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クラウド経済通のアーキテクトが必要な理由クラウド通が指摘するサービス選定のよもやま話(3/3 ページ)

群雄割拠のクラウドサービス。ユーザーが増えつつある状況で、顧客の声を生で聞き、現場を知る、国内クラウドサービスの中の人々が自社も他社も関係なく、よもやま話を展開。今必要なのは「クラウドの経済」通のアーキテクトだという。その理由は?

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これからの選定者に必要なのは、コスト意識とクラウドの経済

X氏 コストや利用ノウハウの話が出たけれど、設計についていえば、よいサービスはよい実装が支えるし、よい実装はよい設計によって実現する。よい設計はよい要求開発が必要だし、よい要求開発には正確なビジネスプロセスの理解が不可欠だ。正確なビジネスプロセスの理解には適切なメトリクス整備が欠かせない。自社のビジネスプロセスメトリクスと市場のメトリクスの比較が適切に行えていなければ競争力が損なわれる。競争力がなければ、資金が不足して、最終的には「じり貧」になる。

B氏 要するに、企業のITエンジニアならば、事業全体を理解していないと、担当業務をうまくこなせないはずなんだ。

A氏 もうそうなると、自分の活動原価と便益分析くらいはできないといけないね。

X氏 例えば開発されたシステムに実装された機能の45%が全く使われていない、19%はめったに使われていない、といったケースがある。つまり、64%は「あってもなくてもいい」に等しい。なら作らなくてもいい、という判断をすべきなんだ。

A氏 でも現実には、コストを意識せず、本当に必要な機能を絞り込めない人が要求開発をしてしまった場合、その「あってもなくてもいい」機能を盛り込もうとする傾向がある。システムの優先順位付けをしたり、必要な機能とコストのバランスを取ったりする観点は、クラウドサービスも含めて、システムインフラを選ぶ際に絶対に必要となるものだ。選択・導入に際して、まずはビジネスに対するシステムの位置付けをじっくりと吟味する必要がある。

「乗り換えどき」とIaaS選択のトレンド

C氏 一方でIaaSに乗り換えるタイミングについていうと、企業が今保有しているオンプレミス製品の償却期間にも大きく依存するね。

B氏 そう考えると、IaaSサービスの企業利用の気運が高まってから、今年(2014年)でだいたい3年くらいじゃないだろうか。ざっくりと、オンプレミスシステムの一般的な償却期間が6年だと考えると、今年から数年でまた業界シェアマップが変わってくるかもしれない。ちょうど、次の調達を検討するタイミングでIaaSを検討し始める企業も増えてくるのではないだろうか。

X氏 そうした償却期間の問題などに起因してIaaSのニーズが増えたのがここ3年だと考えると、先の話にあったような見積もりの失敗によって「クラウドは高くつく」という“都市伝説”がまことしやかに語られるようになってしまった、というところもあるのかもしれない。

B氏 多くの組織では、インフラ部門に対して漠然と「コスト削減」という大号令があるものの「このサーバーを保守運用するのにいくらかかるの?」「この商売の源泉はどこから来て、何のためにこのインフラを回してるの?」という根本的な問いがあまりにも少なかったように見えるね。

A氏 本当に、IaaSなどのクラウドサービスを提案する側のSIやSEを含め、情報システムの現場の人たちはもっと「クラウドの経済」――お金の話を突き詰めて考えることが大切だと思う。

X氏 本当はとてもシンプルな話なんだよね。単純に考えると、要件次第では、きちんとIaaSサービスのような(伸縮性あるインフラを選択することで余剰投資を避け、運用コストを低減するという意味で)コストのリスクを回避する手段を選択できるはずだ。

*JUAS 2008年の調査によれば、国内企業におけるITシステムの平均寿命が約14年、という話もある。IT資産の償却期間は3〜6年前後なので、一概には言えないが、償却期間終了後も利用し続ける企業があってもおかしくはない。



*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

 「使いたいのに使えない」「使ってみたけれどうまく使えなかった」――こうした問題の真の原因は、「システムに対するコスト意識」「ビジネスに対するシステムのインパクト」など、システム設計の観点が欠落しているため、といえるのかもしれない。

 その点で、クラウド独特のコストの見積もり方、オートスケールを前提とした調達計画の立て方、選定時の評価方法などについては実務経験者が増えつつある。自社でそうした経験を持つ人材を育成する、あるいは雇用するのが難しい場合は、導入時のコンサルティング、導入後のサポートが充実しているベンダー、SIerを選ぶという方法もあるだろう。いずれにせよ、今回の座談会では手厳しい意見も出たものの、クラウドサービスを有効に選び、使うためのさまざまな観点を得られたのではないだろうか。ぜひ本稿をクラウドサービス選定・導入の一つの参考としてほしい。

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