ハッカソン、デバイス、海外展開、人材育成――ゲーム開発で私たちは今何をすべきか:GGJ2015 ZENRIN ODAIBA会場&30時間生放送まとめ(2/2 ページ)
2015年1月23〜25日、世界中で同時に行われた48時間にわたるゲーム開発ハッカソンの模様と、ゲーム開発がテーマのトークセッションをいくつかダイジェストでお届けする。
『ゲームジャムを楽しむ4つのポイント』
ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長兼CEO清水亮氏。写真は中間発表でのコメント時「昨年GGJに参加した人の3分の1は今年は来なかったようです。それはなぜかというと、自分も参加したから分かりますが、GGJはすごくつらい上に、完成しなかったり不本意なものができたりして、作ったゲームをもう見たくないと思う人が多いからでしょう。GGJ自体は、とんでもないクソゲーです。でも、48時間という貴重な時間をクソゲーにするか、人生最高の時間にするかどうかは参加者の皆さん次第。チーム内で殴り合いになってでも、終わった後に、もう1回遊びたくなるような最高のゲームを作ってほしい」
ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長兼CEOの清水亮氏は、自身が2012年にGGJに参加してゲームを開発(『TAKEMIKAZUCHI』)した経験を基にGGJを楽しむためには、どうすればいいのか具体的に紹介した。
さまざまなポイントがあったが、抜粋すると、下記の通り。
- 自分の限界を超えろ(自分の限界を超えると中毒性が出て、また来たくなる)
- 一通りゲームとして遊べるようになるまで完成させろ
- イテレーションしろ(繰り返し遊んで修正できるように、開始24時間で一通り遊べるようにしておくことが大事)
- 動画のスクリーンキャプチャを撮っておけ(作ったプロセスを残しやすい。後で見返すのが楽しい)
『デバイスを活用したゲーム開発』
さまざまなデバイスを使ったゲーム開発を手掛けるポケット・クエリーズの代表取締役である佐々木宣彦氏は下記にカテゴリを分けてゲーム開発でも使えるさまざまなデバイスを事例を交えて紹介した。
- VR系デバイス(Oculus Rift、Project Morpheus、TaoVisor、MOVERIO、MREAL、Ovrvision、Go Pro×6台+360Heros、THETA)
- ジェスチャ系デバイス(KINECT for Windows、Leap Motion Controller、Myo、Real Sense、Tobii アイトラッカー)
- 移動操作系デバイス(Virtuix Omni、cycle Street)
- 電子工作系デバイス(Arduino、Konashi)
- ウェアラブル系デバイス(スマートフォン(ジャイロセンサー)、JINS MEME、FUN'IKI Ambient Glasses、Microsoft Band)
それぞれの詳細については、佐々木氏が「Unity Solution Conference 2014」で発表した資料(PDF)を参照してほしい。
『インディーゲームメーカーの海外展開の裏の裏!』
海外展開を視野に入れたゲームを開発しているリンクキット代表取締役の竹内啓二氏は自社で開発して世界で170万ダウンロードを達成したというゲーム『サムライディフェンダー』を例に、ゲーム販売における海外展開について語った。
リンクキット代表取締役の竹内啓二氏。写真は中間発表でのコメント時「自分の体験談として2徹(2回徹夜)で商用のゲームを1本作ったことがあります。1カ月任せた新人がばっくれたからなのですが、残っているソースコードも全然使えず0から作ることになり、頭の中が本当に真っ白になりました。そこまで追い込んでも人間って生きているんだなと思った経験からすると、望んで48時間をゲーム開発に費やす参加者はすごい勇気があると思いますが、あまり無理せずに楽しんでゲームを作ってください」
『サムライディフェンダー』は中国、米国、欧州でそれぞれ現地の別会社にライセンスを提供して販売。ユーザーは中国、日本、台湾、米国、韓国、タイの順に多いという。iOS App Store、Google Play、Amazon Androidアプリストア、Sumsung Apps、Windowsストア、PlayPhoneと多くのプラットフォームにアプリを出店し、Windows Phoneももうじき対応予定。
竹内氏が海外展開のために取り汲んだのは下記の施策だ。
- 東京ゲームショウ(以下、TGS)のインディーゲームコーナーに出店
- 勉強会の開催
- TGSビジネスマッチング(JETRO(日本貿易振興機構)支援。現地ライセンス対応(輸出)、市場情報交換など)
竹内氏は特に「TGSビジネスマッチングは、中小企業が支援対象で、国内で海外企業と話せる」として勧めていた。「海外へのコネクションがゼロでも積極的にイベントに参加することで、海外展開ができました。海外には1回しか行ってません」(竹内氏)
一番ユーザーが多い中国に対しては、事前に調査し、「日本のコンテンツが好きな人は多いので、三国志ではなくサムライのままで大丈夫」と現地企業の担当者にお墨付きを得たという。展開した結果、中国ゲームメディアの賞も受賞した。また、米国では、BEST Windows 8 APPSを受賞。これにより米国での展開がしやすくなったという。
