設定を見直すだけ、いますぐ簡単にできる「標的型メール攻撃対策」:すぐ実践可能!(4/4 ページ)
カギは「ZoneID」と「アーカイバー」と「保護されたビュー」。これらの設定を見直すことで、なぜ標的型メール攻撃対策ができるのかを考察しよう。
対策のまとめ
これらの標的型メール攻撃の緩和策についてまとめよう。
対策その1:添付ファイルにゾーン情報(ZoneID)が付加されるメーラーを使用する
筆者が添付ファイルにZoneIDが付加されることを確認しているメーラーは、マイクロソフトのOutlook およびWindows Live メールのみである。OutlookはOfficeのほとんどのエディションに含まれる。また、Windows Live メールは無料でダウンロード可能なので、ZoneIDが添付ファイルに付加されないメーラーを使用している場合は、乗り換えを検討するのがよいだろう。
ZoneIDが添付ファイルに付加されるかを調べる簡単な方法は、Office文書を添付したメールをインターネットから送付し、それをOffice 2010以降で開くと「保護されたビュー」で開かれることを確認することである。
対策その2:Windows標準のアーカイバーを既定のアーカイバーとする
サードパーティ製のアーカイバーは拡張子に関連付けせず、パスワード付き圧縮ファイルの作成時のみ使用する。
対策その3:「セキュリティの警告」が出たら必ず「キャンセル」し、実行しない
圧縮されているか否かにかかわらず、添付ファイルを開いてこの警告が出た場合、不正なファイルである可能性が高いので、絶対に実行してはいけない。
対策その4:Officeの「保護されたビュー」で「編集を有効にする」をクリックしない
「保護されたビュー」が利用可能なのはOffice 2010以降なので、Office 2007などを利用しているユーザーはOffice 2010やOffice 2013にアップグレードすることを推奨する。
対策その5:偽装された添付ファイルを開いた時に、どのような警告が表示されるか無害なファイルで予行演習を行う
せっかく警告メッセージが出ても、事前知識がなければ無視して実行してしまうユーザーもいるだろう。実際に無害な偽装された添付ファイルを開いて実行してみることを体験することで、慌てずに適切な処置をできるようになることが大切である。このような予行演習は、定期的に実施することが望ましい。
標的型メールの手口は、今後も巧妙化が進むと思われる。そのため、ユーザーが送信元の情報や文面などから正規のメールか否かを判断することは、ますます困難になるであろう。また、ユーザーに極端な警戒心を持たせることにより、重要なメールやクレームのメールを開かず無視してしまい。商談を逃したり、トラブルへの対応が遅れてしまったりということが起こりかねない。
よって、標的型メールの開封率を低下させることを考えるよりは、ある程度の割合で開封してしまうことを許容した上で、開封しても感染に至らないことや、例え感染しても被害が広がらないような対策に重点を置くべきであろう。
本稿では、最近の標的型メールに添付されるファイル形式として、実行ファイルやショートカットを圧縮した形式が主流となっていることに着目し、攻撃を緩和する対策について考察した。この緩和策により全ての標的型攻撃を防げるわけではもちろんない。従来からの「OSやアプリへの最新の修正プログラムの適用」や「ウイルス対策ソフトの導入と定義ファイルのアップデート」などの対策が重要なことはもちろん、ゼロデイ攻撃を緩和するEMET(Enhanced Mitigation Experience Toolkit)や、各社から提供されている標的型攻撃対策ソリューションも有用であることに変わりはない。
この考察を、あくまで多層防御の「1つの層」として導入を検討していただければ幸いである。
著者プロフィール
北河 拓士(きたがわ たくじ)
外資系コンピュータベンダーでのシステム開発、セキュリティベンダーでのセキュリティ製品提案、コンサルティング、脆弱性診断などを経て、2010年よりNTTコミュニケーションズのセキュリティオペレーションセンター(SOC)にて脆弱性診断、セキュリティ教育などに従事。
2013年、NTTコムセキュリティの設立に伴い現職。
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