開発環境構築の基礎からレゴ城造り、パートナー交渉術まで〜OpenStack Upstream Trainingの内容とは?(3/3 ページ)
OpenStack Summit Parisでは、数々の先進的な企業事例が登場した一方で、開発コミュニティ参加希望者に向けたオープンなトレーニングプログラムも企画されていた。OSSコミュニティのエコシステムの考え方まで考慮した2日間にわたるプログラムを、参加エンジニアがリポートします。
OpenStackデベロッパーのための環境作り
ここまでは、トレーニングプログラムのうち開発プロセスや手法を紹介してきました。ここからは、同じトレーニングプログラムの中で併せて解説された「開発環境の準備」について見ていきましょう。
開発環境がないとパッチ作成は始まりません。以下は、最新のOpenStackソースツリーを使用してOpenStackの動作環境を構築するツール、「Devstack」へのリンクです。
上記DevstackのWebページに記述されている通り、インストール方法の手順は非常にシンプルです。GitリポジトリからDevStackをダウンロードして、stack.shを実行するだけです。
stack.shを実行するとOpenStackが必要としているパッケージのインストールから始まり、デモ用のOpenStack環境が構築されます。途中、パスワードなどの入力を求められますので必要に応じて適宜入力していきます。
インストールが終了するとURLが出力され、スクリプト実行時に入力した管理者パスワードを使うと、「Horizon」(OpenStackのコンポーネントの一つ。DjangoベースのWeb管理コンソール)にアクセスできます。
ちなみに、筆者が参加したUpstream Trainingが開催される数日前に通知されたメールには「UbuntuのVMを用意してください。4GB以上のRAM推奨です」と書かれていていました。
トレーニングでは、このUbuntuを導入済みのVMにDevstackをインストールしました。Ubuntuのバージョンが指定されていなかったこともあり、エラーが発生した参加者もいて、協力し合いながら問題を解決しました(筆者は14.04 LTSを準備、問題なく動作しました)。
1日目はここまでのカリキュラムで終了です。実はこの段階で既にUpstream Training参加者にバグのチケットがアサインされます。ドキュメントの修正などの簡単なバグなので、初心者にも貢献しやすいよう配慮されている様子がうかがえます。
Day2:Stackといえば「Lego」、中身はかなりリアルなビジネススキルを問われる
2日目はContribution Simulationということで、どのように貢献するべきかレゴブロックを使って体験をするものでした。部屋の参加者を「コミュニティ」と「企業」のグループに分け、中世のお城作りに挑戦します。
コミュニティ側は部品を与えられ、設計図を見てゼロからお城を作ります。対して企業側では、コミュニティのお城にいかに付加価値を付けるかを考え、やはりレゴブロックを使ってものを作ります。
コミュニティ側で作ったお城は、APIが組み込まれる構造に完成させます。企業側では「付加価値のある建物」をAPIを通じてお城と接続します。
使いたいブロックが見つからない場合は、別のルームにいるチームと物々交換することで入手することもできます。参加者によっては競合他社かパートナー候補かの、見方の違いがあり、やりとりを楽しむことができました。
この作業を通じて、チームワーク、コミュニケーション力、交渉力、想像力などを磨くことができます。
最後は「Contribution Planning」として、「アサインされているバグをどのように修正するのか」を考えてプレゼンをする時間です。参加者にアサインされているバグはEtherpad上に記述されています。
今回筆者が受講したOpenStackコミュニティによるUpStream Trainingは(1)Blueprintの出し方、(2)開発におけるルール、(3)人間関係の構築、(4)ツールを使った情報の入手方法、(5)OpenStack Foundationの運営などについて、システムを一通りよくまとめてあるので、これからOpenStackにコミットを目指す開発者には役に立つ内容になっています。
今回直接参加できなかった皆さんも、本稿を一つの参考にしてコミュニティ運営のプロセスをイメージしてみてはいかがでしょうか。プロセスに慣れれば、バグ報告やパッチの提案などを通じて、すぐコミュニティに貢献することができます。
開発コミュニティに参加することで使いたい機能を盛り込む提案を直接議論できることはもちろん、開発コミュニティの中で「企業」(「パートナー」や「競合」など)の関係性を学びつつ、共に盛り上げていける環境に参加できることが理解いただけたのではないでしょうか?
2015年2月には再び東京で開催
2015年2月3〜4日に開催を予定する「OpenStack Days Tokyo 2015」では、今回パリで開催された最新のUpstream Trainingの内容をベースに、国内で2回目となる日本語のトレーニングが予定されています。本稿を読んで興味を持った読者は参加してみてはいかがでしょうか。
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