クラウドとiOS/Android/Windows 10アプリ開発を統一して扱えるVisual Studio 2015の狙い:いつまで個別のスキルとツールで疲弊し続けるのか(2/2 ページ)
マイクロソフトの統合開発環境の新製品「Visual Studio 2015」がついにリリースされた。Windowsだけではなく、iOS/Androidをターゲットとした「クロスプラットフォーム開発」が可能な点が、大きな売りの一つになっているが、同社では、この製品がリリースされたタイミングで、あえて開発者に「フロントエンドだけではなく、バックエンドも含めた開発プラットフォーム全体を再検討してはどうだろうか」と提案する。その意図を同社に聞いた。
さらに「複雑化」「高度化」が進むアプリ開発にいかに対応すべきか
Visual Studio 2015では、Windowsデスクトップアプリはもちろん、Windows Phoneを含む非PCデバイスで動作する「Universal Windows App」、iOS/Androidアプリ、IoT向けアプリなど、多様なクライアントをターゲットとした「クロスプラットフォーム開発」が可能な点が大きな売りの一つとなっている。
前述の「モバイルファースト」を意識したシステム構築を行うに当たって、現在では「クロスプラットフォーム」開発を避けることはできない状況にある。この状況は、コンシューマー向けのアプリ開発に限らず、エンタープライズ分野でも加速しているという。
「企業においては社員の生産性向上やワークスタイル多様化への対応を促進するためにモバイル端末の支給やBYODでの業務利用を認める企業が増えています。この流れは今後も進んでいくでしょう」(相澤氏)
こうした状況は、企業のシステム開発に新たな課題を生むことになる。「モバイルファースト」に基づくクロスプラットフォーム開発が、「当たり前」の前提となることで、システムの開発プロセスは複雑化する。さらにバックエンドで「クラウド」を利用したデータ処理を当然のように求められることで、開発と運用に求められる技術も高度化していく。
「現時点で、モバイルファースト、クラウドファーストを実践している企業の中には、プラットフォームごとに個別のスキルとツールを用意して同じアプリの開発を行い、バックエンドもその都度用意して対応しているといったところが少なくありません。開発の複雑化と高度化がさらに進んでいくとみられている現状で、遅かれ早かれ、そうした体制が立ちゆかなくなるという危機感は、先進的な取り組みを行っている企業の中で高まりつつあります」(相澤氏)
「クロスプラットフォーム」開発が大きな特徴の「Visual Studio 2015」が登場したこのタイミングで、マイクロソフトが「Visual StudioとAzureの組み合わせを核とした開発プラットフォームの再検討」を促す最大の理由はここにある。
今後加速していく、システム開発の「複雑化」「高度化」に対応していくためには、フロントエンドからバックエンドまでに対応できる統一の開発環境である「Visual Studio」と、その環境に最適化され、シームレスに連携できる「Azure」との組み合わせが最も効果的というわけだ。
Azure App Serviceでバックエンド開発のコストを大幅に削減
Azureには、モバイルアプリのバックエンドとしてすぐに利用できる「Mobile Apps」と呼ばれるサービスがある。「Mobile Apps」は、以前「Azure Mobile Services」と呼ばれていたサービスの後継であり、ユーザー認証、システムからアプリへの通知、バックエンドでのデータ交換など、一般的なモバイルアプリに共通して必要とされる機能を提供するものだ。「Mobile Apps」は現在、「Web Apps」「API Apps」「Logic Apps」といったアプリケーションサービスと共に「Azure App Service」の一機能となっている。
「クロスプラットフォームのモバイルアプリを展開したいと思った場合、フロントエンド側は比較的容易に作ることができるかもしれません。しかし、認証や、サーバーからアプリへのメッセージプッシュといった仕組みを組み込もうと思った際に、それをすぐに自前で実現できるケースは少ないのではないでしょうか。Azure Mobile Appsを利用すれば、そうした一般的に求められる機能をゼロから自前で作る必要はなくなります。また、その機能を利用する際に必要なシステムのスケーラビリティも確保されます」(相澤氏)
Azure App Serviceは、今後もマイクロソフトの手によって、随時、新たな機能が実装されていく予定だ。例えば、モバイルアプリへの通知機能に関しては、現在「Mobile Engagement」という新サービスがプレビュー段階にあるという。「Mobile Engagement」は、Mobile Appsの通知機能をより高度化したものになる。
例えば、アプリケーションを利用しているユーザーを特定の条件でセグメント化し、そのセグメントに属するユーザーに対して一斉通知を行うといったことが可能だ。アプリの利用頻度が下がっているユーザーに対してリマインドを送ったり、ロイヤリティの高いユーザーに対して特別なキャンペーンの通知を送ったりといった形で、Dynamics CRMのような他のデジタルマーケティングプラットフォームとの連携も可能になる見込みだという。
「こうした機能を実現するシステムを、フロントからバックエンドまで、Visual Studioを使って自前でコツコツ作っていくことはもちろん可能です。しかし将来、より高度な機能が求められるようになった場合、その対応には、その都度大きなコストが掛かります。もし、ある程度、共通のやり方が使える部分があるのであれば、そこについてはMobile AppsをはじめとするAzure App Serviceを使って、効率化していくことをお勧めしたいと思います」(井上氏)
今後、さらに高まる「モバイルファースト」「クラウドファースト」のニーズに応えるために、システム全体をカバーできる「統一アプリケーションプラットフォーム」の確立は「大きなチャンスになる」と相澤氏は言う。開発、運用の両プロセスを連携して効率化を推進できる点はもちろん、新たな技術やプラットフォームへの「対応スピード」を高められることで、アプリ開発ビジネスにおける「先行者利益」も享受できるだろうとする。
「あらゆるタイプのアプリケーションを、あらゆるプラットフォームの上で作れる環境と技術を提供していくのが、マイクロソフトが掲げる大きなビジョンです。その中でも、先進的な機能を、最も使いやすい形で利用できる環境として、Visual StudioとAzureの組み合わせを検討していただきたいというのが、現在のわれわれから開発者の皆さんへのメッセージです」(相澤氏)
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