視覚はどこまで他の感覚器官をだませるか―― 「おいしそう」の科学:錯覚とインターフェースの可能性(2)(2/2 ページ)
ユーザー参加型の学会として発足し、毎回数万人規模の視聴者を集める「ニコニコ学会β」第5回シンポジウム。本稿では全体のハイライトとなった人間の感覚に注目したセッションを紹介する。
視覚から味覚を操る 和田有史氏(農研機構)
視覚、聴覚、触覚に加えて、味覚のハックを行っているのが和田有史氏(農研機構食品総合研究所 食認知科学ユニット 主任研究員)だ。見た目の変更が味覚に強力な影響を与えること、聴覚が視覚に与える影響などを詳しく解説した。
和田氏は食べ物の鮮度情報がいかに見た目に影響されているかを研究している。まずは、魚の目を対象に、食物の鮮度を輝度のヒストグラムを使って定量化した研究だ。
色も味覚に大きく影響し、実際にスーパーなどでの商品陳列棚を見ると、オクラのネットは緑、オレンジのネットは赤になっているなど、食材の包装は中の食材が際立つようになっている。
このような、色と形の結び付きについては乳幼児の段階から見られ、生後6ヶ月目の乳児から、典型的な色の付いた写真とそうでない写真を識別できるという。
和田氏はこの他、「他の人が見ていると思うと、よりフェアトレードの食品を買う傾向にある」「自分で選んだ商品の情報はよく読まれ、価値判断につながる」など、人間の行動が他人の視線や、自分の判断に影響されるという研究について紹介。感覚器官同士の連携について、面白く語る発表となった。
著者プロフィール
高須正和(@tks)
ウルトラテクノロジスト集団チームラボ/ニコニコ学会β実行委員
趣味ものづくりサークル「チームラボMAKE部」の発起人。未来を感じるものが好きで、さまざまなテクノロジー/サイエンス系イベントに出没。無駄に元気です。
第6回のニコニコ学会βシンポジウムをニコニコ超会議3と共催として、幕張メッセにて行います。乞うご期待!
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