、筆者が気になった事例を3つ選んでみました。以下に表として示します。
組織が直面した課題 | 課題解決の方向性 | |
---|---|---|
CERN(欧州原子核研究機関) | ・データセンターの新設 ・ジェノバとブタペストの2つのデータセンターの管理 |
・2つのデータセンターをまたぐクラウド基盤を構築 ・2万コアの計算機リソースを管理、1万5000サーバ、30万コアの管理を目標 |
PayPal(オンライン決済サービス) | ・1億3700万ユーザー ・30万トランザクション/分のオンライン決済サービス ・99.9999%の可用性 |
・全てのレイヤーで単一障害点を作らない ・ラックやデータセンターを超えてスケールすること |
Concur(出張・経費精算クラウドサービス) | ・1000万件/月のスキャンデータ ・データの消失は会社の信用問題に直結する |
・標準的なハードウェアを並べて処理の高速化・並列処理を実施 ・単一障害点の排除 ・TCOの削減($0.027GB/月)4カ所のレプリカ、設備・人件費を含めた金額はパブリッククラウドよりも安い |
グローバルでは大規模なOpenStackの本番環境がミッションクリティカルな領域でも活用し始めていることを実感しました。
セッションを視聴しよう
OpenStack Summitのデザインセッションは議事録で、キーノートや一般セッションの内容はYouTubeで見ることができます。
- 関連リンク:デザインセッション 議事録
- 関連リンク:OpenStack Summit Hong Kong セッションビデオ
OpenStack Summitに参加したVAリナックス岩本氏のイベントレポートや@ITの三木泉氏の記事も参考になります。
- 関連リンク:VAリナックス岩本さんによるイベントリポート
- 関連記事:勢いを増すOpenStack、成功を支えるものとは(@IT)
- 関連記事:OpenStackはPaaSをカバーすべきか、そうでないのか
OpenStackコンポーネント解説(3):Havanaで追加された新機能
今回はHavanaで主要コンポーネントとして追加された新機能について紹介します。
Ceilometer:リソース使用量の計測と課金のための仕組み
Ceilometer(セイロメーター)は、「雲量計」という意味です。この意味から転じて、OpenStackでは構築したクラウド環境のリソース使用量を計測するためのAPIを提供する仕組みをこう呼んでいます。クラウドサービスでユーザーのリソース利用量に応じて課金するために必要な仕組みとして開発が進められています。APIで提供されるリソース使用量は以下のページに定義されていますが、インスタンスからストレージやネットワーク、電気使用量まで基本的な情報はおおむね網羅されているので、提供したいサービスに応じて、課金ロジックを構築することができるでしょう。
また、Ceilometerを利用した外部プロジェクトとして「billingstack REST API」が提供されています。ドキュメントを見ると、Ceilometerを活用して課金するためのAPIを提供しているようです。実際の課金ロジックを構築する際に使いやすいAPIを提供している、という感じです。
Heat
Heatは、OpenStackでオーケストレーションを実現するための機能です。「自動化」と言った方が分かりやすいでしょうか。
テンプレートを基にインスタンスを起動し、さらに要求に従ってインスタンス内のゲストOSやアプリケーションに対して設定を自動的に行っていく仕組みです。Amazon Web Serviceでは「AWS CloudFormation」という機能が提供されていますが、同等の機能と考えるとよいでしょう。実際、CloudFormationと互換性を保つようになっており、CloudFormationで利用できるテンプレートはHeatでも利用できるように設計されています。
Heat自体はインフラ部分、つまりインスタンスやネットワーク、ストレージといったOpenStack自身が提供するリソースに対して管理を行いますが、PuppetやChefといった構成を自動化するツールと連携することで、ゲストOSやアプリケーション層までの自動化を実現しています。
これにより、例えばあらかじめ必要なWebアプリケーションの導入、初期化が終わったインスタンスを展開するなど、クラウドサービスの提供で繰り返し必要となるフローを自動化できます。
筆者紹介
たまおき のぶゆき
日本仮想化技術 エンタープライズクラウド事業部
エンタープライズクラスのクラウド基盤を日本のお客さまにお届けするお手伝いをいたします。
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