修正の影響範囲が分からない? そんなの徹夜でおやりなさい:美人弁護士 有栖川塔子のIT事件簿(8)(1/2 ページ)
システムの要件、設計、プログラムはお互いに複雑に関係し合っています。相互の関係を管理するトレーサビリティマトリクスを作成しないと、修正が発生した際に、その影響がどこまで出るか把握できず、トラブルを招くことになります。
※この連載は「なぜ、システム開発は必ずモメるのか?」(細川義洋著)のCHAPTER1を、著者と出版社の許可の下、一部修正して転載するものです。
彩音はシステムソフトウェア開発会社で働く新米エンジニア。要件定義から全て任せてくれるクライアントのプロジェクト担当になってノホホンとしていたところ、大学の先輩でIT紛争を得意とする弁護士 塔子に、ユーザーが開発プロジェクトに慣れていない可能性を指摘されます。塔子の忠告に従ってもう一度要件をユーザーと検討し直したら、さあ大変。問題続出の模様です。
あははは。面白いですね、その成兼章介って人。典型的なボンボンっていうか。知らなかったなあ、先輩の友達にそんな人がいたなんて。
知らなくったって、人生において何ら影響のないヤツよ。
でも、お金持ちなんですよね? 先輩のこと好き好きオーラいっぱいみたいだし、行っちゃったらどうですか?
アタシのことが好きな男なんて、別に珍しくないし。
…… 先輩って、なーんか幸せですねー。
どーゆー意味よ! アンタこそ合コン漬けで幸せなんじゃないの?
それがそうでもないんですよー。残業残業で……。
それはそれは、ご愁傷さま。ホホホホ、愉快、ゆかい。
意地悪ばっかり言ってると、ますます縁遠くなりますよ。
うっさいわね! 相談があるなら、さっさと話しなさいよ。
はーい。えっとー、この間のプロジェクトなんですけどー。
ユーザーが、何でもハイハイって聞いてくれるっていう?
そう、それです。先輩の忠告をプロジェクトマネージャーに話して、もう一度要件をお客さんと真剣に詰めてたら……
いろいろ出てきたんでしょ?
はい。オーダーをいただいたのはネットオークションシステムで、開催中のオークションだけを検索する機能が必要なんですけれど。
その検索条件が加わったり、変わったり?
そうなんですー。出品の種類や現時点での最高額で検索する機能は想定していたんですけれど、出品者の信用度や入札者の名前でも検索したいって話が出てきて。
ちゃんと新規の要件だって、お客さんに話した?
はい。先輩から前に聞いていた通り、新しい要件についてはちゃんと費用請求して、リスクやデメリットもお客さんと話し合いました。でも、出品者や入札者を管理するデータベースの構造を見直さなくちゃいけなくて……
やれば、いいじゃない。
そうなると、そのデータベースにアクセスする他のプログラムも直さなくちゃいけなくて……
直せば、いいじゃない。
それを呼んでいる別のプログラムにも影響して……
徹夜すれば、いいじゃない。修正の影響範囲を特定するのって、大変でしょ? ホホホホホ!
えーえー、その通りです! プログラムもデータベースも設計も、要件も、テストケースも、直したとき他にどんな影響が出ちゃうかが全然、分からないんですよ。フン!
まあ、それは痛快。ホホホホホ、オーホホホホ……
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