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Windows 10、DirectX 12、Kinect、PlayStation 4、VRヘッドセット対応、Unity 5への移行に見るUnityの可能性と課題Unite 2015 Tokyoリポート(1/3 ページ)

クロスプラットフォーム対応のゲームエンジンとして多くのユーザーを抱える「Unity」。このUnityの開発者向けに、最新動向と技術情報を紹介する公式イベント「Unite 2015 Tokyo」が、4月13、14日に東京お台場で開催された。この記事では、4月13日に行われた、ソニー・コンピュータエンタテインメント、マイクロソフト、コロプラによる各セッションのダイジェストをお伝えする。

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 PCやブラウザー、スマートフォンやタブレット、コンシューマーゲーム機といった幅広いプラットフォーム向けのゲーム開発が行えるエンジンとしてシェアを拡大している「Unity」。Unityを利用している開発者向けに、その最新動向と技術情報を紹介する公式カンファレンスイベント「Unite 2015 Tokyo」が、4月13、14日に東京・お台場のホテルで開催された。

 3月には、多数の新機能を実装した最新版である「Unity 5」がリリースされたばかり。今回のイベントでは、新バージョンに関する情報を披露するセッションが複数設けられていることもあり、多くの開発者が聴講に訪れた。

PlayStation向けのUnity開発を「炎上」させないコツと「例のアレ」

 ソニー・コンピュータエンタテインメントは、Unite 2015 Tokyoにおいて「Unity 5.0 for PlayStationの最新状況(と、例のアレ!)」と題したセッションを行った。講演者は、ソニー・コンピュータエンタテインメント・ジャパン・アジア(SCEJA)、パブリッシャーリレーション部次長、SCEJA開発サポート責任者の秋山賢成氏だ。

 SCEでは2014年より、ユニティ・テクノロジーズとの提携の下、同社のゲーム機である「プレイステーション」(PS3/PS4/PS Vita)向け「Unity for PlayStation」の無償提供を行っている。「マルチプラットフォーム対応が可能な点がメリットとなり、Unity for PlayStationによるタイトルは増えつつある」という。

マルチプラットフォームなUnityの落とし穴


ソニー・コンピュータエンタテインメント・ジャパン・アジア パブリッシャーリレーション部次長 SCEJA開発サポート責任者 秋山賢成氏と「例のアレ」

 iOS/Androidスマートフォン向けに開発したゲームタイトルを、容易に「PS Vita」向けにも展開できるというのが、Unityを使う大きな理由になる。しかしながら、「その際に十分に注意してほしいことがある」と秋山氏は注意を促した。

 「最新のスマートフォンと、2011年12月に発売されたPS Vitaとの間にはスペック上の大きな違いがあります。また、Unity for PS Vitaそのものにも、現時点でいくつかの技術的な課題があります。そうした特性を理解した上で開発を進めていかないと、大きな事故が起きてしまいます」(秋山氏)

 秋山氏の言う「事故」とは、いわゆる「パフォーマンス」の問題だ。日々、進化を続けているスマートフォンと、4年前の発売後から基本的なハードウエアスペックが変わらないPS Vitaとの間では、CPUの性能、アプリケーションから利用できるメモリ容量、速度などの差が開き続けている。スマートフォンをメインターゲットとして開発を進めた場合、ターゲットとPS Vitaとの性能差を早い段階で見極めておかなければ、最終的な段階で製品レベルのパフォーマンスが出ず「炎上」を招いてしまうというわけだ。


“あと3割”の品質(秋山氏の講演資料より)

 「Unityというツールが優れているため、実機での確認がおろそかになり、開発終盤で仕様や制作ワークフローを見直す必要が出て、最終的にゲームを作り直さざるを得ないケースが増えてきてしまっている」と秋山氏は指摘する。こうした事故を避けるためには、開発フェーズの中でできる限り頻繁に「実機での確認」を行うこと、最終的な「最適化」を前提とした開発スケジュールを組むことが大切だという。

 SCEJA自身も、Unity for PS Vitaの技術的な課題を解決するための対応を行っている。「最適化」の余地を広げるための対策として、システムソフトウエア3.50より、ゲーム側で利用できるメモリサイズを従来よりも約30%拡張しているという。拡張されたメモリ領域の利用に当たっては一部制限があるものの、これを活用することで、動的オブジェクト確保回数の削減、ガベージコレクション頻度の削減、データキャッシュのヒット率向上といった効果が見込まれ、チューニングを通じたパフォーマンスのさらなる向上が期待できるとした。

Unity 5 for PlayStation 4

 このセッションでは「Unity 5 for PlayStation 4」に関する情報も公開された。すでにUnity 5への対応は完了しており、4.xとの比較で、「シェーダーのコンパイルエラーの修正」「シェーダーのコンパイルが必要時のみ実行可能」「マルチスレッド処理への最適化」といった改善が行われているという。Unload処理もマルチスレッド対応したことによって、「特にゲームオブジェクトが多いタイトルや、今後ゲームオブジェクトを増加させたいタイトルにおいては、Unity 5.0に乗り換えることによる効果が期待される」とする。


マルチスレッド処理への最適化(秋山氏の講演資料より)

 「今後、Unity 5自体の機能強化が進むとともに、ユーザーからのフィードバックを元にした、さらなる最適化も行われていくでしょう。ただ、Unity 5を使ったとしても、やはり最終的なチューニングは必要です。終盤でプロジェクトを炎上させないためにも、開発機や実機をマメに使った開発作業を心掛けていただきたいと思います」(秋山氏)

「Project Morpheus」の新型試作機デモ

 セッションの最後には、タイトルで「例のアレ」として紹介されていた「Project Morpheus」の新型試作機によるデモが披露された。Project Morpheusは、PlayStation 4の周辺機器となるヘッドマウント型のバーチャルリアリティ(VR)システムであり、2016年上半期中の商品化を目指して開発が進められている。日本においては、2014年のUnite Tokyoで初めて試作機が公開された。

 今回披露された「新型試作機」は、従来のものよりスペックが向上したものになる。ディスプレー部分には5.7インチの有機ELパネルを採用。1920×1080サイズのフルカラー表示を18ms以下の低遅延で表示可能で、120Hzのリフレッシュレートに対応する。秋山氏によれば、「今後、全てのPS4が、Morpheus利用時には120Hz出力に対応する」という。また、装着者の動きをトラッキングする9点のLEDを搭載し、トラッキング性能や本体に与える処理の負荷についても改善されているという。

 会場では、Morpheusの新型試作機を使い、Unity 5で作られた「ユニティちゃんライブ」をVR環境で再生するデモが行われた。

 Morpheusに対する120Hzでの出力を実現するためには、それを前提にした開発を行うことがベストだが、同社では「リプロジェクションモード」を用意することで、60Hzのゲームを120Hzに変換して動かすことも可能にするという。

 「Morpheusの新型試作機については、Unityで利用できるプラグインをすでに用意しています。今回のライブデモは、Unity 5用の素材をそのまま利用して実現していることからも分かるように、Unityの作品をPS4とMorpheus向けに展開する作業はすぐに始められます。Morpheusを使ったVRコンテンツの作成にとっては、試行錯誤の回数が重要です。Unityのような生産性の高いプラットフォームをうまく活用して、スクラップビルドを繰り返しながら開発を進めていくことがカギになるでしょう」(秋山氏)

 秋山氏は、「もしUnityでのVRに興味のある開発者が多いようであれば、体験会や勉強会の開催についても検討したい。関心のある開発者、企業からのアプローチを歓迎している」と述べてセッションを終えた。

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