米IT起業家らも注目の「マインドフルネス(Mindfulness)」って何だ?:三国大洋の箸休め(23)(2/2 ページ)
FacebookやTwitterの共同創業者など、米国の起業家らがこぞって注目する「マインドフルネス(Mindfulness)」というムーブメントがある。日本ではあまり聞き慣れないこの言葉、一体どんな概念なのだろうか?
mindfulnessへの注目は、人間の自己防衛本能の現れ?
0prah Winfreyが大プッシュしたおかげで一時期大ブームになっていたEckhart Tolleの教え("be present"=「いまに在ること」)や、その書籍(『The Power Of Now』など)をかじったことがある人にとっては、mindfulnessの文脈で語られているコンセプトなどは比較的馴染みあるものかもしれない。またその実践についても、瞑想・座禅や気功、あるいは腹式呼吸の効用などを知っている人には、説明の必要もない類いのことかもしれない。
ではmindfulnessのどこが新しいかといえば、1つはブームの背景にある時代の状況。そしてもう1つは、実践のためのツール(スマートフォンアプリなど)かと思われる。
どんどんと気ぜわしくなっている世の中――職場でも家庭でもさまざまな仕事に追われ続け、さらにモバイル端末などの浸透で、24時間簡単に「外部とつながりっぱなし」になり得てしまう状況の中で、人間のストレスは高まる一方だ。
おまけに、ソーシャルメディアのメッセージやそれを知らせるスマートフォンの通知機能など、人の注意をそらす、気を散らすもの("disctraction")には事欠かず、マルチタスクしてみても生産性は上がらないし、何かをしていても本当には楽しめない……。mindfulnessに注目が集まっているのは、「hyper-connected」といわれるような状況に置かれた人間の「自己防衛本能」の現れといえるかもしれない。
その他、TIME記事などでは、mindfulnessの効用に着目した学術研究が進んでいることにも触れている。これらの研究を通じて、瞑想などを実践することで血圧が低下したり、慢性的な痛みが和らいだり、あるいは脳の構造に変化が現れたりすることなども分かり始めているという。
映画監督のデビッド・リンチが作った財団が、荒れる教育現場の改善や、戦場から戻った軍人のPTSD(トラウマ)対策に瞑想を活用しようとしているのは、このあたりの事柄と関係があるのかもしれない。
ガジェットが与えるストレスから逃れるためにガジェットを活用
一方、実践を助けるスマートフォンアプリは、上記の「GPS for the Soul」以外にも既にたくさん存在している(iPhoneユーザーなら、App Storeで「meditate」「meditation」などと検索してみるといい)。問題の原因の1つとされるガジェットを問題解決の手段に使う、というのは改めて考えると面白い。
TIMEでは、mindfulness実践のためのティップスとして、腕時計を着用すること、ベッドに携帯電話などを持ち込まないこと、自然と触れることなどを挙げている。
腕時計着用については、「スマートフォンで代用していると、時間を確かめようと端末を取り出すたびについ別のことをしてしまいがちだから」という説明がある。また自然に触れることには、「決してInstgramで景色を撮影したりはしないこと」という但し書きもある。
3つとも「言うは易く、行うは難し」な助言かもしれない。
【参照記事】
- ENLIGHT-ENMENTENGI-NEERS - Wired
- Mindfulness: Getting Its Share of Attention - NYTimes
- The Mindful Revolution - TIME(本誌記事の紹介)
- 3 Reasons Everyone at Google Is Meditating - Fast Company
- O.K., Google, Take a Deep Breath - NYTimes
- In Mindfulness, a Method to Sharpen Focus and Open Minds - NYTimes
- Wizdom 2.0
- David Linch Foundation
文章の分解
上記の背景を踏まえて、冒頭の英文を少しずつ区切りながら読み解いてみよう。
[1] The raisin exercise reminds us /
[2] how hard it has become to think about just one thing at a time. /
[3] If distraction is the pre-eminent condition of our age, /
[4] then mindfulness, (/
[5] in the eyes of its enthusiasts,)is the most logical response.
それぞれ、以下のように読み解ける。
[1] このレーズンを使った訓練で気付かされるのは
[2] 一度に1つのことだけを考えるのがどれほど難しくなってしまったかということ
[3] いろいろな事柄に気をとられることが、現代の最も顕著な条件だとすれば
[4] mindfulnessは最も理にかなった反応だ
[5] それを熱心に支持する者の目には(そう映る)
もう一度英文を
では最後に、もう一度英文を読み直してみよう。
The raisin exercise reminds us how hard it has become to think about just one thing at a time. If distraction is the pre-eminent condition of our age, then mindfulness, in the eyes of its enthusiasts, is the most logical response.
【復習】
1. レーズンを使った訓練で思い出されたのは、どんなことか?
2. mindfulnessは現代のどんな条件(状況)に対する反応と考えられるか?
三国大洋 プロフィール
オンラインニュース編集者。「広く、浅く」をモットーに、シリコンバレー、ハリウッド、ニューヨーク、ワシントンなどの話題を中心に世界のニュースをチェック。「三国大洋のメモ」(ZDNet)「世界エンタメ経済学」(マイナビニュース)のコラムも連載中。
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