Windows 10最新情報と日本語対応の新ビルド9926のリリース:Windows 10 The Latest
「Windows 10: The Next Chapter」イベントで明らかになったWindows 10の新機能情報と、日本語にも対応したWindows 10の新ビルド9926のリリース情報を紹介する。
「Windows 10 The Latest」は、2015年夏に正式リリースが予定されているWindows 10の最新情報をお伝えするコーナーです。
ここ数年、クライアントコンピューティングの世界ではWindows OSにとって不利な状況が続いている。デスクトップ/ノートPCの分野ではWindows 8.1の普及があまり進まず、またモバイル分野ではAndroid OSやiOS搭載機が大勢を占めている。マイクロソフトにとっては正念場だろう、とは言い過ぎだろうか?
そんな中、同社が本年中のリリースを予定しているのが新OS「Windows 10」だ。不利な状況を覆すべく、Windows 10にはさまざまな新機能やこれまでにない施策が提供されるようだ。しかも同社はWindows 10の正式リリースまで、プレビュー版を少しずつリビジョンアップして、新機能の実装や仕様変更を細かく実施していく模様だ。
本連載では、リリース前のWindows 10の「新しい動き」をタイムリーかつコンパクトにまとめて解説していく。プレビュー版を試用していない読者にもWindows 10の動向が把握できるように努めたい。
日本語版も用意されたWindows 10 Technical Previewビルド9926
2014年1月24日、Windows 10 Technical Previewの新ビルド9926版がリリースされた。以前からリリースされていたものと違い、今度は最初から日本語版も用意されている。以下のサイトに登録すればインストール用ISOファイルなどを入手できる。
Windows 10 Technical Previewビルド9926
このビルドでは日本語版がラインアップされている。前回のリリースでは英語表記だったユーザーインターフェースも、今回は最初から日本語化されていた。これでようやく日本語環境での評価が始められる。
ビルド9926版のインストール方法など詳しい新機能などについては次回以降で詳しく見ていく。
Windows 10の全体像が「うっすら」と見えてきた
米Microsoftは2015年1月21日(現地時間)に開催した「Windows 10: The Next Chapter」イベントで、Windows 10の詳細に関するいくつかの重要な情報を発表した。そのうちのいくつかを取り上げておく。
●単なるPC向けのOSから、あらゆるデバイス向けのOSへ
現在のクライアントWindows OSは、デスクトップPCやノートPC/x86タブレット向けのWindows 8.1の他、ARM向けのWindows RT、スマートフォン向けのWindows Phoneなど、いくつかに分かれている。また開発ツールなども異なるので、ユーザーにとっても開発者にとってもあまり好ましい状態ではない。
Windows 10ではこれらが整理され、デスクトップ/ノートPC向けの通常の「Windows 10」と、小型タッチデバイス向けの「Windows 10 for phones and tablets」の2種類に集約される。「ユニバーサルWindowsアプリ」ならいずれでも実行できるので、アプリケーションも(今までよりは)作りやすくなるだろう。
Column「ユニバーサルWindowsアプリ」とは
「ユニバーサルWindowsアプリ」とは、PCやタブレット向けの「Windowsストアアプリ」とスマートフォン向けの「Windows Phoneストアアプリ」のどちらにも対応したアプリケーションのこと。「Windowsランタイム(Windows Runtime)」を使うアプリを「Windowsランタイムアプリ」と呼ぶが、1つのユニバーサルWindowsアプリの中には、両方のプラットフォーム向けのWindowsランタイムアプリが含まれる。狭義には、Silverlightを使うWindows PhoneストアアプリはユニバーサルWindowsアプリには含まれないことになるが、その辺りの境界は曖昧である。
●Windows 10 for Phone and tablets
Windows 10 for Phone and tabletsは、おおむね8インチ以下の画面を備えた、タッチ操作可能なスマートフォンやタブレットなどに向けたWindows 10のバリエーションである。従来のWindows OSのようなデスクトップ画面はなく、いわゆる「デスクトップアプリケーション」は実行できない。タブレット向けのOfficeの扱いなども含めて、詳細は今後発表予定となっている。
従来あったARM向けのWindows RT(およびそれを搭載したタブレット)に対してWindows 10が提供されるかどうかは現時点では未定である。
ところで、一般公開された「ビルド9926」は、あくまでもデスクトップ/ノートPC向けのWindows 10が対象だ。Windows 10 for Phone and tabletsのプレビュー版は、まだ一般向けには提供されていない。
●サービスとしてのWindows
Windows 10では「Windows as a service」という考え方が押し出され、今後は数年に1回大きくバージョンアップされるのではなく、スマートフォンのOSのように、継続的に随時機能強化が図られる。デバイスのサポート期間が続く限り、ずっと機能強化されるとのことなので、OSのメジャーバージョンアップを待ったり、OSの入れ替えに多大なコストを払う必要がなくなったりするのは、システム管理者にもメリットが大きそうだ。
