「プライベートクラウド」という言葉は要らないのか:プライベートクラウドをめぐる誤解(1)(1/2 ページ)
「プライベートクラウドは時代錯誤な考え方である」「仮想化=プライベートクラウドである」「プライベートクラウドは特定のベンダーや製品の宣伝文句」「クラウドの運用など自社にはできない」といった意見は「思い違い」。各ポイントに関する解説を通じて、プライベートクラウドの本質に迫る。
「プライベートクラウド」という言葉が使われることがある。一方で、これを否定する人もいる。「パブリッククラウド」や「ハイブリッドクラウド」は、「プライベートクラウド」という言葉があればこそ、分類表現として成り立つにもかかわらず、プライベートクラウドについて語られることは少ない。語られる場合でも、特定ベンダー、あるいは特定の製品の宣伝として受け止められることが多いようだ。
「プライベートクラウド」という言葉をきっかけとして考えられるメリット、やれることはたくさんあるのにもかかわらず、多くの点で誤解されている。これはもったいない状況だと筆者は考える。本記事では、一般企業のIT担当者にとって、これらの誤解を取り上げながら、この言葉をどのようにとらえれば最も有益かを考える。
誤解1:「プライベートクラウド」は時代錯誤な考え方である
「プライベートクラウド」は、「プライベート」な「クラウド」だ。つまり社内や企業グループ、コミュニティなどに専用のITサービスを、クラウド的に運用することだ。クラウドサービス(パブリッククラウド)を信奉する人々の一部は、この「クラウド的に」という点だけをとらえて、クラウドサービスの真似をしようとするだけではないか、それは時計の針を戻そうとする行為に近いのではないか、という。
しかし、そもそもクラウドとは、事業者が提供するサービスのみを意味する言葉ではない。「コミュニティクラウド」といった言葉もあるように、公共機関や団体、業界組織が運営するクラウドサービスが実際に存在する。同様に、企業が社内、あるいはグループ企業に対して提供するクラウドサービスも存在する。こうした、いわばクローズドなクラウドは、IT構築・運用を事業者に任せることもあるが、自社で担当するケースもある。
筆者はクラウドについて、「利用者が、利用したいものを、利用したいだけ、利用するということに専念できるようなIT消費スタイル」という定義を提唱してきた。クラウドとは、利用者の利便性に着目したITの新たな消費形態であり、これに対応できるサービスが「クラウド的」だと考える。この定義に提供主体は含まれない。
クラウドサービス事業者が提供したからといって、どこまでクラウド的なのかは保証されない。企業の情報システム部門が社内に提供するサービスで、社内ユーザーが「利用したいものを、利用したいだけ、利用するということに専念できる」のであれば、そちらの方がよほどクラウド的な場合もあり得る。
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