竹内氏が自身の経験から得た海外展開の注意点としては下記を挙げていた。
- 現地の文化に合わせるのではなく、日本の文化を知ってもらおうというスタンスの方がいい(インディでは現地にゲームを合わせるのは資金的に難しいので)
- 契約書など早い決断を迫られる
- バグなどのサポートは現地企業に任せる
- 知らない言語でのメール問い合わせは無料の翻訳Webサービスで対応。想定される質問への回答は用意しておく
竹内氏は最後に、「海外展開と聞くと、いろいろと不安に思うことが多いかもしれませんが、取りあえずやってみて問題が起きたら謝って、対応を考えればいいんです。GGJに参加することをちゅうちょする人もいると思いますが、取りあえず何でも飛び込んでみてほしい。そうすることで見えてくる世界が広がり、不安がより具体化したり、問題点との距離感が測れます」と締めくくった。
『若手エンジニアの育て方』
ロケットスタジオ代表取締役社長 竹部隆司氏。写真は中間発表でのコメント時「48時間という短い時間の間でゲームを開発するには、いろいろな取捨選択が迫られるでしょう。残り24時間は“魂入れ”の作業になると思います。修行のようにがんばってください」
ロケットスタジオ代表取締役社長の竹部隆司氏は同じくGGJの会場がある札幌からZENRIN ODAIBA会場に参加。ロケットスタジオでは3〜6カ月ぐらいでインターンを受け入れて人材育成を行っている。趣味のプログラマーから職業プログラマーになるには乖離(かいり)があるので、プログラムが好きという瞬間を味わえる環境を作ってあげることで、眠っているセンスを呼び起こせるという。
1週間ぐらいでテーマを与えて作らせることで、どういうスキルがあるのか、どんなコードを書くのか、やれること、やれないことを把握する。そして、ベテランも含めてコードレビューも行う。苦労したところやうまくいったと思えるところを説明させる。その上で、なぜこういう書き方をしたかなどを聞く。入社している若手エンジニア同士にもコードレビュー会をさせることで互いに刺激し合える。
バグらないコードはない。1行書くだけでも原因が増えるかもしれないから、問題を起こさないようにするにはどうすればいいか、問題が起きたときにどうすればいいか、を考えさせる。問題が起きたときは、いろいろと選択肢を見せて、どうすればいいか考えさせる。「カウンセリングに近いコーチングですね」(竹部氏)。また問題解決には自分のスタイルを持っていると強いので、自分のスタイルを持つように心掛けさせる。「ちゃんと一緒に滑走路を走ってあげて最後に背中を押せば飛べる。山本五十六の言葉『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ』の通りですね」(竹部氏)。
また、CEDECなどの技術イベントに参加させたら、参加できなかった人にフィードバックさせる。「若い人は情報共有を自発的にしている。フィードバックすることで、喜ぶ人がいるという成功体験をさせることで良いサイクルが回っていくことが大事」(竹部氏)。
このように竹部氏は人材育成のさまざまな方法や考え方を紹介しつつ「とはいえ、育て方も人によって十人十色で合わせる方がいい」として、次のように述べた。「自分がこれまで経験したことを圧縮して伝える。若い世代もさらに若い世代に伝えることが繰り返される中で良い物が残ってくれればうれしい。頭をどう使うかが大事。プログラマーは経験的な動物だから、ツールなりハードウエアなり体験してみないと、それが良いか悪いかは分からない。GGJもそう」(竹部氏)
できたゲームを遊んで、GGJ 2016に参加してみよう
25日17時からの結果発表では、中間発表から24時間たち実装がどれぐらい進んだか、何ができなかったか、どこが難しかったか、何に苦労したかなどが、実際にプレーするところを交えて発表された。結果としては、アクションゲームやシューティングゲームなどアイデアやが肝となるものがほとんどだった。
今回のニコニコ生放送番組を企画・司会・進行した日本マイクロソフトの金尾卓文氏は、番組内で「この生放中のコメントを見ていると『ゲーム開発に興味を持っているが参加するのは、ちょっと』という方が多くおられましたが、くしくもゲストで来ていただいた方々は共通して『まずは、やってみることが重要』とおっしゃっていました。新しい一歩を踏み出すことはもちろん勇気の要ることですが、この番組を通してトライしてみようと思ってくださった方がおられたらうれしいです」と語っていた。
6チームが開発したゲームは下記から確認でき、インストールして実際に遊ぶこともできる。興味を持った読者は、48時間で開発されたゲームがどんなものか、実際に遊んで確かめてみてはいかがだろうか。また、Glo冒頭の「bal Game Jam 2015 Keynotes」にあったように、GGJでは初めてゲームを開発するという参加者も歓迎し、48時間の間に完成しなくても問題ないという。来年のGGJでも、さらに多くのゲーム好きが日本全国でゲームを開発することを期待したい。
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