See new world――振り返るとセキュリティ・ダークナイトはいるよ(後編):セキュリティ・ダークナイト(18)(3/3 ページ)
セキュリティ・ダークナイトの視点で振り返る特集、後編はアノニマスやハクティビストへ突撃取材したことを振り返ります。
できることはまだある――環境をハックし、ヒーローになれ
この連載の前身である「セキュリティ対策の『ある視点』」の最終回で筆者は以下のように述べた。これは叶ったと思っている。
最後に、私の記事を一度でも読んでくださった読者の方々に、感謝の言葉を述べたい。メディア上だけでなく、ペネトレーションテストというフィールドだけでもなく、皆さんとオフラインで一緒にセキュリティを考える日が来ることを楽しみにしている。
この感覚を味わうことができたいま、本連載も幕を閉じるとしよう。この連載を通じ、さまざまな立ち位置、年齢、性別の方にオフラインでお話することができた。そこで得たたくさんの意見、言葉は、筆者の糧になっている。その半面、私たちの目指すものがとても遠い、深い闇の中にあるということを突き付けられた。
しかし、何も悲観はしていない。ネガティブな気持ちや情報はそれだけでは何も悪いものではなく、そのネガティブなものを事実として捉え、ポジティブな行動に変換することが大切だと考えている。
したがって、闇が闇であり、遠く深いものであると分かったのであれば、次は一筋の光を生み出す取り組みをすればいいのである。その光は誰かが1人で作るものではなく、みんなで作っていくものなのである。
最後に筆者がいま、頭の中で考えていることを記して終わりにさせていただこうと思う。
昔から筆者の中で妙に筆者を引きつけて止まないキーワードが2つある。それは「hack」と「ヒーロー」である。
「hack」という言葉の意味を調べてみてほしい。おそらく知らなかった意味がたくさん出てくることだろう。言葉とは不思議なもので、時代とともに意味が変化したり付け加えられたりする。また、それも人によって捉え方が違ったりもするものもある。
筆者にとって「hack」という言葉は、既存の枠組みにとらわれず、自分の見える世界を少しでも良くし、1人でも多くの人を笑顔に、幸せにすることが最も色濃いイメージである。自分は自分の持てる力を用いてそれを実現したいとずっと考えてきた。「世界を良くする」というと、ドラスティックな改革や革新的なテクノロジーが必要だと思われがちだが、決してそうではないと思っている。
極端な言い方になるが、世界を良くするということは、電車で辛そうにしている人がいれば席を譲るだけでもいいし、トイレに入ったときに自分の順番でティッシュがなくなったのであればそれを放置せず新しいものに交換しておくというようなことでもいいのだ。セキュリティに関係することでいえば、家族が安心してインターネットを利用できるように、気をつけるべきことを話題にするだけでもいいのである。たとえ少しずつでも、多くの人が自分の持てる力で実現していけば、良いサイクルが生まれ、きっと世界は良くなるはずだと思う。
セキュリティ人材は常に不足していると言われている。もちろん尖った人材というものは必要である。しかし、そのような少数精鋭人材だけでは全員を幸せにすることはできない。どんな人でも持てる能力を他者に伝え、理解してもらい、他者の役に立とうと努力する。そして、それをどんどん多くの方につないでいかなければならないのではないだろうか。たとえそれが無意味であっても、無駄ではなかったと思えるように。
そうすれば「人は誰だってヒーローになれる」と筆者は信じている。
皆さん、ありがとう。さようなら。
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