ただ、本当にいつまでもバージョンアップできるのか(発売から4年も5年も経ったハードウェアでは、新しいOSを動かすには性能不足ではないだろうか)、バージョンアップなどで不具合が起こった場合は誰がサポートすべきなのか、ユーザーが勝手にバージョンアップしてもPCメーカーはサポートしてくれるのか(もしくはバージョンアップに必要な情報を提供してくるのか)など、いろいろ気になることはある。だが継続的な機能強化は時代の流れでもあるので期待したい。
●Windows 7/8.1ユーザー向けにWindows 10を1年間は無償提供
Window 8では、Windowsストアアプリという新機能で一気に普及を狙ったが、大幅なUIの変更のためか、いまひとつ導入が進まなかった。そこでWindows 10では「Windows 7/8.1ユーザーに対しては、Windows 10のリリース後1年間は無償でアップグレード提供」されることになった。
どういう方法でアップグレードすることになるのかは不明だし、アップグレードに伴うトラブルなどもかなり心配だが、これもやはり期待したいところだ。
●新しいWindows 10デバイスのサポート
「あらゆるデバイスにWindows 10を」ということで、Windows 10ではデスクトップPCからノートPC、タブレット、スマートフォンなどの他、「Microsoft Surface Hub」「Microsoft HoloLens」という新しいデバイスにも提供されることになった。
Microsoft Surface Hubは、84インチ(もしくは55インチ)の大型ディスプレーに組み込まれた会議室向けの電子黒板システムである。またMicrosoft HoloLensはホログラム型の投影機能を持ったVR(仮想現実)ヘッドマウントディスプレーだ。
さまざまなデバイスに対応するWindows 10
従来のデスクトップ/ノートPCだけでなく、スマートフォンや2in1デバイス、タブレットPC、そして大型画面を持つSurface Hub(左上)、VRマウントディスプレーのMicrosoft HoloLens(右上)まで対応する。
●2in1デバイスのための「Continuum」モード
2in1デバイス(キーボードを取り外し可能なタブレットPC)向けに、「Continuum(コンティニューム)」モードがサポートされる。キーボードの有無に応じて、「PCモード」と「タブレットモード」が自動的に切り替わる。
「PCモード(画面上)」と「タブレットモード(画面下)」
PCモードではアプリのウィンドウサイズや重なり具合は自由に変更できる。一方タブレットモードでは、アプリは常に最大化(もしくは左右2分割表示など)され、固定的なサイズを持つことになる。また、小さい画面サイズを考慮してタスクバーの検索窓も表示されなくなるし、スタートメニューも画面全体に表示されるようになる。
●パーソナルアシスタント「Cortana」
「Cortana(コルタナ)」は、iPhoneのSiriのような、音声を使ったパーソナルアシスタント機能である。もともとはWindows Phone 8.1(日本未発売)で搭載された機能だ(日本語未サポート)。ただし現状のWindows 10 Technical Previewビルド9926のCortanaは英語でしか使えず、残念ながら日本語環境では機能しない。
Cortanaの起動画面
Cortanaは音声認識を使ったパーソナルアシスタント。ただしビルド9926では、英語しかサポートされておらず、日本語Windows 10環境ではこのように「利用できない」というメッセージが表示される。
●IEに代わる新Webブラウザー「Project Spartan」
Windows 10では、現在のInternet Explorer 11(IE 11)に代わって、新しいWebブラウザー「Project Spartan」(開発コード名)が搭載されることになっている。ただし現在公開されているWindows 10 Technical Previewビルド9926にはSpartanではなく、Internet Explorer 11だけが搭載されている(「HTTP/2」がサポートされているなど、いくらか拡張されている)。
Spartanは、IEに採用されている「MSHTML(Trident)」描画エンジンとは異なる、「EdgeHTML」という描画エンジンを採用した新しいWebブラウザーである。最新のWeb標準のマークアップとの親和性が高く、IEではうまく表示できないようなサイトでも正しく表示できる(可能性がある)。ただし互換性を確保するために、従来のIE 11の描画エンジン(Trident)を使うように強制することも可能である。
EdgeHTMLを有効にする
Windows 10 Technical Previewビルド9926にはSpartanの全機能は用意されていないが、IE 11で描画エンジンをEdgeHTMLに切り替えることは可能である。
(1)アドレスバーに「about:flags」と入力する。
(2)実験的な機能を有効にするかどうかの設定。
(3)「Enabled」を選択するとEdgeHTMLを有効にできる。
これ以外にも、Spartanは次のような機能を提供する予定である。
- 自動的な更新――Chromeブラウザーのように、常に自動的に最新版に更新される。
- Webページへのメモの追加や切り取り――表示されているページに「メモ(ペン書きや文字など)」を追加したり、ページの一部を切り取ったりして、メールしたり、SNSやEvernoteなどに送ったりできる。
- 読書モード――本文以外の余計な要素の表示を抑制する。
- Cortanaとの連携――音声で指示させることが可能。
Spartanについては、以下のページも参照していただきたい。
以上の他にも新しい機能が多くあるが、それらについては次回以降で順次解説する。
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